表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移して奴隷にされたけど、見えない塊を拾ったので逃げる事が出来ました  作者: 斉藤一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/63

精霊魔法

「ところで、精霊魔法と普通の魔法の違いってなんなんだ? 見た感じ、大して変わらないように見えるんだけど」


「まずはそこからか。座学ならば、取り合えず座ろうか」


ルビーはマジックボックスからシートを取り出して庭に敷く。わざわざ屋敷の中に戻らないって事は、それほど長話にはならないのだろう。まあ、理論とかどうとか言われても理解できるきはしないけど。


「まず、大きな違いは自身の魔力を使うのか、空間の魔力を使うのかという事だ」


「うん、それの違いがよく分からん。結局、魔法は魔法なんじゃ無いのか?」


「確かに、初級の魔法ならばそれほど違いが無いだろうな。例えば、サラマンダーと契約した精霊魔法使いと、火の魔法を使える一般的な魔法使いなら、拳大の火の玉を生成したとして、それほど威力に差はない」


「なるほど。じゃあ、どういうところで違いが出るんだ?」


「まずは威力だな。魔法使いは、イメージによって魔法の大きさが変わり、その威力も変わる。初級魔法で例えれば、小さなファイアボールの方が大きなファイアボールよりも威力が高い」


「え? 普通、逆じゃ無いのか?」


「いや、同じ使用魔力量なら小さい方が威力が高いのだ。逆に、制御できず巨大化すればその分無駄な魔力が使われて威力が減る。ただ、大きさに伴って魔力を込める量を増やせば威力は増すが、正直それなら小さなものを2つ作る方が効果的だろう」


「そうなんだ。ってことは、精霊魔法使いは違うのか?」


「ああ。精霊魔法使いは精霊の強さによって魔法の威力が変わる。例え同じファイアボールでも、低級精霊と中級精霊では威力が全然違う。さらに、使用する魔力は空間から得るから、場所によっても威力が変わるな。それに、精霊の好みによっても変わる。さっきのサラマンダーの例で言えば、森で使うよりも火山で使う方が同じ空間魔力量でも威力が結構変わると言われている」


「つまり、シルフィの場合はただの平野で使うよりも森で使う方が効率がいいって事か」


「そうなるな。次に、発動する場所が変わる。というか、精霊魔法使いは発動場所を変えられると言うべきだろうか。魔法使いであれば、自分の体の魔力を使う以上、必ず発動場所は自分の体のどこかからとなる。それが指先だろうが、足先だろうがな。例外として、杖などの魔力を通す武器を持てば、杖の先からも出せるが」


「ふーん、それなら分かるな。それなら、精霊は精霊の居る場所から魔法が発動するから、本人から離れている場所でも使用可能って事だな」


「そうだ。これは精霊視を持たない者にとっては脅威だぞ? いきなり、自身の真後ろや真上なんていう死角から魔法が飛んでくる可能性があるのだからな。シルフィ殿の得意なピアシングルートを普通の魔法使いが使うとしたら、自分の足元から相手の居る場所へ徐々に伸ばしていくしかない。それでは、簡単に回避されてしまうだろう」


「奇襲性の高い魔法も、自分が中心じゃ使い勝手が悪そうだな。じゃあ、精霊魔法使いは魔法使いよりも強いって事か?」


「いや、一概にそうとは言えんな。違いはあるからな。例えば、魔法使いは自身の魔力を使う以上、限界はある。ただ、精霊魔法使いは自身の魔力を使わない代わりに空間魔力が切れれば魔法を使えなくなる。空間魔力が少ない場所だと魔法使いが有利だし、空間魔力が多い場所だと精霊魔法使いが有利になるだろう。また、魔法使いは魔法を使う間に隙が生まれ易いが、精霊魔法使いは精霊に指示した後自由に動ける。ただ、一般的に魔法使いは複数の属性、さらに数々の魔法を使うが、精霊魔法使いは精霊が使える魔法しか使えない以上、契約精霊の数で制限がかかる」


「契約精霊の数で制限? いっぱい精霊と契約したらダメなのか?」


「精霊の契約には、精霊との相性もあるが、自分の力以上の精霊を内包する事が出来ないと言われている。その量は誰にも分からないが、上位の精霊ほど多くの容量を使うと言われているな」


「それなら、俺みたいにお願いして精霊に使って貰えばいいだけじゃないのか?」


「それは無理だ。・・・いや、普通は無理なんだぞ? 契約をしていない精霊が言う事を聞いてくれることは無いからな。シルフィ殿が特別なだけで、契約をしていない人間の言う事を聞いても見返りが無い以上、精霊が力を貸す理由が無いのだ」


