第11話。遠い場所。
私は誰のものでもないはずなのに。
今鏡の中から私を見つめている女の子は誰・・・?
改めて見た私の姿は、確かに10年前の私でした。
時間が戻ってしまったのか、このままなのか、
もし戻れるとしたらいつなのかさっぱり分かりません。
サーディさんが私に言った言葉。
ジェイドさんは私に知られたくなかったみたい・・・。
『まだ早い』
早いって言った。
じゃあ、私が結婚出来る歳だったなら
すぐにでも伝えて自分の物にしようとしたのかな?
「はぁ・・・。」
何度目かも分からないため息が漏れて、私は自分に
与えられた煌びやかで、可愛らしいお部屋から
バルコニーに出ました。
「おつきさま。やっぱりふたつありゅ・・・。」
さっき着替えさせてくれたメイドさんが言っていました。
この世界のお月様は2つあるんだって。
色がついているお月様は、ずぅっとまんまるのままなんだって。
地球で見るお月様と同じ色のお月様は、色の変化はなくて
大体15日くらいかけて細い三日月になっていって
残りの15日くらいでまん丸になる・・・。
地球のお月様と同じように満ち欠けするみたいです。
まんまるお月様の色は、季節によって色が変化するって
不思議だなぁ・・・今は薄い緑に少し下の方がピンク。
春から夏になるくらいらしいです。
日本でいう、梅雨の時期くらい。6月くらいになるのかなぁ・・・。
ぼぉっと空を見上げていたら、人の気配を感じました。
はっとしてバルコニーから手すりに乗り出してみたら
下から慌てた声が聞こえました。
「姫様っ!!うわわわっ危ないですからっ!!」
一階部分の庭園になっている場所から、
慌てて両手をぱたぱたしているのはカイルさんでした。
「かいる。へいき、だよ・・・?・・・ねぇ・・・ぴゃっ。」
「っ!?姫様ぁぁぁぁっ!!!」
カイルさんに聞こえるようにと身を乗り出した私は
つま先立ちで身を乗り出してしまって、つま先が
つるりと滑って落ちてし・・・きゃああああっ!?
小さな身体をきゅっと丸めて衝撃に備えていた私。
どさっ!
「ふっ・・・ぁ。」
多少衝撃で息が詰まったものの、思っていた以上には
痛くないなと思って恐る恐る目を開くと・・・。
「っ!?」
「っつ。・・・いたたた・・・。姫様・・・。
すこぉしばかりおいたが過ぎますよ。はは・・・。」
目の前にカイルさんの顔、身体の下には
カイルさんが尻もちをついて、私を抱っこしていました。
「かい・・・る。いたかったですか・・・?
ごめ・・・ごめんなさい、ふぇ・・・。」
ああ・・・。今泣いちゃったら本当に子供です。
だめだめだめ・・・泣いちゃだめっ。
ふわり
カイルさんはふふっと笑って、私の頭を撫でてくれます。
カイルさんに触れたのは、初めてです。
でも全然怖くない。優しくてあたたかい日向みたいな匂い。
怖くて強張っていた体の力が少しずつ解けていくのが分かる。
「痛いとこは・・・ないみたいですね。
それでは、僕を心配させた姫様には、少しだけ
僕のお話を聞いていただきます。いいですね?」
有無を言わせないといった様子で私を抱いたまま
立ち上がったカイルさんは、庭園の真ん中にある
噴水の前のベンチまで歩いていきました。




