仲間
「戻ったわよ」
「戻りましたわ」
夕方になると、ルゥナとライラお嬢様が戻ってきた。ライラお嬢様の部屋に直接ワープしてきたようで、いつの間にか居た感じだ。
「おかえり。ワープポイントの設置はどんな感じだ?」
「ひたすら馬車を走らせるだけだから、楽なものよ。本当なら、ライラが一緒に乗馬出来ればもっと馬の負担が減って距離を稼げるのだけど」
「それは申し訳ありませんわ・・・。一応、歩くだけの馬ならば乗馬できるのですが、あの速度で走るとなると、わたくしでは長時間耐えることは出来ませんわ」
「仕方ないわね。それなら、馬車をもっと小さい物にして軽くしましょうか」
「そうですわね。それじゃあ、執事に明日までに用意させますわ」
もう夕方なのだが、今から用意できるものなのだろうか。いや、すでに所持しているのかもしれないか。それにしても、いつの間にルゥナはライラを呼び捨てするようになったんだ? 貴族相手に呼び捨てなんて、ラノベだったら罪になりそうなものなんだが。
「そうそう。これからライラは私達のパーティ仲間と言う事になるわ。そうすれば、一緒に行動も出来るしライラの経験にもなるし」
「いいのか? 伯爵の許可を得ないで勝手に決めて」
「ライラ本人の希望だもの、ライラが自分で説得するでしょう」
「はい。わたくしも、冒険者というものに憧れていましたの。お父様は危険だから駄目だとおっしゃると思いますが、ルゥナ様やルビー様が居るなら安心できるでしょうし」
「パーティ仲間になるんだから、呼び捨てでいいわよ。仲間に様づけなんておかしいでしょう?」
「よろしいのですか? でも、わたくしとしては大事な恩人を呼び捨てにするのに抵抗があるのですけれど」
「構わないわ。瞬間移動できる仲間ですもの」
「拙者も構わぬ」
あー、ルゥナの中ではライラの価値はワープ出来る事に極振りされてる感じか。確かに、あればものすごく便利だろう。夜の番をしなくてもいいし、何よりも安全な場所で過ごせるし。といっても、ルゥナのアイテムボックスのおかげで結構楽な野営はしているんだが、さすがにお嬢様として育てられているライラお嬢様を一緒に野営させる訳には行かないか。
「では、ルゥナ、ルビー、アキラ、これからよろしくお願いしますわね」
俺には呼び捨て可能か聞かれてすら無いが、ライラお嬢様から笑顔でお願いされては断れないだろう。そもそも、様で呼ばれる方がくすぐったいしな。
「ええ、改めてよろしく、ライラ」
「拙者も、よろしくお願い致す、ライラ殿」
「よ、よろしく」
俺はさすがにすぐに呼び捨ては慣れないので、呼ぶ機会があれば呼ぶとするか。今の流れで呼べそうな気もしたが、少し照れてしまって呼べなかった。
「僕たちはー?」
「ユラもー」
「あっ、申し訳ありませんわ。シルフィとユラもよろしくお願いしますね」
「よろしくー」
「よろしくでちゅ」
こうして、新しい仲間としてライラが増えた。こう見ると、パーティの女子率が高すぎる気がするな。ラノベではハーレム野郎と呼ばれてしまう気もするが、決してハーレムではない。なぜなら、俺がパーティの中心じゃ無いからだ。まあ、美少女に囲まれるのは悪い気は全くしないが。
「それじゃあ、アキラは水晶の魔力の補充をしておいてちょうだい」
俺はライラから水晶を受け取る。ほらな、ルゥナに命令される俺がハーレム野郎なわけがないだろ。




