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第一章 C

フランベルジュ帝国、戦乱編。

サイファーがだんだんと人間界に関わっていき、世界観が広がります。

作者もテンション上げて更新更新!

 神界―――アトランティス大陸の遥か上空にある、雲の上に浮かんだ巨大な城。

 そこがこの世界を作った神が住む場所だった。

 

 ―――神界。

 

 人間界からは天界とも呼ばれるそこには、四人の神とたくさんの天使たちが住んでいた。

 全能神ウルをトップに、戦女神リューネ、生命神ルース、慈愛神ヘラがそれぞれに与えられた力を持って、いつでも地上を見守り管理しているのだ。

 ウルは全ての創造を司り、リューネは徒に戦争が起こらないよう人間を監視教育し、ルースは新たな命を生み出し、ヘラは生きとし生ける者へ恵を与える。

 世界は彼ら天上の民によって守られていた。


 それはあまりに甘美な幸せの箱庭。


 しかし―――。


「竜はもはや我らでは抑えきれぬ」


 ある時、数億という年月を生きた老神ウルは、そう呟いたという。


 現在、魔界という神の管轄外の光のささぬ土地に追いやられた竜という魔物。

 最初は魔物ではなく、神獣とされてきた彼らも、今ではその威光をすっかり失くし、世俗の欲で汚れ神から与えられた使命を蔑ろにしている。

 ウルが乗り物として作った始祖竜から、その子栄竜サウザー、そしてその孫聖竜カリウストスまでは、神の忠実な下僕であり、天界の良きパートナーだった。

 だが、四代目竜王となった暴虐竜レアスが生まれてから全ての秩序が崩れ始めた。

 

 なんと竜が神の支配から脱却しようとしたのだ。

 

 レアスはまず人間界を破壊し、抑制しようとした天使部隊を壊滅させた。

 その姿はまさに悪竜。

 神からの支配を逃れ、己を勝手に改造し、天界すら脅かす魔物になってしまっていた。

 全長三百メートル、口から放出されるブレスはあらゆるものを消滅させた。

 

 さらにレアスはこれまでなかった性という概念を竜にも与え、同じ竜族のみならず人間にもその色欲の捌け口を求めた。

 伝説ではレアスは淫竜としても描かれており、その数万年にもおよぶ一生のうち、彼の子孫は数百万を超えると言われている。


 そこで生まれたのが竜人である。


 神が意図せずして生まれた呪われし民。

 この時から世界は神の管理がすみずみまで行き届かなくなった。

 全ての命は神が管理していたのに、竜をはじめ竜人たちはその管理外で勝手に数を増やし始めたのだ。

 今魔界にいる竜族のうち、最初からいるのは雷竜、海竜、黒竜、魔竜、炎竜の五種族のみ。

 

 それ以外の竜人はじめ竜族は、全てレアスの交配によって生まれた子孫たちだ。

 彼らは生誕した当初から、神々からひどく忌み、疎まれる存在であったのだ。

 

「竜が……。またしても人間界へ出てきたか」


 宮殿の玉座で、大神ウルが下界の様子を見ていた。

 神々しい乳白色のローブを纏い、純白の外套をまとった老人だった。

 顔にはたくさんの皺が刻まれ、遠見の術を使うその腕は枯れ木の様に細い。

 頬は痩せこけ、目は微かに見える程度。

 長い年月と苦労が、本来不老不死である神の精神を侵し始めていたのだ。

 このままでは長くはもたない。

 ウルは自分の死期がそう遠くないことを感じていた。


「あるいは人間が竜を召喚したか。世界は神の管理をもう望んではおらぬと言うのか。だが、そうは言っても第二の人魔戦争だけは起こしてはならぬ。あの醜い闘争の歴史をもう二度と繰り返してはならぬのだ。力の弱った我らに出来ることは、もう無いのやもしれぬがな……」


「お父様……」


 ウルの苦しげな声の後、何もない空間から現れたのは、戦争の神リューネ・ガルメシェディだった。

 美しい青白色の髪に、茶色の瞳。

 神々しいばかりの光を体中に纏い、空中へ浮かぶその姿はまさに天上の女神だった。

 ガルメシェディとは古代言語で近衛騎士団長のこと。

 リューネの手には断争の剣が握られ、体には金の鎧をつけていた。

 

