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終章・終幕 静寂の中の真理
太陽がゆっくりと空を染め、朝の光が北の大地を満たす。
エリザベート・グランツは目を閉じ、深く息を吸った。
その背筋は、昨日も今日も変わらず、まっすぐに伸びている。
広場の村人たちは、無言で同じ呼吸を繰り返す。
鍬を持つ者も、子どもを抱く者も、兵士も老女も――
すべての息が、静かに重なり合い、世界が一瞬、完全な静寂に包まれる。
――筋肉は、今日も黙して在る。
カメラはゆっくりと引き、北の大地全体を映す。
そこには戦も飢えもなく、ただ人々が呼吸し、日々を生きている。
畑の土は湿り、川は光を反射し、空は穏やかに広がる。
遠く、鐘の音が響いた。
かつての祈りの合図ではない。
人々の胸の鼓動と呼吸に寄り添う、
“生きていること”そのもののリズム――
その中で、エリザベートは微笑む。
すべては言葉ではなく、行動によって、体によって、世界に在る。
静寂の中で、真理はただひとつ――
人は立ち、呼吸し、動くことで、神に近づくのだ。
風が吹き抜け、光が揺れる。
筋肉は、今日も黙して在る。
――そして世界は、ゆっくりと息をついた。




