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この世は勇者であふれてる  作者: 栢瀬 柚花
ソルセリル入国

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出国

ここから新章突入です。

1話短く進めていきます。


 ソルセリルは魔族の国。とはいっても、魔族だけが住んでいるわけじゃないらしい。

 そもそも魔族という括り《くくり》が曖昧で、ざっくりと人間以外をさす言葉だ。だからドワーフ、エルフ、巨人、鬼人、翼人、妖精、獣人…これら全て魔族と呼ぶ。種族によっては魔族呼ばわりされることを嫌う場合もあるので、言葉に注意だ。

 魔獣や魔物との違いは、言語を話せるか否か。これだけ。

 

 ソルセリルは建国して20年足らずの歴史浅い国で、様々な種族の混合国だ。

 もともとエルフだけの国、ドワーフだけの国もあったらしいが、人数が減り廃国となった。それもかなり昔の話で、覚えている人はほとんどいないらしい。

 そんなわけで、少しずつ残った魔族の皆さんを集めてできたのがソルセリルだ。

 

 ここまで聞くと、ラディウスの手腕が凄いような気がする。だって、複数の種族をまとめ上げるのは大変そうだし、種族間でのいざこざや習わしも違うだろう。それをまとめ上げるのはさぞ苦労が多いように思えた。

 人口は100万。土地の広さは日本で言うと西日本くらいの大きさだ。

 

 これが2人の情報を合わせた内容だった。

 他にも王都の様子や国の雰囲気も知りたかったが、鎖国中のアザルス王国ではそんな情報入ってこない。

 結局、百聞は一見にしかずということで、現地で確かめようと結論が出た。



 そして終戦から1ヶ月半が過ぎた頃。

 やっと準備が整い、ソルセリルに出発する日がやってきた。

 

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


 移動は魔獣車だった。しかも特大サイズ。

 魔獣2頭が牽引する荷台の大きさは、優に一軒家くらいある。なんとそれが20台並んでいた。単純計算でも、1台に15人乗れるという事だ。


「これ、道を通れるの……?それに重くない?」


 素朴な疑問をこぼすと、同席する獣人魔族の方が親切にも教えてくれた。


「荷台には軽量と速度上昇の魔法がかけられています。魔獣への負担も少ないんですよ。道は魔法で造ります」

「造る?」

「狭い道は広げて、川や泥濘《ぬかるみ》、岩場には足場の魔法を使いますから、問題ないんです」

「へぇ。魔法ってやっぱり便利ですね」

 素直に感心したあたしに、獣人の魔族は笑った。

「元の世界には、魔法はないんですか?」

「ありませんよ。人間しか住んでいませんし」

「となると、我らのような魔族は恐ろしいのでは?」

 獣人魔族は見た目は犬で、ピンと立った耳もフワフワの尻尾も可愛かった。目も丸くてウルウルで、思わず頭を撫でたくなる。

「いえ、そんな事ありません。地球……元の世界では空想上の生き物として描かれることも多いので、全く見たことない、というわけでもないんです」

「物語やおとぎ話に出てくる、というとこですね?」

 ゲームとか小説にも出てくるし、割と受け入れは早い気がする。もちろん、外見にもよるだろうが……。

「異世界の話を聞くのは面白そうですね。道中、よければ少し話していただけますか?」

 どこまで話していいのか分からないが、興味を持ってくれるのは嬉しい。

「いいですよ。そのかわり、一つの質問につきあたしも疑問を一つ聞く、という条件でどうですか?」

「はい、かまいませんよ」

 この犬姿の獣人はキールという名前らしい。


 出発前から道中の楽しみができ、あたしはワクワクした。

 浮かれていると田岸さんから「随分と仲良くなりましたね」と笑われた。

「さすが看護師だけあって、コミ力が高い」


 

 あたしと同じ魔獣車には、田岸さん、元1区のメンバー、2区の人達が乗り込んだ。田岸さんとは親しくしていたから、家族(恋人)扱いされて同乗となった。

 

 300人を引き連れた集団は約10日をかけて魔族の国、ソルセリルに進んだ。

 アザルス王国とソルセリルとの距離は約1000キロ。本当は単位が違うが、召喚時の翻訳機能のおかげで使い慣れた単位に勝手に切り替わるらしい。試しにキールと距離や長さ、重さの話をしても、グラムやセンチといった表現をしてたから。

 やっぱり魔法って便利だ。

 

 300人以上の大所帯のあたし達は、宿に泊まることなく、ずっと野営で過ごした。しかしこれが思ったより快適で、なんとお風呂にも入れた。

 シャワーではなく、お風呂だ。

 土魔法と水魔法、火魔法の組み合わせで可能になるらしく、大浴場並みの浴槽を作ってくれた。しかも使用後は浄化魔法を使うので自然にも優しい。

 魔法、最高。

 入浴の習慣がない国の人もいたが、日本人としてはものすごく感動して長風呂してしまった。


 他にも食事は温かいものが出るし、美味しい。召喚者の中に野菜を収穫する力、食用キノコを見分ける力、料理の味が分かる力の人がいて、時々地球の料理も出た。

 さすがに日本食はなかったが、キノコが天ぷらのように出てきたので嬉しかった。

 地球の料理は魔族の皆さんからも好評で、召喚者の人たちは随分と活躍したと風の噂で聞いた。

 夜はふかふかの寝袋でぐっすり眠り、身体も痛くならない。文句ない旅路だった。

 田岸さんもこれにはいたく感動し、

「キャンプした時の数十倍は楽でした」

 と笑っていた。

 もちろん、色々な魔法が使える人達がいるから可能なわけで、もっと少人数になれば全然違うのだろうが。

 

読んでいただきありがとうございます!とても励みになっています。


 いよいよソルセリルに入りました。

 まだまだお話は続きますので、お付き合いください。


いつも誤字・脱字報告ありがとうございます。助かっております。

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