 神の懐刀である彼女は、年老い弱り果てた父親(創造主)を、心配そうに見守っていた。

 

「おお、リューネか」


「お父様、どうか私に竜討伐の御命令を」


「今なんと?」


「私に戦闘許可をください。この戦の神リューネならばあのような汚らわしき魔獣風情に遅れはとりませぬ」


 リューネは自信満々にそう言った。

 

 戦女神。

 

 調停の神。

 

 色々あだ名はあるが、彼女は戦全てを司る神。戦争におけるルール、規律を決める神だ。

 そしてアトランティス大陸の名付け親でもある人間界の守護神だ。

 神の威光を無視できる竜とて、所詮元は神の作った命から派生した者。

 断争の剣を持つ自分に裁けぬ相手ではないと自負していた。


「お父様のくださったこの剣さえあれば、私に勝てる者などありえません」


「…………」


 だが、ウルの反応は良くない。


「……やめよ。人魔戦争から十万年。竜はそれから代を重ね、さらに進化してきておる。いくらお前とてまともに戦ってはただではすむまい」


「いくら交配が進もうと、所詮は生物でしょう。神に勝てる生物などいません」


「十万年前は我らが勝った。しかしそれでもかなりの犠牲を出した。お前もあの時のことを覚えていよう」


「ぐ…………」


 リューネの眉が苦しげに歪んだ。

 理性を失った竜族が人間界を半分支配し、天界まで攻めいってきたことを思い出したのだ。

 結果なんとか撃退し、竜を死界を挟んで魔界に封じたのはいいものの。

 あの時、部下の天使たちのかなりの数が消滅した。


「しかし! このままでは奴ら、また人間界をいいようにするに決まってます」


「まだそう決まったわけではない。なんでも今回召喚された竜は、あの雷竜王の息子らしい。カインは信用ならぬが、あの娘の息子ならば……」


「ああ、セフィラ様の。でも、……竜ですよ」


「わかっておる。フランベルジュ帝国にはかなりの数の天使を配置した。もしも竜が暴れようものならすぐさま取り押さえられるよう命令してある」


「フランベルジュ。またあの国ですか……。面倒事はいつも竜がらみか」


「リューネ。人間界の守護神はお前じゃが、くれぐれも早まった真似はするでないぞ。竜の皇子とはことを構えてはならぬ。よいな?」


「……はい」


 リューネは少し不満気だが、父の手前素直に頷いていた。

 しかし心の中では竜を侮り、交戦の機会があれば、真っ先に剣を振るってやろうと考えていた。

 この戦女神。かなり血の気が多く、神の怨敵は見つけ次第消すことで有名だった。


「本当にわかっておるのか?」


「もちろんですとも」


 ウルも猪のように敵へ突っ込んでいくこの娘が心配でたまらないようであった。


「では、お父様。私はいつものように、人間界の監視へ戻らせて頂きます」


「う、うむ」


(さーて、フランベルジュ帝国は西だったか。早速問題の竜の顔を見てみよう)

 

 この後、大神ウルの恐れは現実のものとなってしまう。 

 

 サイファーが人間界で大人しくしていられるはずがなく、この女神と対立してしまうのだ。


 


               ☆☆☆ 




「この売国奴の裏切り者。ハーフのあなたをお父様はあれほど取り立ててあげていたのに……」


「………………」


 イシュタルの言葉は、まっすぐに刃となってニアの心に刺さってきた。

 

(何も知らないお姫様が、偉そうな口を……)


 ニア・ローベルは竜人の父と、魔人の母のハーフである。

 竜人の国では魔人は敵とされており、いつもニアは一人だった。

 

 あの時の記憶が頭から離れない。


(どうして竜人は魔人を忌み嫌うのだろう?)

 

 幼い頃のニアはいつもそればかりを考えていた。

 魔人はほぼ全ての者が青白い肌をしており、耳が少し尖っている。

 それ以外はほとんど竜人と変わることがない。

 姿形を言えば、竜人だって頭には竜だった名残として頭蓋骨に殆ど見えない程度の角が生えている。

 

 奇妙なのはお互い様だった。


 ではなぜここまで仲が悪いのか?


