森の調査2
敵に見つからないように先にルゥナが動く。俺達が動くのは、ルゥナの奇襲が成功してからだ。
「もうすぐルゥナがオークの近くに着くですよー」
ルゥナが居ないので、シルフィが連絡役だ。森の中ならあの小さいルゥナでも簡単にシルフィに見つかるらしい。俺達は、奇襲後にすぐに動けるよう距離を詰める。
「ルゥナが攻撃したですよー」
「よし、行くぞ!」
俺達は十数メートルの距離を走り、オークの前へと飛び出す。
「ダメよ! 奇襲がバレているわ!」
その瞬間、ルゥナから警告が入った。しかし、もう姿を現した以上、戦闘は避けられないだろう。それに、たかだかオーク5体くらい、ルゥナとルビーが居れば十分だと思っていた。
「ブフフッ、罠にかかったぞ。人間の冒険者だ」
5体のオークの内、木の上に居たオークが言葉を話した。魔物が言葉を話すなんて初めてだが、話せる奴も居るって事か?
「馬鹿な、魔物が人語を話すなどありえん!」
「我らをただのオークだと思っていたのか? 我々は選ばれし精鋭だ」
ルビーに対してローブのオークから返事が返ってきた。話せると自慢したくなるのだろうか? これは、思ったよりも情報を聞きだせるんじゃないだろうか。
「来てしまったのね。私の攻撃が避けられたわ。いえ、当たらなかったと言うべきかしら。これは私の知っている偽装というスキルに似ているけど違うわね。看破!」
ルゥナが看破というスキルを使うと、4体のオークの姿が変化した。それぞれ、剣を持ったオーク、弓を持ったオーク、盾を持ったオーク、サンバを踊るような派手な衣装のオーク。唯一変わらなかったのはローブを被っているオークだ。
「ほぉ、吾輩の幻惑を解除する者がおるぞ。気をつけよ」
「別にバレた所で問題はねぇだろ」
「ブフッ、オスが一匹にメスが二匹か? おではメスが良いな」
サンバオーク、剣オーク、弓オークが順に話す。木の上に居たのが弓オークなら納得だ。さっきまで、普通の棍棒を持ったオークが木の上に居たように見えていたからな。どうやらそれがサンバオークの幻惑だったようだが。
「俺もメスがいい。あっちの変な剣を持った奴は俺が貰う」
「あっ、おでもそっちがよかったのに!」
「早いもの勝ちだ」
剣オークが弓オークより先にルビーに近づいて行く。当初の予定では、ルビーが素早くオークメイジを倒す予定だったんだが、予定が狂ってしまった。
「ルビー、そっちの剣持ちは任せるわ。私は弓持ちを担当するしかないようね。こいつには、私の居場所が分かるみたいなの」
「ブフッ、おではオークレンジャー。おでの鷹の目にかかれば小さな物体もよく見えるで」
そう言って弓オーク改めオークレンジャーは弓をつがえるとルゥナに放つ。あの小さなルゥナを狙えるなんて、本当に居場所が分かるらしいな。それに腕もいいらしい。
「じゃあ、お前には俺の相手をしてもらおうか。俺はオークソードファイターだ」
剣オーク改めオークソードファイターは剣を振りかぶってルビーに斬りつけるがルビーも簡単にそれを防ぐ。
「吾輩は攻撃手段が無い故、オスの相手は任せるぞ、オークセージ」
「守りは任せろ」
「ああ、頼むぞオークディフェンダー」
サンバオーク以外の名前と言うか職業が分かったな。ローブを被っているのがオークセージで盾を持っているのがオークディフェンダーか。
「シルフィ、ピアシングルートをあのローブの奴に!」
「はいはーい。えいっ!」
シルフィが手を振ると、地面から尖った根が生え、そのままオークセージを貫くはずだった。
「甘い、オールディフェンス!」
オークディフェンダーがそう叫ぶと、オークディフェンダーとオークセージがシャボン玉の様なものに包まれる。すると、キラーマンティスの硬い皮膚でも貫いた木の根が弾かれた。
「あー、ダメみたいですねー。何度やっても無駄だと思うのでー、僕はあのへんてこな衣装のオークの相手をする事にしますよー」
シルフィは勝手にそう判断し、サンバオークの方へと向かって行った。いや、勝手に離れられると俺に出来ることが減るんだけど!
