相談
「ライラお嬢様、どうしてお金が無いのか知っているのかしら? 伯爵家なら支払えない金額では無かったと思うのだけれど」
ルゥナの問いかけに、ライラお嬢様は少し思案する。
「・・・お父様からは、明確には教えていただいていません。ですけれど、恐らくは先ほどのオークの襲撃に絡む事だと思います。オークがこの街の周辺の人間を襲う様になり、街の者たちが畑作業中に被害を受けたり、訪れる商人が襲われるなどして訪れる人が減り、収入が減ってきたのだと思います」
「実際、我々も隣の街へ援軍を出してくれるよう求め、その帰りに襲われました。あの時は、助けていただき、本当に感謝しております」
カイエンさんと、ライラお嬢様は頭を下げて感謝の意をしてしてくれた。それにしても、オークの被害がひどいのか。俺達は幸いにも襲われなかったが、村に寄らなかったせいでそういう情報も得ていなかったな。でも、正直、村の宿屋に泊まるくらいなら野宿の方がマシってレベルでルゥナの魔道具が充実していたからな。
しばらくして、クラディア伯爵が戻ってきた。手には紙を持っている。これがさっき言ってた証明書なのだろう。
「内容を確認してくれ。良ければ、サインをする」
クラディアはその用紙をルゥナに渡す。ルゥナは、内容を確認した後クラディア伯爵に用紙を返す。
「この内容で問題無いわ」
クラディア伯爵は、受け取った用紙にサインし、封筒に入れて蝋を垂らし、指輪を押し付けて封をする。蝋にはしっかりと伯爵家の紋章が付けられていた。これなら、偽装やら偽物やらと言われずに済むだろうな。
「今、ライラお嬢様から聞いていたのだけれど、そんなにオークの被害が多いのかしら?」
「ああ。冒険者ギルドに常設依頼でオークの討伐を出しているのだが、オーク単体ならともかく複数相手ではDランク以下の冒険者では分が悪いようだ。さらに悪いことに、冒険者や商人が残した武器を使うほどの知能を持っている個体も居るようだ」
ユーヤ隊長の腕を斬り飛ばしたオークが居たが、あいつの持っていたのが斧だった。あれは、冒険者か商人から奪った武器だったのか。
「オーク単体の討伐ならDランク冒険者のレベルでしょうけど、複数で襲われたらDランク冒険者では厳しいわね。原因は判明しているのかしら?」
「恐らくだが、どこかに群れのボスが居るのだと思われる。ただ、そのボスがどこに居るのかはまだ判明していない。その捜索を含めて娘に援軍の依頼をして来てもらったのだが・・・」
「お父様、援軍を出してもらう事は了承してもらえましたわ。この街だけの問題では無くなってきていますもの。けれども、了承されたのはこの街と、向こうの街の間だけですわ・・・」
「やはりか。だが、反対側は深い森になっている。オークの根城があるとすれば、森の中の可能性が高いと思っているのだが。我が町の兵士長が倒せなかったオークを無傷で倒した腕前ならば、もしよければ力を貸してもらえないだろうか?」
ボスの居場所は分からないが、森の中に居る可能性が高いのか。シルフィなら調べられそうだけど、この件に関して俺達は関わるべきなのかどうかだよな。
ちなみに、お嬢様たちを襲っていたオーク達の死体は回収していない。ルゥナのストレージに入れる訳にはいかないし、のんびりと解体している余裕も無かったからな。武器はどうしたから分からないが、放置してたらまたオークに拾われる危険性があるのか?
「私達も、冒険者ギルドで情報を集めようと思うのだけれど。判断は情報が集まってからでいいかしら? 私達の冒険者ランクはまだEで、ルビーですらDですもの」
「なんと。だが、強さ的にはすでにCランク以上に匹敵すると思うのだが?」
「私達は、今は目立ちたくないの。分かるでしょう?」
「なるほど。後ろ盾が先というわけか・・・。分かった、私も早々に行動に移すとする」
「では、侯爵家の返事が貰えるまで、この街に滞在する事にするわ」
「その間、屋敷の客室を自由に使って貰って構わない。食事も用意させよう」
「助かるわ。馬の世話もお願いできるかしら?」
「兵舎に厩舎があるから、そちらで面倒を見させよう」
クラディア伯爵に色々と便宜をはかってもらう事が出来た。ただ、これってすでに巻き込まれてる気がするんだけど、気のせいか? とりあえず、俺達にあてがわれた部屋へ行ってから話をすることにする。
「ここが客間か。結構広いな」
「それはそうよ。ここを使うの何て貴族くらいでしょうし。それよりも、侯爵家が後ろ盾となってくれれば私達の問題はほぼ解決ね」
「そうだな。それで命を狙われる危険性が減るならうれしいけど。で、その間はオークを狩るのか?」
「拙者はオーク肉は好きだぞ。肉厚で、肉汁がたっぷりで、焼いただけでもうまいからな」
ルビーがオーク肉のステーキでも思い出したのか、ジュルリと涎をすする。
「そんなにうまいなら、さっきのオークの解体に向かうか?」
「あの肉は、魔物や動物にとってもうまいはずだ。だから、あれだけ血の臭いがするならばすでにウルフや鳥獣が食らいついている可能性がある。それに、血抜きをしていないから不味くなっているだろうしな。だから、食べるなら新しく狩るべきだろう」
「じゃあ、シルフィに森を探索してもらうか? それとも、ギルドで情報収集か?」
「両方ね。私達がギルドで情報を集めている間に、シルフィには森を調べて貰いましょう」
「いいですよー。どうせ暇ですしー」
「ただ、いくら精霊とはいえ油断は禁物よ。オークの中には魔法を使うものも居るでしょうから」
「そいつらにバレないように探ればいいって事ですねー。面白くなる予感がしますよー」
シルフィは、さっそく森の方へと飛んでいく。さっきの話を聞いていたのなら場所は分かるよな? まあ、その辺はシルフィに任せるか。
「ユラは、世界樹の雫を出せそうか?」
道中で用意した世界樹の雫もクラディア伯爵に渡してしまったので、今の手持ちは無い。だから、一つは持っておきたいよな。
「大丈夫でちゅ。世界樹の雫~」
「待て待て、ルゥナが容器を出してからだって!」
すぐに世界樹の雫を出そうとしたユラを止め、ルゥナが容器を出すのを待つ。そして、ルゥナの出した容器に世界樹の雫を入れた。世界樹の雫の効果は、ユーヤ隊長の怪我を治すほどだから1つあるだけでも保険になる。欠損すら治るのだから、金持ちが求めるのも分かる気がする。怪我だけじゃ無くて病気にも効くみたいだしな。
「シルフィが、あんまり多様すると付近の魔力が尽きるって言うから、しばらく経ってからまた出してもらおうか?」
「そうね。あればあるほど良いのだけれど、私にはそのタイミングが分からないもの」
「俺も分からないから、次使うときはシルフィが居る時だな」
ユラ自身にも分からないみたいだし。付近の魔力が尽きることは、精霊にとって空気が無くなるようなものみたいだし。呼吸はしてないから窒息はしないけど、居づらく感じるみたいだ。
「それじゃあ、冒険者ギルドに行きましょうか」
俺達は、ヤクトドーガの街の冒険者ギルドに向かうことにする。
ライラ イメージイラスト




