表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/58

異世界転移

不良少女 イメージイラスト

https://33791.mitemin.net/i980930/

ある日の放課後、高校の普段使われない教室に5人の生徒が残っている。一人は俺、渡辺明わたなべあきら。あとは不良男1,2,3と不良女だ。こんなやつら、これで十分だろ。そして、不良男2と3が俺の腕を捕まえて押さえている。不良男1が腕を振り上げ、俺の腹を殴った。


「がはっ、もう・・・やめて・・・ください」


俺は両腕を押さえられているため腹を押さえる事も出来ず、痛みを我慢してやめてくれと懇願するしかない。


「やめてほしかったら、明日こそちゃんと金を持って来いよ」


「今月はもう、小遣いを全部渡したのでこれ以上は無理です・・・」


「だったら、親の財布から盗って持って来いよ」


「それも、無理です・・・親は現金を持たない主義で、お札が無いんです・・・」


「うるせえ! 方法は何でもいいから、明日は持って来いよ!」


不良1が苛立ちまぎれに俺の腹を蹴った。


「がふっ。おえっ」


俺は吐きそうになってえづく。それを周りの奴らは、ニヤニヤとした顔で見ている。俺は腹を押さえる事も出来ずに下を向く。え? 足元に何か魔法陣みたいなものが光って浮き上がってきてるんだけど。光っているからか、不良達も足元の魔法陣に気が付いたようだ。


「あ? 何だ? 何をしやがった!」


不良1は、俺が何かしたと思って俺に怒鳴るけど、この状態で俺が何か出来るわけ無いだろ。そして、あっという間に魔法陣は教室いっぱいに広がり、目の前が真っ白になった。


目が慣れると、見知らぬ場所に居た。明らかに教室ではなくなっていて、床が土に変わっている。不良達も、場所が変わったことに気が付いて俺の手を放す。おかげで、地面に座る事と腹を押さえることが出来た。

改めて前を見ると、ゲームなんかに出てくる様な商人の格好をした男と、皮鎧を着た顔の怖い男、盗賊みたいな恰好の男の3人が居た。


「――――」


「何だ? 何を言っている?」


商人の格好をした男が口を開くが、何か言っているが言葉が分からない。少なくとも、人生で一度も聞いたことのない言語だ。不良達も同様に分からないらしい。

ただ、あっちはそれが分かっているのか、俺達にチョーカーを渡してきた。そして、ジェスチャーで首のまわりを覆うように手を動かしている。見た感じ、これを首につけるようにって言ってるようだ。

商人の格好をした男は、俺達全員がチョーカーをつけ終わるのを待ってから再び口を開いた。


「言葉が分かりますか?」


今度は、日本語として聞こえたので驚く。最新鋭の翻訳機ですら、ここまですぐに翻訳してくれることは無いだろう。だから、俺にはここが日本じゃ無いとすぐに分かった。だけど、不良達は小説とか読まないのか、転移したとは思っていないようで理解できていないのか異常に冷静に見える。


「あ、ああ。すげーなこれ、翻訳機か?」


不良1が俺達の代表のような形で商人に聞く。


「それは奴隷の首輪ですよ。自分の意思でつけた者を、強制的に奴隷として支配下に置けるんです。その代わり、主人の言葉を理解する事ができるのですよ。まあ、本人の同意なく使うのは違法なんですけどね」


「奴隷だと! こんなもの外してやる!」


不良達はすぐにチョーカーを外そうとするが、外れない。僕も外そうとしたけど、どういう原理なのかチョーカーに触れる事が出来なかった。


「ほっほっほっ、それは主の同意か、解呪でもしない限り外せませんよ。それにしても、今回は5人も召喚できるなんてついていますね。それも、綺麗な服付きで。おい、女。服を脱いで全裸になりなさい」


商人の格好をした男が不良女に命令すると、とたんに不良女が自分の意思ではないように恥ずかしげもなく服を脱ぎだす。


「きゃあぁぁ! やめて!」


不良女が口で抵抗するが、手は勝手に服を脱いでいく。それをみて、ざまあみろと思った。以前、お前たちが俺にしたこの屈辱を、お前も知れと。


「おい、何をさせるんだ、やめろ!」


不良1が止めようとしたが、商人の格好をした男が再び命令を下した。


「お前達も服を脱いで全裸になれ」


「くそがっ! やめろ!」


だけど口で何を言おうと、手が勝手に服を脱ぎだす。俺を含めて不良男達の服もすべて脱がされた。そして制服の代わりとして、布の服みたいなものが投げ渡される。


「それを着ろ」


俺達はすぐにそれをかぶって体を隠し、腰で紐で結ぶ。


「お前たちは、これから貴族のペット売られるんだぁ。大人しくしてたほうが身のためだぜぇ」


盗賊の格好をした男がそう言うと、すぐに不良1が怒りに任せて立ち上がる。


「ふざけるな!」


不良1が商人に殴り掛かる。しかし、すぐに皮鎧を着た男が商人の格好をした男と不良1の間に入る。


「こいつは顔もよくないし、暴力的なので要りませんね。見せしめに処分してください」


「おう」


皮鎧を着た男が腰に吊ってある剣を抜くと、不良1をあっさりと切り捨てた。


「ひっ!」


俺と不良2と3はそれをみて息を飲み、不良女は血を見て気絶した。商人の格好をした男は、何事もなかったかのように不良1からチョーカーを回収する。死ぬと外せるようになるみたいだけど、その情報は俺には意味が無い。


