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シラユリがくれた贈りもの~あなたの幸せだけが全て~

【完結】シラユリシリーズ③君を忘れない~優しい思い出~(読切)

掲載日:2026/01/30

こちらの作品は「シラユリがくれた贈り物~あなたの幸せだけが全て~」の3作目(読切)となります。

前作までの2作品を読まれていなくてもジャポスカ目線で進みますので、それなりに読み進めて頂けそうな感じになっているかと思います。

詳しく知りたい方は

1作目(初ラノベ)

「永遠に咲くシラユリをあなたに…」

2作目

「片影のシラユリーあの日の君へー」

も併せてご覧下さると嬉しいです。




青い空に風になびく緑の木々…。海沿いの断崖は今日も海から伝う厳しい風が狂ったように舞う場所。

鳴り響くのは〝ヒュウヒュウゴオォ…。〟という断崖を駆け抜ける風の音だけ…。



の、

はずが……………。




「チョット!ルナ!アンタ…マタ ドコニ イッテキタノ?!」


「ママ、チョット カホゴダヨ。ワタシダッテ モウ オトナヨ?」


「ナニイッテンノ? アンタハ マダ ジュウブン コドモ ナンダカラ!」



騒がしく登場したのは懐かしい魔物の子、ジャポスカだ。

お見合いしたあと、意気投合したようでその後無事に結婚し、どうやら女の子に恵まれたようだ。今では一児(?)の母だ。ジャポスカが母ということは、ボスママもとうとうお祖母ちゃんになったのだ。


海沿いの断崖にあるジャポスカたちの巣は、そこにある上昇気流を上手く利用しなくては辿り着かない高くそびえる断崖の合間に出来た洞窟だ。

魔物たちの子育てには向いている環境なのだ。



「デ? ホントニ ドコニ イッテタノ?」


今度はトーンも変えて優しく尋ねた。


「ママノ オトモダチノ  トコ」



────ドキン!



ジャポスカは胸が高鳴った。〝ふっ、友達か…〟ジャポスカは遠くを見つめて目を閉じて思い出していた。







懐かしいなぁ────


ジャポスカは振り返る……………。



ルクセブルと出会ったのはママンが病気だった頃だ。まだ人間の事を信じられずに敵対していた時だったのに、ルクセブルは私の目をしっかりと見て、ママンとの交渉役をしてくれと願い出たんだった。私は逃げるためにOKしたけど、ルクセブルの真剣な目を思い出して気が変わったんだ。


それに約束通り、ルクセブルは私達に攻撃しないで必死に防御だけしていたな。ふふっ。



だからママンもルクセブルのことを信じて言うことを聞いて人間と協定を結んだっけ。あれからルクセブルとは仲良くなったし、奥方とだって打ち解けた。それから二人の間に産まれたクラウドは可愛かったなぁー。

人間の赤ちゃんってあんなに可愛いんだって思ったけど、私達の赤ちゃんだって負けてないけどね。


それがヨチヨチ歩きだしたと思ったらトコトコ歩くし、あっという間にタタタッって走るようになったのには驚いた!人間て、もっと成長がゆっくりだと思っていたからね。


そんなクラウドは私にとっては息子のようであり、弟のような存在だった。



クラウドを色んな場所に連れ出すのが楽しくて


どんどん大人になっていくクラウドにいつしかトキメキってものを覚えてしまったんだ。私とアイツは種族が違うのに……………。だけどアイツがいつも目で追っていたのはシラユリの薗を管理していた不死のラナベルだった。バカだな、クラウドも…。


いつだってそう思いながらもずっとクラウドを見てきたよ。


なのに、いつの間にかクラウドが姿を見せなくなって、ラナベルと一緒に消えてしまったんだもん。私がどんなに心配したか、わかってないんだよな、きっと。連絡先も知らせないなんてさ!今もどこで過ごしているのやら…。


ママンから言われてお見合いしたけど、全然そんな気分になれなかった。けど、渋々会っていた彼は私の気持ちを知った上で待ってくれるって言ってくれて私は彼に心を開いていったの。


でも、ずっと彼に対して後ろめたい気持ちになってちょっと辛かった。


それからもずっと、どんなに時間が過ぎてもラナベルとクラウドの行方は分からなくて、クラウドの弟であるアドルフ達だって成人して冒険に出てっちゃった。今はルクセブル達しかいないんだよね…。


だからきっとルナはルクセブルに会いに行ったんだろうな…。





私がそう過去を振り返っているとルナが声をかけてきた。



「ネエ ママ。オトモダチ、ママノコト シンパイ シテタヨ」


────エ?