「ユラ、取り合えずエールを切らさないように頼む」
「ご主人様、わかりまちた。がんばれー」
ユラに再びエールを使って貰う。これでしばらくは身体能力が向上するはずだ。俺は取り合えずルビーの様子を伺う。
「さっさと倒させてもらう。一の太刀!」
「俺を舐めるなよ、ソードスラッシュ!」
ルビーの刀とオークソードファイターの剣がぶつかる。お互いの武器が弾かれるが、ルビーは再び刀を構える。
「これならどうだ? 二の太刀!」
「甘いな、ダブルスラッシュ!」
ルビーの刀の2連撃が同様にオークソードファイターの2連撃の剣と再び相打ちとなる。
「これも防ぐか、ならば三の―――くっ!」
「油断するな、オークソードファイター。もしそれが三連撃なら今のお前じゃ防げまい」
「助かったぜオークセージ。もう、油断しねぇ!」
「アキラ! さすがに魔法を使われるとまずい。何とかそっちで受け持ってもらえないだろうか!」
「わ、分かった!」
俺が様子見をしているうちにオークセージがストーンランスをルビーに放っていた。幸い、ルビーは躱したが、何度も魔法を使われたらオークソードファイターとの戦闘に集中できないだろう。
「お前の相手は俺だ!」
俺はパワードスーツを使って素早くオークセージへと詰め寄る。
「させん」
だがそれはオークディフェンダーに道を防がれる。
「痛っ、いたたたた! おい、吾輩の所に攻撃が来ておるぞ! 早くオスを倒せ! 幻惑!」
「あれー? 僕の攻撃が当たらなくなりましたねー」
その間にシルフィはサンバオークに攻撃してくれたようだが、その攻撃もすでに当たらなくなったようだ。ルゥナの看破が無いと恐らく本体に当てることは難しいのだろう。
「ブフフッ、さっきみたいにオークダンサーの幻惑を解除したいか? おではそうさせねーでよ」
「なんて命中率なの。本当に邪魔ね」
ルゥナがシルフィの援護をしようと動いた瞬間、オークレンジャーの弓がルゥナの足止めする。そして、幻惑を使っているやつはオークダンサーって言うのか。サンバと大して変わらんな。
「うぉぉぉ!」
俺はオークディフェンダーに向かってパワードスーツで殴りつける。剣よりも拳の方が当てやすいからだ。だが、オークディフェンダーは見えないはずのエーテルの拳が盾に触れた瞬間――。
「パリィ!」
俺の拳を弾き飛ばした。俺がバランスを崩して尻もちをついた時、オークセージが杖を構えて俺の方を向いた。
「細切れになれ! エアーカッター!」
オークセージから視認しにくい風の刃が俺に向かって飛んでくる。だが、その程度の攻撃では俺のパワードスーツには効かない。多少の衝撃はあるが、軽く押された程度だな。
「むっ、我の魔法が効かぬだと?」
「見えない何かに守られてる」
「なるほど。ならば我がそれ事破壊して見せよう。ストーンフォール!」
オークセージが上に杖を掲げて魔法を唱えると、俺の真上に数メートルの巨大な岩が出現する。その岩は、俺を地面に押しつぶして消える。
「だめだな」
「あれでも壊れぬか」
俺は地面に少しめりこんだだけで、エーテルは無傷だ。だけど、エーテルは無傷でも中の俺には衝撃が通り、体を少し痛める。内部はゴムの様にしてあるとはいえ、それに叩きつけられれば痛いのだ。
「ご主人様、大丈夫でちゅか?! 世界樹の雫、いりまちゅか?」
「それはまだいい。周りに何かあれば、報告を頼む。とりあえず、今の状況を聞かせてくれ」
「はいでちゅ。ルビーしゃんは剣のオークに対して優勢に戦っていまちゅが、倒せてはいないでちゅ。ルゥナしゃんは弓のオークと遠距離で戦っていまちゅが、こちらも決定打がないようでちゅ。シルフィお姉ちゃんは敵を見つけられないみたいでしゅ」
「わかった」
つまり、まだこの硬直した状況が続きそうって事だな。俺の方も何とか状況を打破しないといけないな。今まで、ルゥナやルビーに戦闘を任せればいいやと俺自身は特に戦いに関して努力してこなかった。そのつけがここでこんな状況になっている。ゴブリンキングを倒したからと天狗になっていたが、俺がもう少し戦えれば状況は変わっていたはずだ。
「せめて、盾だけでも!」
俺は右手のエーテルを万力の様に変化させる。この変化はオークディフェンダーには分からないはずだ。
「うおぉぉぉ!」
俺は再び、ただ殴りに来たようにオークディフェンダーに見せる。先ほどと同様に、オークディフェンダーはパリィを合わせようと構えてくれた。俺は、その盾を万力で掴む。
「もう、盾は使わせねぇぞ!」
「くそ、離れろ!」
オークディフェンダーは盾を振り回そうとするが、俺の右手ががっちりと挟み込んでいる。オークセージが杖を構えるが、オークディフェンダーに当たりそうだからか魔法は使ってきていない。俺は徐々に万力に力を込める。すると、オークディフェンダーの盾からミシリミシリと潰れる音が聞こえてきた。