 それは十万年前、神が竜人を『管理外人種』として登録し、他の人種からの迫害を受けるようにし、これ以上増えないよう調整しようとしたからだ。

 そして一番竜人を迫害してきたのは魔人だったのだ。


 昔から竜人と魔人は仲が悪く、北と南で争っていた。フランベルジュは純人族と同盟を結び、魔人は獣人と手を組んだ。

 二つの種族の戦争は泥沼化し、リューネの調停で全面戦争は避けられているが、細々とした紛争は今でも起こっている。

 竜人は何度も侵略してきた魔人を許さない。

 魔人は神から生まれなかった竜人を蔑視している。

 彼ら民族感情はさらに白熱し、複雑に絡みあって解決を許さなかった。

 

 だが。


 父は何を思ったのか。


 戦場で捕虜とした魔人の女兵士である母に懸想しニアを孕ませたのだ。


 もちろんこれはフランベルジュの法に当て嵌めても違法であるし、名門ローベル家の家長が魔人を嫁にするなど世間は一切認めなかった。

 母は追放され、ニアは生まれてすぐに世間から迫害されたのだ。


 冷たい地下牢にニアの低い怒りの声が響き渡る。

 反乱軍のリーダーとしての冷静な仮面が剥がれかかり、猛烈な負の怨念が瞳に見え隠れしていた。

 

(今までわたしを迫害してきた竜人たちの象徴。フランベルジュ最後の姫君……)


 ニアは奥歯を噛み締めた。

 そうしないと、いつ彼女を魔法で焼き払ってしまってもおかしくなかったからだ。


「わたしはあなたたち竜人なんて種族は本当は大嫌いなんですよ。自分勝手で傲慢で。大した力も知恵もないくせに!」


 牢の中、ニアはイシュタルの首輪を掴み、ひねり上げた。

 

「ぐ……」

 

 イシュタルは呼吸ができず、苦しげに呻いた。

 ニアはさらに恨みを吐き出していく。

 

「イシュタル皇女。あなたはこのフランベルジュという国家に誇りを持っているようですが、そんなもの夢幻にすぎません」


「……ば、馬鹿にしないで! フランベルジュは一万年も栄えてきた大帝国よ」


 いついかなる時も獣人や魔人との戦争に怯えての生活だが、それでも内乱の数は他国に比べて驚くほど低いのは事実だった。

 竜人たちは歴史の中で長年避けずまれてきた。

 だからこそ、彼らの胸の中には、同じ種族への仲間意識が強く、度し難いほどの選民思想が蔓延っている。


「その長い繁栄で、フランベルジュは腐ってきたんですよ。その証拠にこの国の貴族たちを見てみなさい。忠誠心の欠片もない。我々の軍が優勢になったらすぐに裏切る豚共ばかりだ」


「それは、そうかもしれないわ。でも! どれだけ苦境に立たされても私を味方してくれた貴族もいる! あなたがどれだけこの国が嫌いなのか知らないけど、何も関係のない民まで巻き込んでいいはずがないでしょう!」


「関係がない? 馬鹿を言うな。王が道を踏み外せばそれを正す。これは本来民衆の役割のはずだ。これまであなた達皇族貴族が生み出してきたよどみを、今まで見て見ぬふりをしてきた民衆が一番罪深いんですよ!」


 神は人間に世界を統治させる上で、まず最初に王という指導者を立てさせた。そして同時に神が王を裁く制度も作った。

 王権に対抗する権力として民衆に、強力な抵抗権を与えたのだ。

 暴君が統治するとき、民衆は神に対して抵抗権の使用を申請する。すると戦女神リューネが調停人として現れて王に裁きをくだせるシステムがこの世界には成り立っているのだ。


「今の竜人は全て度し難く愚かで傲慢だ! 選民思想でがちがちのお前たちはもう古い! 滅ぶべきなのだよ、イシュタル皇女!」


「ふざけないで! それはあなたが決めることじゃないわ!」


「いいや、わたしが決める! わたしのようなハーフが一番この国の暗部を知っているのだ。フランベルジュ帝国の大掃除を、わたし以外に誰ができるものか!」


「あなたは自分の怨恨を理由に暴走しているだけよ。そんなあなたに戦女神が正統な王権を与えるはずがない!」


「ええぃ、忌々しい女め! あなたこそ皇帝の証たる宝剣の鞘を抜けないでいる偽物のくせに!」


 憎むべき竜人の皇女。

 彼女を前にすると、冷静であるはずの自分の心がささくれ立つ。

 ニアは怒りに任せ、イシュタルの頬を張るため腕を振り上げた。


 だが。

 

