ゴブリン喰らい探し
「なるほど・・・。そのサンドワームの突然変異と思われる魔物がゴブリン喰らいかもしれないって考えられるんだね」
ルゥナよりも俺の方が詳しいため、俺がクラウド隊長に説明する。シルフィの声はクラウド隊長には聞こえないしな。
「だとしたら、問題はその魔物が冒険者にとって危険となるかどうかだな。その辺はどう考えている?」
ギルドマスターのグレンさんは、やはり冒険者の事について考えているようだ。しかし、俺はその問いに答えになるものは持っていない。代わりに、ルゥナが答える。
「アキラが脱出した際に、ゴブリン喰らいが胃の内容物をぶちまけているわ。それをいくつか回収してきたのだけれど、見た限り冒険者証は無かったわ。消化され切っていない装備はいくつか見つかったけれど、正直、それがゴブリンの物か冒険者の物かは分からないわね。逆に、このあたりでパーティメンバーが被害に遭ったという報告はあるのかしら?」
グレンさんは、あごひげを撫でながら考えているようだ。少し記憶を探ったのか、しばらくしてグレンさんが口を開いた。
「ソロは分からんが、パーティメンバーが目の前で消えた。もしくはパーティ単位で急に居なくなったという話は聞いたことがねぇな。ということは、ゴブリン喰らいはやはりゴブリンしか食わねぇんだろう」
「だとすれば、ゴブリン喰らいを放置していても、街の脅威にはならず、逆にゴブリンを減らす事に繋がっていると考えられるのかな。だけど、それが確実かどうかは調べないと。うーん、土の中を移動するサンドワームをどうやって探せばいいか・・・」
「それなら、僕が分かるよー。あいつの体内に僕の作った樹がある間だけだけどねー」
シルフィの声はグレンさんとクラウド隊長には聞こえないので、俺が代わりに伝えるしかないな。
「えーと、暫くの間なら俺が案内できると思います」
「それは、本当かい? それなら、俺をそいつの元へ連れていってくれないか。魔物の居場所が常に分かる魔道具をそいつに付ける」
発信機の様な魔道具がこの世界にあるのか。それなら、シルフィの樹が消化される前に探さないといけないな。
「分かりました、案内します。シルフィ、ちなみに今はどの辺か分かるか?」
「今はですねー、アキラが食われた地点から10キロほど北側に移動しているみたいですよー」
俺はその情報をみんなに伝える。
「今は街の北の方に移動しているようです」
「よし、俺達はすぐにその場所へ向かおう。俺は魔道具を取ってくるから、北側の門に集合しよう」
「それなら冒険者ギルドとしては、先にゴブリン喰らいが吐いたという場所を調べさせるか。冒険者証なら、胃液で溶けてないだろうし」
「それじゃあ、先に私が回収したものも出すわね。臭いがきついから、出す場所を考えないといけないけれど」
「それなら、解体場に出してくれ。あそこなら、大丈夫だろう」
「アキラは先に行ってていいわよ。私はあとで合流するわ」
「分かった」
俺はルゥナについてく訳には行かない。だって、確実に吐くだろうし。ルゥナはグレンさんと共に解体場へ。クラウド隊長は隊舎に戻る事になる。俺達はギルドを後にし、別々に行動する。
「ふぅ、少し腹が減ったな。何か食うか」
なんだかんだでまだ昼飯を食っていない。合流までしばらくあるだろうから、飯くらい食う時間はあるだろう。店で食うよりは、露店で買い食いしたい気分だ。とりあえず、焼き鳥みたいなやつが食いたい。
露店で焼き鳥っぽいものを買い食いする。この世界の食べ物は、地球とそんなに変わらないのが救いだな。ただ、調味料と呼べるものはほぼ塩と醤油、味噌くらいだ。醤油と味噌は、恐らく過去の日本人が広めたのだろう。その点は、日本人として助かる。でも、頑張ってマヨネーズやケチャップも作ってほしかったな。今のところ、見たことが無い。胡椒は高いのか、ごく少量しか使われてないのが残念だ。
「人間は食事や睡眠が必要ってめんどくさくないですかー?」
「めんどうとかいう問題じゃ無いんだよなー。取らないと生きていけないんだから仕方ないだろ。でも、飯を食うと幸せな気分になれるぞ」
「ふーん。僕はその間、暇なんですよねー。代わりに、アキラの上でくつろぐことにしますよー」
「俺はお前の椅子じゃ無いんだがな」
精霊にとって浮くことは、俺にとっての呼吸と変わらない、無意識に行われる物ではあるので、休む必要は無いらしいが、休むという行為自体が新鮮らしいので、シルフィはたまに俺の肩や頭の上で休む。まあ、自然界に精霊が触れられるものはほとんど無いらしいからな。自然界にもごくたまに、魔力の宿った物質が存在するらしく、精霊はそこを根城にすることが多いらしい。
「焼き鳥、うまいな。まあ、金は大事にしないといけないから、買い食いばかりするわけにはいかないけど」
調査の報酬は後日払われるので、今は手持ちが少ない。と言っても、シルフィにお金はかからないし、ルゥナにもそれほどお金はかからない。ルゥナは小人にしては食べる方らしいが、それでも俺の食事量の5分の1くらいだ。恐らく、俺の食っている焼き鳥の串が2本もあれば腹がいっぱいだろう。
「もう一度あいつのところに行かないといけないのか。正直、もう食われるのはごめんだぞ」
「食われても無事だったじゃないですかー。それに、今度は僕も敵だと分かれば容赦しませんしー」
「おいおい、何をするつもりだよ・・・」
正直、シルフィがどこまで何が出来るのか知らない。聞いてもはぐらかされるし。まあ、頼りになる事は分かっているから、何かあったら頼ることになるな。サンドワームから脱出できたのもシルフィのおかげだし。
「あー、ロープでも買っておいた方が良いか。近くの樹にでも結び付けておけば、食われずに済まないか?」
「どうでしょうねー? それをやるくらいなら、エーテルをロープ代わりにした方が良いような気がしますがー」
「・・・そう言われればそうだな」
エーテルは自在に形を変えられるのだから、大抵の物の代わりにはなるか。目に見えないから、あんまり実感が無いんだよな。服を着るみたいに、あって当たり前みたいな感じで。
「せっかくルゥナから本物のアイテムボックスを貰ったから、一応旅に必要そうなものを入れておいた方が良いか。確かにエーテルは便利だけど、目に見えるものも必要だろうし」
ルゥナから貰ったアイテムボックスには特に何も入れていなかった。だって、ルゥナのストレージのほうが便利だったから。でも、こうして一人になる事があった時に何も無いというのは困る。そうだな、とりあえず食料とか予備の服とか入れておくか。
「よし、服を買いに行こう」
「本当に、人間ってめんどうですよねー。服を着替えないといけないなんてー」
「精霊が便利なだけだろ・・・」
シルフィは、服に興味は無いはずなのだが俺についてくる様だ。




