1-3 異香の彼女
少し前にも言ったが、うちの担任・戴安は国語教師だ。
だから彼女はよく朝の自習時間に小テストを配ってくる。
その問題の難易度は極端で、簡単なものは本当に簡単、難しいものは温苡蓉ですら白旗を上げるレベルだ。
「次の文を訳せ――『既来之、則安之』。」
これは簡単だ。つまり、まずい料理しか出ないレストランに来てしまったなら、我慢して食べろってこと。
要するに――「せっかく来たんだから、諦めて楽しめ」。
「次のうち、『知之為知之、不知為不知、是知也』の精神に最も近いものを選べ。」
四択問題だったが、要するに「分からないなら適当に答えるな」って意味だろ。
じゃあ、空欄のままにするのは、ある意味正解なんじゃ……?
テストは集められ、次の国語の授業で公開処刑される。
そう――公開処刑だ。
「二十六点。」
「四十一点。」
「五十八点。」
「十点。」
言っただろ、簡単なのは本当に簡単なんだ。
でも難しい問題が六割以上を占める。
「沈辰澤、四十五点。」
最後の一枚を配り終えると、戴安は腰に手を当て、深いため息をついた。
「はぁ……あんたたち、本当に勉強してるの? 次また赤点だったら罰写ね!」
罰写――どの先生も必ず持ってるスキルだ。
「でもね、褒めるべき子もいるわ。徐亞鈞は少しずつ点が上がってるし、温苡蓉は毎回満点近い。
それに、転校してきたばかりの葉子薰も一位を取ったわ。見習いなさいよ!」
――天から降臨した学園トップ系ヒロイン。
心の中で、彼女の属性タグを「天降学霸系」に変更しておいた。
授業後。
葉子薰はチャンスとばかりに沈辰澤の席へ駆け寄った。
「辰澤、もしよかったら……今度一緒に勉強会しない? 次はみんなで合格しようよ!」
……言うまでもなく、目的は別にある。
でも教室の中でそれを言うのは、あまり賢明とは言えない。
「勉強会? 私も参加する!」
「蓉も賛成だわ。文を読むこと幾年、筆は龍蛇のごとく走る。ともに学び、疑問を解こうではないか。」
「ふん、うちには家庭教師がいるけど……まあ、あなたたちと勉強してあげてもいいわ。」
「わ、私も……行っていいかな?」
沈辰澤の周りの女子たちは、まるで餌を守る猫のように一斉に立ち上がった。
葉子薰の計画は、その瞬間に瓦解。
空気読めなさ、ここに極まれり。
僕はいつも通り、この光景を背景の一部として受け流していた――が。
そのとき、葉子薰が僕の肩を指でトントンと叩いた。
振り向くと、当然のように言った。
「あなたも参加して。時間はあとで知らせるね。」
……え? 僕も?
なんで?
――あ。忘れてた。
今回、僕の点数、ギリギリ赤点の二点下だった。
つまり……あの空欄、やっぱり減点だったのか。
「え、僕……?」
危うく「行っていいの?」と自虐的な台詞を吐くところだった。
「じゃあ、フレンドになろう。グループ招待するね。」
葉子薰は最新機種のスマホを取り出し、可愛いケース越しに手慣れた指で操作する。
僕が動かないのを見ると、「ん?」と小さく促してきたので、慌てて自分のスマホを出した。
クラスメイトと連絡先を交換するのは、呂彥凱と陳建寬以外では初めてだ。
「届いた?」
葉子薰が、変な生き物が『Hi!』って手を振るスタンプを送ってきた。
「うん。」
僕はデフォルトの無表情スタンプで返す。
新しいグループができた通知が来た。
グループ名は――「国語小テスト救済班!」
メンバーは僕を含めて七人。
僕が入った瞬間、チャットが止まった気がするのは……気のせいだと思いたい。
――永遠に知らなくていい真実もある。




