ルゥナの冒険者登録
俺とルゥナ、シルフィは受付の方へ行く。本当に、精霊を視れる人はほとんど居ないようで、シルフィが飛んでいても気にする人は誰も居ない。そして、ルゥナもスキルのおかげで誰からも注目されないので、実質俺一人で受付に向かっている様に見えているはずだ。
「アキラ、あの受付にしよう」
ルゥナは、水色のふわっとした長い髪の受付嬢を指差す。ちなみに、ルゥナは俺の肩に乗っているが、それでも誰も気づかない。スキルってすごいな。
「どうしてあそこなんだ? 並んでる人数が少ないからか?」
「ううん、一番経験が浅そうだから」
確かに、一番若く見える。でも、なんでわざわざ経験が浅い人を選ぶんだ? レジとかでも、ベテランの方が綺麗に入れてくれる上に仕事が早いから、俺はスーパーとかだったらベテランそうに見える人の方を選ぶ。ただ、ルゥナには何か考えがあるのだろう。好きに決めさせよう。ただ、視線的に受付嬢は俺を見ているから、最初に俺が話しかける必要がありそうだ。ルゥナが見えていないな、これは。
「すいません」
「はい。初めましてかな? 私は、受付担当のシィルです。よろしくね」
俺が年下に見えるからか、フレンドリーな口調で話しかけてくれるシィルさん。ただ、それは仕事をする上で、見た目で対応を変えるという意味になるのでよろしくないように思えるんだが。
「えっと、冒険者登録をお願いします」
「じゃあ、この紙に記入してね。文字は書けるかな?」
「ああ、いえ、俺じゃ無くて、連れなんですけど」
「私が登録するの。文字は書けるわ。冒険者じゃないけれど、冒険者としての経験は積んでいるからこう見えても強いのよ」
ルゥナが俺の肩からぴょんと降りて、記入用紙の前に降りる。ルゥナは、すでに冒険者としての強者のオーラを発しているように感じる。
「えっ、小人族? は、はじめてみた・・・」
シィルさんは、目を丸くしてルゥナを見ている。ルゥナはどうやらシィルさんに対する隠形のスキルを、弱めたか切ったかしたようだ。そしてそれは、個別に対象を決められるってことだ。だから、俺は常にルゥナを見つけられる。そうじゃないと、パーティで動くときに味方もルゥナを見つけられないんじゃ困るもんな。
「それより、書く物を頂戴。私じゃこの大きなペンは持ちにくいの」
「は、はい。すぐに用意しますっ!」
シィルさんは慌てて奥へ向かう。その隙に、ルゥナはストレージから小瓶を取り出し、水晶に液体をかける。水晶の画面に、一瞬ジジッて感じでノイズが走った。
「お待たせしましたっ!」
シィルさんは小さな鉛筆のようなものを持って帰って来た。ルゥナは、それでスラスラと書類に記入していく。名前はルゥナ、出身地は・・・ノイエジール? 初めて聞く街だけど、初めて聞く名前じゃないのに違和感を感じるんだが。名づけの人、一体どこまで命名しに行ってるんだ?
「では、職業経験があるという事ですので、職業欄はこの水晶を触って、でた中から選んで記入してください」
どうやら、ルゥナに対してはシィルさんは年上として扱うようだ。まあ、態度がそう感じさせるのだろうし、実際に年上だろうからな。俺のことは見た目で判断したくせに・・・。
ルゥナが水晶に触れると、職業がいくつも表示された。軽業師、シーフ、レンジャー、商人、テイマー、剣士・・・他にもいろいろあるが、多いな。俺なんて精霊使い1個だけだったのに。
「シーフにするわ」
「はい。・・・犯罪歴も問題ありません。では、冒険者証が発行されるまでお待ちください」
シィルさんは、そう言うと書類を持って奥へと行った。
「なぁ、さっきの液体って何だったんだ?」
「水晶の表示を誤魔化す効果がある魔法薬よ。じゃないと、職業欄に暗殺者とか殺人鬼とか出てしまうじゃない。それと、犯罪歴の誤魔化しもね。奴隷になってる間、色々と犯罪を犯したからね」
何か、ヤバそうな話になりそうだな。どう考えても表に出せる魔法薬じゃないだろう。恐らく、所持してるだけで罪になるレベルのやつだ。日本での大麻みたいな、使う場所を選ぶ薬だろう。医療現場ではOKでも、個人所持はアウトみたいなやつ。
「職業が多いのもそのせいか?」
「私は元々、色々鍛えてたからね。犯罪に使えそうな奴はあらかた覚えさせられたわ。ついでに、戦闘訓練も。アサシンとして活動するのに、まったく問題が無いレベルになってるよ。はぁっ。元はシーフの才能があっただけなんだけどね」
「どうしてシーフを選んだんだ? もっと無難な職業もあったのに」
「言ったでしょ、私はシーフの才能があるって。それに、珍しい職業を選んだら目立つじゃない。どうせなら、前の偽装冒険者証と名前も職業も全部変えるほうが、もし調べられても困らないし」
Bランクの冒険者証の方は偽名らしい。俺はカードの色しか見てなかったから気が付かなかったな。ちなみに、職業はトリックスターという珍しい職業だったらしい。まあ、それは上級職らしく、最初の登録はトラッパーだったみたいだ。それも珍しい職業だよな。職業レベルが上がると、上級職が表示されるようになるみたいだから、俺のはもしかしたら上級職か? いや、それならリンドールさんが知らないわけ無いか。
「お待たせしました」
シィルさんがGランクの冒険者証を持ってくる。事前に、魔物の討伐した証拠を持って行くかと聞いたが、Gランクの方が目立たないからということで完全に新人ムーブをする事になっている。
「ありがとう。それじゃあ、薬草採取のクエストを受けましょうか。登録を頼めるかしら?」
「は、はい。お任せください」
シィルさんは、すっかりルゥナの子分みたいな感じになってるな。これも、ルゥナの成せる業なのだろう。恐らく、この感じだったらシィルさんがルゥナの事を信用するのに時間はかからないだろう。くっ、俺と真逆のコミュ能力だな。俺にもこういう事が出来ればイジメられる事も無いのに。
「それじゃあ、アキラ。森へ向かいましょう」
「あ、ああ」
「ねぇねぇ、僕が水晶に触ったらどうなるんですかねー? もしかして、大精霊とか表示されたりしてー」
「いや、お前はそもそも水晶に触れねぇだろ」
「あー、そうだった!」
ノンキなシルフィに突っ込みつつ、森の方へと向かうのだった。当然、この街に入ってきたのと反対側の方へ向かう。
「あれ? 俺達って街から出ていいのか? 事情聴取があるから残れって言われてなかったか?」
「薬草採取なんて一瞬で終わるわ。なんなら、私のストレージから出してもいいし」
「あー、そうか」
じゃあ、少しだけ街の外に出ますか。




