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第一章 A

頑張って書きました。

楽しんでいただければ幸いです。

やっぱり今回も下ねた多しw

十五禁くらいかな。



「……開け、開け、開け。我が血に連なる帝国の護り手よ。今一度、フランベルジュに竜の力を」


 石造りの地下の一室で、赤毛の女が一人全裸で召喚魔法を唱えていた。

 なぜ全裸なのかというと、古く竜を召喚する為の儀式として、衣服は感応の妨げになると言われてきたからだ。

 灯は壁にかかった蝋燭のみ。その光が彼女の美しい裸身をぼんやりと赤く彩り、その白く細い手が休みなく魔法陣に魔力を送り続けていた。

 彼女の魔力の光が暗闇に点々と浮かび上がる。

 幾つもの光彩が舞い、イシュタルの裸身を幻想的にうつしだした。


「我が名はイシュタル・フランベルジュ。贄は我が血、我が肉、我が魔力……。冥界の狭間よりいでて食いつけ、始祖の王よ。開け、召喚の扉」


 イシュタル・フランベルジュ。

 

 フランベルジュ帝国の竜皇女。

 

 フランベルジュ帝国とは戦神ガルメシェディを守護神とするアトランティス神大陸にある、人間界の一つの大国である。アトランティスには竜人族、純人族、魔人族、獣人族、エルフという五種族がいて、フランベルジュは竜人族の国であった。

 フランベルジュ帝国第十五代皇帝ギルフォード・フランベルジュの一人娘が、彼女イシュタルであった。その血の系譜は古く暴虐竜レアスに連なり、竜に変身はできないものの、その身に宿る魔力は敵対する者を一瞬で灰にできる恐るべきものであり、生来体が丈夫でかなりの物理攻撃力も誇っていた。ギルフォードに続いて、女性ではあるが素晴らしい素養を持った後継者が生まれたことで帝国の未来はさらに明るいものになると思われていた。

 

 しかし―――。

 

 イシュタルの父、ギルフォードが昨年突然病死したのだ。

 

 さらに、東の蛮族オークの王、ガイがフランベルジュに宣戦布告。魔人族をも巻き込んでの総力戦となった。

 オークとは獣人族の中でもさらに劣等の種とされ、乱暴なことで忌み嫌われている。そのくせ繁殖力だけは強く、放っておいたらゴキブリのように増えてしまうことでも有名だった。

 人の皮を被った豚。

 それが彼らの別称だった。

 

 そして、嫌なことは重なるものだ。

 

 先月、女帝イシュタルには従うことができんと、炎竜の血を誇る部下ニア・ローベルが反旗を翻した。その軍勢は多くの貴族を巻き込み、民を吸収しつつどんどん大きくなっていった。

 フランベルジュ帝国をニ分し、反乱軍はもうここ帝都メナスにまで迫っている。

 もはやフランベルジュ帝国は外敵と内敵に挟まれ、滅亡寸前となっていたのだ。


 そこで―――、一発逆転、竜の召喚!

 とイシュタルは思ったのだが、そう簡単に召喚されてはくれないらしい。

 

「くっ、やっぱり……。私程度の魔力じゃ……、呼び出せないの? でも、ここで諦めたら私の国が……、部下の皆が……」


 魔力を召喚陣に注ぎ続け十五分。魔法を構成する術式は自分の血液で直に書いている。その為かいつもよりも感応率は良いものの、魔力の減少が激しい。

 

 早くしなければ、もう体が持たない。


「くそっ、早く来なさいよね。帝国の姫が待ってんのよ。―――竜だからって舐めんじゃないわよ!」

 

 イシュタルは村娘のように口汚く、召喚陣に向かって吐き捨てる。 

 

 ―――その時だった。

 

 召喚陣がビリビリと震え、魔術式が焼け切れそうなほどの熱を発した。

 堅牢なるフランベルジュの城が、今にも崩れそうなほど震えだす。

 

 そして―――。


「ふぅ。召喚されるのがこんなに気持ち悪いもんだとは知らなかった」


「うっぷ。吐き気が……。これは、まさかサイファー様の子が私に?」


「いや、ただの召喚酔いだから」


 イシュタルは呆然と突然現れた二人組を見る。

 彼女は竜を召喚したはず。

 なのに現れたのは華奢な金髪碧眼の貴族っぽい少年と、彼に服従している銀髪の少女だけだった。どちらも美しく、それなりに潜在魔力は高いようだが、これからの戦争で使いものになるとは思えない。


「まさか……、これだけの魔力と時間を使ったのに、失敗したなんて……」


 イシュタルは絶望に暮れながら、祖国の滅亡を覚悟した。


 『国に存亡の危機が訪れたら、始祖竜の系譜の者を召喚しなさい。きっとイシュタルの力になってくれるから。彼らも人と同じ感情を持っている。きっと心からお願いすれば、味方になってくれるよ』 

