表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉に祝福された悪役令嬢 -静かで狂った筋肉の世界-  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/38

終章:沈黙の祈り

―筋肉は神に近づくための形―

終章・第1場 静かなグランツ領

――春。雪解けの風が、北の大地を柔らかく撫でていた。

陽光に濡れた畑の上で、村人たちが列を成す。

誰も言葉を発しない。

ただ、鐘の音が一度だけ鳴ると、全員が同じ動作で深く息を吸い、ゆっくりと腕を上げた。

その動きは祈りにも似て、しかし祈りではなかった。

かつては“奇異”と呼ばれた行為も、今では生活の始まりを告げる合図となっている。

朝の空気が肺を満たし、筋肉が呼吸するたび、村のあちこちで土の香りと生命の熱が溶け合っていく。

その中央に、エリザベート・グランツが立っていた。

白衣の上に薄い外套を纏い、腰には農具。

背筋はまっすぐで、目を閉じたまま動かない。

ただ、立っているだけで、周囲の空気が凛と整う。

彼女の瞳がゆっくりと開く。

その眼差しは柔らかくも深く――かつて王都の崩壊を見届けた者だけが持つ、静かな強さを宿していた。

「今日も、正しく在りましょう。」

その声は小さく、しかし村中に響いた。

誰も返事をしない。

代わりに、全員が背筋を伸ばし、動き始める。

鍬を振る音。

息を整える音。

それらがひとつになり、まるでひとつの大きな心臓が鼓動しているかのようだった。

――もう、誰も飢えていない。

――誰も祈りの言葉を必要としていない。

ただ、呼吸があり、筋肉があり、

そこに“生”が在った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