ゴブリンクイーンの杖
「それで、効果の方はどうなんだい?」
クラウド隊長は、やはり武器の性能の方に興味があるようだ。街へ戻ってくるまで、武器について色々と話してくれた。というか、武器オタクって感じでずっと話続けてたのが怖かった。
「まずはゴブリンキングの剣から調べようか。鑑定」
やっぱり、鑑定スキルっていうのがあるんだな。この世界では贋作とか偽物とか気軽に売れないよな。まあ、俺には関係ないけど。でも、異世界ものの定番って感じで鑑定スキルは欲しいな。
「剣の効果は、腕力向上に加えて重量変化。それと魔力を込めると剣が火を纏い、飛ばす事も可能だ」
「戦っていた時の状況から、効果は大体分かってたけど、やっぱり結構強い武器だよね。ゴブリンキングの攻撃がやけに強かったって思ったんだ」
「重量変化ってなんですか?」
「ああ、アキラくんはまだ詳しく無いものな。重量変化は攻撃する時だけ剣の重量が重くなるんだ。ゴブリンキングの剣を持った時に、思ったよりも軽いと思わなかったかい?」
俺はパワードスーツを常時つけているから重さに関しては重いとは思わなかったけど、話を聞きたいから合わせようっと。
「そうですね」
「まあ、重量変化は珍しいけど、重量の軽減や増加は珍しいものじゃないよ。付与士がつけることもあるし。例えば、重い鎧を軽くしたり、軽いショートソードを重くしたりして威力を変えるんだ。そして、重量変化は自動でそれをやってくれるから便利なんだよ。持ち歩くときは軽く、斬る時は重くなる。ただ、扱いは難しいけどね」
「なるほど、分かりました」
攻撃時だけ威力アップって感じか。確かに、旅の間に重い装備をずっと持ち続けるのは辛いよな。ジョズさんも盾や鎧にそういうのをつけれたらいいんだろうけど、きっと付与は高いんだろうな。安かったらつけてるだろうし。
「それじゃあ、次にゴブリンクイーンの杖だね。鑑定。―――おや? この杖、何の効果も無いようだね」
「え、そうなのかい?」
「ええ。確かに魔力は感じるんだけど、杖自体に何の追加性能が無い。つまり、ただの魔力のこもった枝みたいなものだね」
「ふむ。なぜそんなものをゴブリンクイーンが・・・? まあ、性能は分かったよ、ありがとう」
「どういたしまして。また、珍しいものがあったら見せて下さい」
店内を見たが、特に欲しいものが無かったのでそのまま店を出る。使い道がニッチすぎて、旅には持って行けないな。なんだよ、部屋の南側に置いた時だけアロマが出る壺とか、昼の12時だけ鳴る鳩時計とか。
「それで、アキラくん。ゴブリンキングの剣は護衛隊が買い上げていいかい?」
「俺は剣を使わないのでいいですよ。ゴブリンクイーンの杖はどうします?」
「そっちは悪いけど、必要無いかな。ただの枝じゃあ、魔法使いにとっても必要ないし」
「アキラ、杖はあなたが持っていたらどうかしら? 一応、精霊魔法使いらしく、杖を持つのも悪くないわよ。それに、普通は相手の攻撃を防いだり、殴ったりするのにも使えるから後衛でも装備は持っている物よ?」
俺に関してはエーテルがあるからその辺は考えていなかった。それに、使えない剣をずっと腰につけているよりも、杖を持っていた方が冒険者らしいか。剣、飾りにしかなっていないからな。剣道の授業で習った程度じゃ、実戦にはまったく使えないことが分かったよ。枝を削ったりするだけならナイフで十分だからな。
「じゃあ、俺が持つか」
俺はクラウド隊長からゴブリンクイーンの杖を受け取る。その瞬間、杖が光り輝いた。
「なんだ、この光は!」
「え、どうしたんだい、アキラくん?」
光はクラウド隊長には見えていないようで、俺だけ見潰しされた感じになったのか? 光が収まった様で、ゆっくりと目を開く。すると、ピンク色の髪をした、小学校低学年くらいの女の子が座っていた。いや、背中に羽が生えているところを見ると、人間じゃ無いようだ。それに、耳も尖っているし。
「ちょっ、裸!」
「アキラは後ろを向いていてくれるかしら?」
「わぁ、この子、精霊ですねー。この枝に憑いているんですかねー?」
わたわたしはじめた俺達を、クラウド隊長が不思議そうに見ている。シルフィが精霊と言ったので、やはり精霊なのだろう。それなら、精霊視を持たないクラウド隊長にはこの子は見えていないのか。それに、ルゥナもシルフィ以外の精霊が視えるところを見ると、精霊視を持っているのかもしれない。その割には、精霊と契約していないのが不思議なんだけど。
「いい? 服を着るのよ、服を」
「あう?」
「ルゥナ、それじゃだめですよー。僕たち精霊は服なんて着ないんですからー。ほら、僕みたいにこうやって魔力を変化させるんですよー」
ルゥナの言う事が理解できなかったようだが、シルフィの言う事は理解できたのかな?
