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護衛依頼終了

シルフィの報告に、返事をするわけにはいかないので黙って聞く。別に報告自体は後でもいいが、もしかしたらルゥナから内密な連絡があるかもしれない。


「とりあえず、アキラが行った後から話しますねー。ルゥナってば本当に強かったんですよー。特に、小さい体を生かしての不意打ちが決まりまくっていましたねー。当然、僕も手伝ったんですよ? あいつらの気を引くために、ルゥナの居ない場所の木の葉を揺らしたりですとかー、足元に歩く邪魔になるように蔓を敷いたりとかー」


シルフィは、要点の無い話でダラダラと話してくる。さすがにこれでは聞きたいことが全く聞けないまま街道についてしまう。仕方が無いので、シルフィの耳元に近づいて小声で話す。


「ルゥナから何か言われて無いか?」


「えー、もっと聞いてくださいよー。まあ、後でいいですけど。ルゥナからは、魔物はキラーディアで、死体はゴブリンが持って行った事にしたいみたいですねー。現場には、ゴブリンの矢や足跡なんかも細工してあるますよ」


よく俺が戻る数十分でそこまで出来たな。ルゥナがこういう事に慣れていることの証明になりそうだ。とりあえず、俺が見た魔物はゴブリンとキラーディアにしとけって事だろう。一応、トマスさん達には魔物に襲われたとしかまだ言っていないはずだから、何か聞かれたらそう答えておくべきだろう。恐らく、その前にルゥナからみんなに説明するだろうけど。


街道に戻ってきた。モンドさんから冒険者達に依頼終了を告げると、冒険者達は歩き出す。どうやら冒険者達は徒歩で街へ帰るようだ。まあ、馬車はタクシーじゃないんだから、帰りまで乗せていく必要は無いだろうけど。ただ、トマスさん達は俺と一緒に馬車で話をする事になっている。その話はルゥナが行う。


「本当に、助けに来ていただいてありがとうございました」


「いや、俺達は何もしてないけどね。それにしても、無事でよかった」


「はい。もうだめかと思ったところに、魔物の集団が現れました。まず、キラーディアがいきなり茂みから現れたと思ったら、敵の一人に突進していきました。そして、キラーディアが去ったと思ったら、ゴブリンアーチャーの物と思われる弓矢が降り注ぎました。幸い、私は体が小さく、魔物に気づかれずに済みましたし、矢にも当たりませんでしたけど、敵達は次々に矢に撃たれ、倒れて行きました。そして、死体はゴブリン達が引きずっていきました。私、怖くて怖くて、必死に隠れておりました」


同情を誘うためか、ルゥナはか弱そうな声で、震えながら報告する。


「それは、辛かったね・・・。逃げた俺が言うべき事じゃないかもしれないけど。それで、彼らの正体は盗賊だったのかい? 結局、狙っていたのが君とアキラくんだけで、商人の荷物には目もくれなかったし」


「敵の正体は、分かりません。ただ、執拗に小人族を狙うような発言が多かったので、狙いが私という事は確かだと思います」


ルゥナは、うまくヘルハウンドとの関係を誤魔化す。後から聞いた真実の話では、ヘルハウンドはルゥナがシルフィの援護を得て個別撃破を繰り返して全滅させたらしい。ルゥナは本当に強いな。そして、死体は一人を残してすべてストレージに入れたらしい。一人だけ残したのは、キラーディアの角で止めをさした死体を、キラーディアに襲われた証拠として残す為だった。キラーディアの角は、ルゥナのストレージに入っていたようだ。ついでに、ゴブリンの矢なんかも入れてあったそうだ。そう言う小道具みたいなものはその場に合わせた細工をするためにストレージにいっぱい入っているらしい。


「分かった。それじゃあ、あとは街の衛兵たちに任せて、君たちはゆっくり休むといい。ただ、現場検証があるから、もしかしたら一度は呼ばれるかもしれないけど。それまでは街から出ることは出来ないけど、安全は確保されるだろう」


「分かりました。使っていただいたお金についても補填したいのですが、今は持ち合わせも無く・・・」


ルゥナは、見た目は着の身着のままだ。ちなみに、俺は実際に金がほとんど残っていない。ルゥナの解呪に大半を使い、残ったものも食料等に変えてしまった。ルゥナのストレージには入っているが、ストレージについては内緒なので、今見える範囲のみが俺達の持ち物となっている。


「それについては、もともと貰うつもりはありませんよ。もし、あいつらが実際に盗賊であれば、同じような損失が出ていたでしょうから。それに、こうしたのも私の偽善ですからね。気にしないでください」


話しが聞こえていたのか、モンドさんがそう言ってくれる。実際はあいつらは盗賊じゃ無かったんだから、モンドさんが良い人すぎる。俺達を見捨てる事だって出来たのに。というか、普通は見捨てるだろう。だって、普通だったらとっくに殺されていただろうし。冒険者達を雇ってまで、無駄になるかもしれない救出をする必要が無いのだ。やったとしても、衛兵に報告して丸投げするくらいだろう。それに、実際に相対したトマスさん達だって、危険を冒して俺達を助けに行くメリットは無かったはずだ。


「助けることが出来るかもしれないなら、俺達は助けに行くさ。さすがに、無駄死にはするつもりは無いから、他の冒険者の力を借りる事にしたけれど」


トマスさんは、自分達の実力が足りないことに悔しがっていた。しかし、その思いが俺にとってはすごく嬉しかった。


「お二人とも、怪我はありませんか?」


「はい、俺は大丈夫です」


「私も、大丈夫です。怪我を負ってはおりません」


「そうですか・・・」


アリスさんが、少し残念そうな表情をしている様に見えるのは俺の気のせいだろうか?


「あたしが、もっと強ければ魔法で一網打尽にするのに」


「俺達も、もっと強くならないとな。今度、同じ場面になったとしても実力で解決できるくらいに」


「ああ、頑張ろう!」


トマスさん達は、いい感じでまとまったようだ。そう言う姿を見ると、パーティっていいなぁと思う。俺とルゥナ、シルフィはまだパーティという感じではない、


トマスさん達と別れる。トマスさん達は、衛兵に詳しい話をしに行くようだ。そして、モンドさんは冒険者ギルドへ向かうらしい。緊急で出した依頼の報酬で、後払いの分が残っているみたいだ。申し訳ないな。


「俺達はどうする?」


俺はルゥナにどうするか尋ねる。この街に来たのは護衛依頼の為だが、すでに失敗は確定してしまっている。さすがに、これで護衛依頼を達成したとは口が裂けても言えないだろう。さらに言えば、モンドさんから護衛報酬を貰うわけにはいかない。くれると言っても受け取らないぞ。実際、モンドさんはあの場で依頼終了を明言したので、あの時点で完遂だと言ってくれたが、気持ち的にもそう言うわけにはいかない。なぜなら、俺達が原因であって、モンドさんは巻き込まれただけだと俺は知っているのだから。


「私、冒険者ギルドで冒険者登録をしたいわ」


「ん? 冒険者登録? 復旧依頼じゃなくてか?」


「どうせあの冒険者証は不正で作ったやつだから、今の名前とも違うし、復旧したら商人や貴族に足跡がバレるじゃない。だから、今度は普通に作るわ」


モンドさんとは一緒に冒険者ギルドに行ったが、その後は別々の受付に別れる。俺も、一応失敗の報告をしないといけないしな。




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