「まあ、待て」


 その腕をサイファーの手ががっちりと掴んでいた。

 さすが竜なのか、軽く握られているだけの腕が、みしみしと音を立てる。

 

「ぐっ、離してください……」


「っと、失礼」


 サイファーはあっさりと笑顔で手を離した。

 ニアもイシュタルをベッドに突き放す。

 

「きゃっ」


 イシュタルは咳き込みながら倒れ伏した。


「俺はお前たちの国のことになど興味はない。ないのだが、その女をからかうのも苦しめるのも笑わせるのも全て俺の特権だ。お前の言う通り竜は傲慢な生き物でな。一度自分のものになったものを他人にくれてやるのは度し難く腹が立つんだよ」


「っ……」


 ニアは半ば睨むようにしてサイファーらの様子を見る。

 どうやら彼らはイシュタルに何かしらの思惑があるらしい。ニアが彼女に手荒な真似をすればサイファーが文句を言うことはなんとなくわかってきた。


(この竜、皇女に惚れているのか?)


 竜と姫の恋物語。

 フランベルジュで使い古された劇物語でそのような内容のものがある。

 が、それはまずい。

 イシュタル皇女はどのみち明日処刑するつもりだった。

 明確な皇族の死という事実がなければ、多くの民衆はニアを新皇と認めないであろうからだ。


(厄介なことになった。イシュタルめ。召喚それ自体が罪だというのに、早速この若き竜をくわえ込んでいたのか)


「……まぁ、いいでしょう。わたしとしたことが熱くなってしまいました。ですがサイファー様、どのみちこの女は明日処刑しますので、あまり情けをおかけにならない方がよろしいですよ」


 少し釘を刺しておくことにしよう。

 ニアは乱れた長髪をオールバックに撫で付ける。


「女はイシュタル皇女以外にもたくさんおります。今夜、皇女に匹敵するほどの美女を十人でも百人でもご用意いたしますので、どうかそれまでお控えください」


 ニアはサイファーを侮っていた。

 竜とは言え、まだ外見二十歳にも満たないガキである。

 会食の席のこと、この少年は人間界についてろくな知識を持っていないことがわかっている。

 これからも自分がこの竜を教え導き、自分の都合のいいように動いてもらうため、ニアは色々な謀略を張り巡らせていた。


「ほ、ほう。イシュタルよりも美人が百人とな!?」


「サイファー様……」


 紳士的な顔をしているが、誘惑に非常に弱い竜のようだった。

 雷竜とのことだが、まるで暴虐竜のようだな。

 呆れたようにリリアナが怒っている。

 

 ニアの心の中の嘲りが大きくなった。

 所詮観光程度の娯楽気分で人間界にきたのであろう。

 せいぜいもてなしてやろうではないか。

 

(まあ、わたしの手の平の上で、ですけどね)


 だが、そんな笑いもいつまでも続かなかった。

 突然ゴルドが部下数人を連れて、地下に入ってきたのだ。

 ゴルド・ファレスはニアがその腕っ節と残虐さを見込んでスカウトした大男だった。

 汚い仕事でも金さえ出せば喜んでやるクソッタレなところを、ニアは逆に信頼していた。

 

「大将。怪しいワイバーンがいたんで、捕獲しときましたぜ」


 ゴルドがなんとイシュタルの騎竜であるバーンを捕らえてやってきたのだ。

 比較的広い地下牢の廊下を、一人で大きな飛竜の体を抱えてやってきたゴルドに、皆が唖然とした顔をする。

 

「バーンさんっ!」 


 イシュタルが泣きそうな声をあげ格子にしがみつく。

 