「おー、そうです、そうです。自分の好きなように変化させていいですよー」
「あうー」
「へぇ、神官みたいな感じね。アキラ、もう見てもいいわよ」
ルゥナから許可が出たので振り返る。そこには、きちんと服を着た女の子が立っていた。白いワンピースの様な服装で、ベレー帽みたいな帽子を被っている。確かに、ルゥナの言う通り神官っぽさがあるな。
「この子ってやっぱりゴブリンクイーンの杖に宿った精霊かなにかか?」
「違いますねー。アキラが触ったからか、元の枝に戻ったみたいですよー。ゴブリンクイーンの杖に偽装されてたっぽいですねー。もしくは、枝をゴブリンクイーンが杖にしていたか、ですかねー」
「ふーん、そうなのか」
「そろそろ、俺にも説明してくれないか?」
ずっと置いてけぼりだったクラウド隊長が話しかけて来た。説明と言っても、俺にもどういえばいいか分からないんだけどな。
「えっと、俺がゴブリンクイーンの杖を触ったら、精霊が出てきたみたいです。あと、シルフィが言うには、これはゴブリンクイーンの杖では無かったようですね」
「確かに、魔力はあるけどなんの能力も無いって言っていたね。それで、今は変わったと?」
「はい、そうみたいです」
「それなら、もう一度鑑定しに行こう!」
「その前に、この精霊、どうしましょう?」
「え? 俺は、精霊魔法使いじゃ無いからよく分からないんだけど、普通に契約すればいいんじゃないのか?」
「シルフィは分かるか?」
「さあ? 僕も契約した事無いから分からないですねー。契約の仕方は本能的に分かりますけど、この子が契約できるのかどうかは知らないですよー」
「それなら、この子の意思を確認したらどうかしら? ねぇ、あなた。アキラと契約したい?」
「あう、えうー!」
言葉は話せないようだが、雰囲気的に「契約するー」って感じの返事に聞こえる。実際、俺に向かって手を差し出してきた。
「手を握ればいいのか?」
とりあえず、出された手を握る。その瞬間、再び辺りを光が照らす。その光が収まった時、俺はこの精霊と何かが繋がったような感触があった。これが契約するって事なのか。それなら、やっぱりシルフィとは全く契約た様子は無いのに納得した。
「あたし、ご主人様の知識、少し、もらたー。あたし、役に立つよう、がんばりゅ」
知識はあっても、きちんとまだ発音できないようだな。正直、見た目よりも幼いしゃべりだが、生まれたばかりなら仕方がない。
「ああ、よろしく。でも、契約といいつつ、何を契約したのかよく分からないや」
「え? 精霊と契約する時は、脳内に契約内容が現れると聞いたことがあるわ。そこに、精霊と守るべき約束事を記載していって、お互い納得したら契約するのよ? 私が聞いた契約内容だと、毎日魔力を与える代わりに力を貸すとか、精霊の好きなものを必ず身に着けるとかね」
「全然そんなの無かったぞ? うーん、これって大丈夫なのか?」
「分からないわ、詳しく無いもの」
「リンドールさんあたりに聞ければよかったんだけど・・・。クラウド隊長、この街にって精霊魔法使いの方っています?」
「残念ながら、居ないと思うよ。精霊魔法使いは希少だからね。そもそも、精霊に会える方が珍しいし。大抵は、精霊の住む場所へ赴く必要があるしね。まず、街中に精霊なんて居ないから」
「そうですか・・・。その内、精霊魔法使いに会えた時に聞くことにします」
「それじゃあ、ルイスの所へ行こう」
「・・・ルイスって誰ですか?」
「さっき会っただろう? 鑑定職人のルイスだよ」
「ああ、分かりました」
そう言えば、鑑定職人の名前を聞いていなかったな。
精霊のイメージイラスト
https://33791.mitemin.net/i987298/
https://33791.mitemin.net/i987300/
https://33791.mitemin.net/i987302/
近いのは298のイラスト