「なるほど? じゃあ、ユラもルビーの言う事は聞かないって事か?」


「あたしはご主人様が命令してくれれば、ルビーの指示でも魔法を使ってもいいでちゅよ?」


「って言ってるけど?」


「うーむ。ユラ殿の見返りは何なのだ? 恐らく、拙者の指示で魔法を使っても、アキラ殿から見返りを得ているのだろうが」


「あたしは、ご主人様と一緒に居られればいいでちゅ」


「僕はアキラが面白いことをしてくれれば満足ですけどー。まあ、ちゃんと魔力も貰っていますがー」


「なんだと? 聞いてないぞ」


「いいじゃないですかー。どうせ、アキラは魔力を垂れ流しているですしー」


「そうなのか? 俺は別に垂れ流してるつもりは無いんだけど」


「普通は垂れ流していたら、すぐに魔力切れに陥るのだがな? アキラ殿は、魔力制御できるのだろう? であれば、自身の魔力を留めるようにイメージすればいいはずだ」


「そうなのか? じゃあ、やってみるか」


俺は目を閉じて、静かに自分の魔力を制御する。実際に意識してみると、俺の魔力は蛇口を少し開けていた感じで、魔力が漏れていたようだ。まあ、世界樹の杖があるから自動回復していて気にならなかったのだろう。


「あっ! アキラの魔力が無くなったんですが!」


「あたしは普通に魔力を貰えていまちゅよ?」


「それが、契約した精霊と契約していない精霊の違いなのだろう。今まで、アキラ殿は無意識にシルフィにも見返りを与えていたという事だ」


「だってさ。どうするシルフィ。今後は俺と契約しないと魔力を与えることは出来ないぞ?」


「むっ、むー。アキラのくせに、僕に取引を持ち込むんですかー?」


シルフィは、何かを考えているのか無言になる。俺としては冗談っぽく言ったつもりだったんだけど、なんか真剣に考え始めたから「冗談だって」と言い出しづらくなった。


「わかった。わかりましたー。契約するから今まで通り魔力を頂戴」


「えっ、いいのか?」


「森の中なら別ですけどー、それ以外の場所だと僕も魔力が足りないんですー」


そうだったのか。だから、ちょくちょく俺の頭に乗ったりして魔力を得ていたって事か。てっきり、飛ぶのがめんどくさいからだと思っていたな。


「で、契約ってどうやるんだ?」


「僕と魔力的な回線を繋げればいいだけですよー。僕からつなげるので、アキラは何もしなくていいですよー」


よく分からないが、暫く待っていたら俺の体の中に何か異物が入ったような感触があった。それは、俺の中から魔力を吸い出しているようだ。


「これが契約なのか。ユラはそんなに感じないけど、シルフィは明らかに俺の魔力を吸ってる感じがするんだが?」


「僕も最近はまともに魔力を吸収していませんでしたからねー。不足分をアキラから一気に吸収しているんでしょうねー」


「何を他人事のように言ってやがる。まあ、それほど減ってる感じはしないからいいけど」


「ふむ。魔力が減ると感じるほどの魔力量の譲渡・・・。シルフィ殿は、少なくとも低級精霊では無さそうだな。低級精霊なら、ほとんど魔力を必要としないからな」


「そうなのか? まあ、シルフィはその辺の記憶が無いみたいだからな」


「まあ、僕が実はすごい精霊だったって事なのではー? 契約したんだから、ちゃんと魔力は貰いますよー」


まだ働いてもいないのに、見返りだけ貰われている様な気がするが、これで俺は本格的に精霊魔法使いになれたと言ってもいいのではないだろうか。


「ところで、俺は真名で契約してるのか?」


「あ・・・あーっ! 僕としたことが、アキラと契約しちゃった!」


シルフィは慌てているが、感覚的に違いが判らん。恐らく、ユラは真名・・・というか、名付けてるから真の契約なんだろうけど、シルフィからはそんな感じしないんだけど。


「何も変わった感じはしないんだが?」


「んー、そう言われればそうですねー。たぶん、普通に僕から契約を切る事が可能ですよー」


「じゃあ、やっぱりシルフィっていう名前は真名じゃないってこなのか?」


「さあ? 僕の名前はシルフィですけど、契約が縛られないのはよく分からないですねー」


結局、真実が分からないまま契約は終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