『申し訳ありません、殿下。敵に見つかってしまい、このような失態を……』


 バーンの体にはいくつものボウガンの矢が刺さっており、致命傷ではないものの、翼の骨が折られているようだった。

 血だらけの体をゴルドがずるずると引っ張ってくる。

 あまりにも無残なその様子に、イシュタルは泣き崩れそうになっていた。


 その様子に、ニアの笑みが濃くなる。


「ほう。これは皇女の騎竜でしたか。恐らくこのワイバーンに逃亡を助けさせるつもりだったのでしょう。ゴルド、よくやりました」


「へへへ。それで給金の方なんですが……」


「わかっています。少し色を付けておきます」


「まいどありっ」


 たちまち破顔する傭兵の大男。

 世の中金だと言うこの男ほど、安心して使える人間はいない。

 金さえあれば好きなように動くのだから、最高の駒だと言えた。


「サイファー様たちももうお戻りを。ここは血生臭くていけませ―――っ」


 突如、殺気を感じ振り返ると、リリアナと共に静かな怒りを宿らせているサイファーの姿があった。

 竜は敵には微塵ほどの容赦もしないが、自分の身内や眷属には驚くほど優しいと。

 

(単なる御伽話のはずではなかったのか!)

 

「ニア、知らないのか? ワイバーンらは雑種と言えど、俺たち竜の下僕であると」


「そ、それは知っておりましたが……。も、申し訳ありません。このワイバーンにすぐさま回復魔法をかけますので!」


「ほう。知っての行いか。劣等竜とて我が眷属には違いない。俺の目の前で竜族を愚弄した罪は重いぞ。中々気のきく男だと思ったのだが、お前は俺の敵なのだなぁ」


 サイファーの体から魔力があふれる。

 頭から角が伸びはじめ、口からは鋭い犬歯が伸びはじめていた。

 まずい、竜化の兆候である。


「お、お待ちください! 怒りをお納めください!」


「駄目だ。許さん。それからイシュタルは俺が貰っていく。文句はあるまい」

 

 サイファーは体中から魔力を発しながら、周りを威嚇する。

 しかし、それに気づかない馬鹿一人。

 あまりに不遜なその態度に、ゴルドの部下の一人がメンチを切りながら近づいていったのだ。

 

「なんすか、このガキ? 殺しちまいましょうか」


 傭兵の一人が、サイファーの胸ぐらを掴み上げる。 


「ま、待て。とめろ、ゴルド!」


 なんと恐れ知らずの行いだろう。

 傭兵は無言のサイファーを恐れによってのものだと勘違いし、腰から剣を引き抜き、その切っ先を喉に当てる。

 未だ竜という種族を想像の中でしか見たことのない、無知な者の末路。

 それは、死であった。


「へ? ぐぎゃぁぁぁぁ!!」


 男の右腕に電流が走った。

 それは猛烈な熱量を体中の血管中の血管に流し込み、神経を一本残ろず焼き尽くす。

 彼の右腕は一瞬で炎に包まれ、全身真っ赤になって地面に崩れ落ちていった。


 後に残るは炭のみである。 


 その光景に平然としていたのはリリアナだけであった。

 その場にいる者全てが、この空間を支配する魔界から来た王を見ていた。


「下等動物が」

 

 サイファーが大きく息を吸ったのが、わかった。

 その瞬間。


 牢が崩れ、屋敷が崩壊すると同時に。

 

 瓦礫と一緒に、目の前には全長十セクト(二十メートル)。

 山のように巨大な、金色の雷を放つ竜が現れたのだ。


 竜と化したサイファーは、巨大な黒銀の翼を左右に伸ばし、強烈な咆哮を天に向かってあげた。

 ビリビリっと、地面が振動した。

 竜人としての本能で、これが自分よりも高次の存在なのだとはっきりわかる。


 自然、皆跪くように、頭を垂れていた。


 この支配力も竜としての力である。


 サイファーはイシュタルと、傷ついたバーンを前足で鷲掴にすると、天高く羽ばたいていった。

 リリアナはちゃっかりサイファーの背中の上に乗っている。


『さて、ニアよ。まだかかってくるのなら相手になってやろう』


 人魔戦争で人間に絶望を与えた竜。

 その魔物がまた人間界に姿を表した瞬間だった。






やっとサイファーが竜に変身しました。

これから神も出てきて、世界は混乱します。

誤字脱字が前話結構ありました。

ご迷惑おかけしましてすみません。

ご感想やご注意、お待ちしております。

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