「サイキン、スガタヲ ミセナイ カラッテ…。」


「ソッカ…。」



……………うん、そう言えば長いこと会っていないなぁ……………。




「ダカラ ワタシ イットイタ。ママ、イマ オトウトヲ マモッテイルッテ。」


「エ?!ソレ イッチャッタノ?!」


「ダメダッタ?ワタシ タノシミニ シテルノ」


「ダメジャナイケド…。」


何となく恥ずかしく感じるジャポスカ。



「ア、ソウダ。 ハイ、 コレ」


そう言ってルナがジャポスカに渡したのはクッキーだった。



「コレ…。」


そうジャポスカは知っていた。このクッキーがどういうものか。



クラウドの婚約者のふりをしていた時のこと、しっかり勘違いしていたアレクサンドラが時々このクッキーを焼いて待っていてくれたのだ。


「ナツカシイ…。」


ジャポスカはそのクッキーを胸に抱いて懐かしんだ。そして思った。


きっと彼等の方がクラウドの事を心配してるに違いない。ルクセブルはラナベルとクラウドが親しかったという事を知っているのかな…。


「ソウダ。アノ オヤシキノ オハナバタケ……………。 イッカクダケ ナニモ ウエテイナイノ」


「……………?」


「オジサンガ イウニハ ソコニハ オモイデノ ハナガ アッタンダッテ。」


「────オモイデノハナ?」



ジャポスカはその言葉に胸の奥がザワザワするのを感じた……………。胸騒ぎがする……………。





「ウン、ズット サイテイタノニ アルヒ トツゼンナクナッテ イマノ ジョウタイナンダッテ イッテタ。」


「──────────!」


やっぱりラナベルの花のことだ!



ジャポスカにはわかった。ジャポスカの手元にもラナベルから貰ったシラユリが置いてあったが、ある日突然全て消えてしまったからだ。




────そうだ、思い出した!


あの日、ラナベルに聞いたことがあった…



「この花たちはね、私の命と同じなの。私が生きている限りずっと咲き続けるのよ。今の私は不死だから、だから永遠に咲く花って伝わってるの。」


そう言った時のラナベルは誇らしげにも見え、悲し気にも見えた。あの時私はラナベルの孤独を垣間見たんだと思っていた。私たち魔物だって寿命が長いから


「私もそばにいて一緒に見てあげる」って言ったんだっけ。そしたらラナベルはニッコリと笑ってくれたんだったわ。


ジャポスカの目に涙が浮かんだ。


あの時の約束…。私、守れなかったんだわ…。


ジャポスカの頬を涙が静かに伝う……



「ママ?ドウシタノ?ドコカイタイノ?」


ルナが心配そうに母ジャポスカを見る。ジャポスカは静かに首を横に振り、


「チガウノ。タイセツナ ヒトタチヲ ナクシタンダッテ キヅイテ…。」


そう、ジャポスカはラナベルがもうこの世にいないことを悟った。そして同時に消えたクラウドもきっとラナベル同様にもうこの世界からいなくなったんだと…。だからどこを探しても見つからないんだと……。そうでないと何もかも説明がつかない。

それから彼を探す旅に出たアドルフや、彼の両親の事を思うとやりきれない気持ちになったのだ。



クラウド、ワタシのヤサシイオモイデ…。ワタシノ ムスコ。ワタシノ オトウト…。ソシテ ワタシノ ハツコイ……。


キミトノ タノシカッタ ヒビハ キット ワスレナイ…。




ジャポスカは真実に気付いてしまった。

けれど、それは自分だけの胸にしまっておこうと決意した。


きっとクラウドが両親を悲しませないために考えた結果だろうから…。



「ソッカ…ママ、ツラカッタネ。ダイジョウブ、ワタシガイルヨ。パパモイルヨ。」


ジャポスカは娘の優しさが身に染みた…。


「ウン、ウン、アリガト、ルナ。」


そう言ってしっかりとルナを抱きしめた。



人間であっても私達魔物であっても、いつかはこの世を去る時がくる。

残された人々にとっては悲しくて辛い…。

だから〝その時〟は優しく伝わる方がいい。

知らなければ知らない方がいい…。


ずっと あなたの心の中で彼らは生きているんだから…。



ラナベルと一緒に何かあったのなら、クラウドにとっては幸せな最期だったに違いない。

そう願いたい…。


ジャポスカはルナに抱きしめられながら色んな思いを胸に秘め、涙を流した。


〝ナクノハ イマダケダ…。〟



太陽が変わらず朝を告げるように、辛くても進んでいくしかない。

そのことはジャポスカもよく知っているから…。

幸いジャポスカには優しい娘のルナがそばにいて寄り添ってくれている。

ジャポスカは娘の優しい思いに胸が温かくなった。







────完────





読み切り型で「シラユリがくれた贈り物~あなたの幸せだけが全て~」の短編1作品として書きました。物語というよりはジャポスカ目線での振り返りといった感じですね。

また忘れた頃にこのシリーズで何か書きたいと思っております。


さて、次は社会人の恋愛に挑戦したいと思ってます。2月1日の公開まで暫くお待ちくださいね。

1話の文字数が1200~にしてますのでサクッと読めます。

お楽しみに!


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