「これを見てもまだ逆らうようなら・・・」


「さ、逆らいません!」


3人とも、商人の格好をした男に逆らおうという意思が無くなったと思う。こんなにあっさりと殺されるなんて、この世界の人間の命は軽いのだろう。


「気絶している女を担いで馬車へ入れてください。男どもは、自分の足でついてきてください」


俺達3人は大人しく着いて行き、馬車へ乗った。


それから、地獄のような生活が3日続いた。毎日の食事は、コップ一杯の水と硬いパンが1つ。それが朝と夕方の2回だけ配給された。不良2が文句を言ったが、皮鎧を着た男が剣の柄に手をかけるのを見ると、すぐにやめた。それからは何を言っても無駄だと思い、腹を減らさないように極力静かに、大人しく馬車へ乗り続けていた。


そして、変化が起きたのは4日目の夕方だった。なんと、馬車が魔物に襲われたのだ。この世界には魔物が居るらしいな。見た感じ、ゴブリンだと思うが、正式な名前は分からない。それが十数匹居るように見える。


「くそっ、さすがに数が多すぎる! 奴隷を囮にして逃げます! 女と男一人以外は置いていきます!」


俺達4人の中で、不良女と顔が一番良い不良3がそのまま残され、俺と不良2が馬車の外へと追い出された。


「お前達2人は、出来るだけ時間を稼いでください」


ボロい剣が1本だけ投げ捨てられ、馬車は走り出した。俺と不良2は、命令に逆らう事が出来ず逃げられない。剣を拾って戦うしか無いようだ。だけど、1本しかない剣は不良2がさっさと拾ってしまったので俺は丸腰だ。


「くそおぉぉ!」


不良2は、バットの様に剣をフルスイングしてゴブリンに攻撃する。そして、ゴブリン胴体を切り裂いて見事に倒した。


「やった・・・ぜ?」


だけど、そのあとすぐに頭部に矢が刺さっていた。弓を使うゴブリンも居るらしい・・・って、冷静に見ている場合じゃない! だけど、命令のせいで逃げる事が出来ない。


「いや、命令は時間を稼げであって、ゴブリンを倒せじゃない。それなら・・・俺は逃げていない、時間を稼ぐために走って囮になっているんだ」


そう自分に言い聞かせながら走ると、その場を離れる事が出来た。けれど、ゴブリンがそれを簡単に見逃すはずがなかった。数匹のゴブリンは、戦利品の不良2を引きずって巣に持ち帰るようで、ゴブリンの数自体は減ったけど、何本か矢が飛んできている。運よく今のところ当たってはいないけど、いつ不良2の様になるか・・・。


「いてっ!」


一生懸命に走っていたら、俺は何も無いところでつまづいた。つまづいたものを反射的に見るが、何も無い。俺は何故か、何につまづいたのか気になって、時間もないのにつまづいた場所を手で探る。


「何かある」


俺の手に、何か触れるものがあった。持ち上げてみると、3キロくらいある四角い金属の塊のような物で、何故か目に見えない。見えない何かの代わりに、視線の先には弓を引くゴブリンの姿が見える。


「ひぃっ!」


俺はとっさにその塊を前に差し出し、矢を防げるよう強く念じた。すると、ゴブリンの放った矢は俺の目の前で何かにぶつかって地面に落ちる。


「な、何が起きたんだ?」


目の前を手で調べると、壁のような物があった。まさか、この見えない塊が変形したのか? 試しに、元の四角い塊に戻れと念じると、再び手の中に四角い感触が戻った。


「それなら・・・」


俺は再びゴブリンと反対方向へ走り出す。当然、ゴブリンたちが追いかけてくる。だが、今度は囮として逃げるために走ったんじゃないぞ。


「戻れ」


「グビャア!」


俺は塊をピアノ線の様に細く伸ばし、木の間にセットしていた。そして、ゴブリン達が通るタイミングで塊に戻した。すると、ピアノ線の通り道に居たゴブリンが寸断されたっていうわけだ。グロい。


複数の仲間がいきなり死んだのを見た弓ゴブリンは、慌てて引き返していった。仲間を呼びに行ったのか、逃げたのか分からない。もう、俺には戦う気力何て残ってないぞ。けれど、俺は時間を稼げと言う命令を達成したからか、自由に動く事が出来るようになっていた。


俺は念のためにゴブリンが持っていたボロい剣を護身用として拾い、馬車が向かった方向と違う方角へ向かう事にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