 

 思い返すは父の最後の言葉。

 それに従い、大量の資金と魔力を使って、召喚魔法を唱えたというのに……。


 叛臣ニアに国の大半を奪われて首都をまもなく制圧されそうなこの状況で、もう竜を召喚して帝国の守り神にするしか道はなかったというのに……。


「……終わりね。お父様、今私も参ります」


 イシュタルは討死を覚悟で、敵に突撃しようと胸に決めた。

 きっと部下も従ってくれるだろう。


 しかし、その覚悟を嘲笑うかのように。


「おい、この全裸の女は何だ? 人間……いや、わずかだが竜の力も感じるが」


「さあ、ただの痴女でしょう。まあ、やらしい。彼女に近づかないでください、サイファー様。性病がうつりますから」


「うむ。まあ、でも結構、いや、かなり可愛い女の子ではないか。観光ついでこの女の子に案内を頼んだらどうだ?」


「……やはりサイファー様はお父様にそっくりです。この分だと発情期、もうすぐなんじゃないですか?」


「馬鹿な。俺はまだ五百歳とちょっとだぞ。いくらなんでも早すぎる……」


 このような意味のわからない馬鹿話を繰り広げている二人組。

 いい加減、イシュタルも腹が立ってきた。

 それに痴女やら性病やら、意味はよく分からないが、自分を馬鹿にするような発言も聞こえた気がするし。


「あなたたち、一体何者なの? いきなり召喚魔法で現れて。っていうか、乙女の裸を男がつぶさに見るな!」


 ちなみにこのイシュタル・フランベルジュ。

 帝国の花の姫君と呼ばれる彼女は現在御歳十七歳。竜人は平均寿命五百歳くらいだから、まだまだひよっこである。成人するのは二十歳だといっても、サイファーにじろじろと「ほう、おっぱいもでかいな」と見られて平気なわけがない。


「なんだ。好きで見せてるわけじゃなかったのか。おい、リリィ。どうやら痴女ではないようだぞ」


「いいえ、この手の女は清純そうに見えて、裏で男相当食ってますよ。やりマンなんですね。わかります」

 

 冷静にライバルになりそうなイシュタルを蹴落とそうとするリリアナ。

 さすが容赦なし。

 

 リリアナとしてはサイファーの正妻は自分だという自負を常に持っている。彼に近づく女を選び後のハーレムを管理するのは自分だと今から考えているのだ。


「この……、好き放題言ってくれるわね」



 裏で男を食うという表現はイシュタルにも理解できた。

 炎のような赤毛が一気に魔力で逆立つ。そしてはずみでおっぱいも揺れる。

 全裸のイシュタルはかなりの色気を振りまいており、サイファーなどは「くっ、紳士の俺が。こんな脂肪の塊などに……」と悶えていた。サイファーは精神でいうと、思春期の盛りなので女体に興味あるお年頃なんです。勘弁してやってください。

 ちなみに竜は発情期があるとは言っても、普段も人間の十分の一くらいの性衝動は存在しています。 まあ、勃つかどうかは、その竜の精力次第であるが。


「あなた皇女である私にいい度胸ね。処刑されても文句は言わないでよね、うん。処刑決定」


 と、しなやかな体に魔力を貯めたイシュタル。

 対してリリアナは冷静だった。


「どうぞ、御勝手に。竜人風情が竜に勝てるとでも思っているのですか。身の程を知りなさい」


「かっちーん。例えあなたが竜でも……。って、竜? はっ、頭がおかしいのかしら、この女。もしかしてその銀髪って白髪? 痴呆が始まってるんでしょう」


 目の前のか細い女が竜なわけない。

 この女は頭がおかしいのだと、イシュタルは決めつけていた。


「…………」


「うわっ、やべぇ……」


 サイファーの顔が恐怖でひきつった。


「今なんとおっしゃいましたか?」


「耳まで遠いのね。白髪頭のお婆ちゃん」


「―――こ、の。雌豚がぁぁぁぁぁ!!!!」


 普段おとなしい奴がいきなりキレると怖い。それをまざまざと見せつけられた。

 リリアナはいつもサイファーが撫でてくれる自分の髪が大好きであった。

 それをたかが下等生物と見下している竜人の雌に侮辱されて、これで平常でいられるはずがない。


 リリアナの体から膨大な魔力が噴出した。

 

「あちゃァ……」


 サイファーがため息を出した。

 と、同時にリリアナの尻から尻尾が出る。次に頭から角が生え、耳は尖り、口が裂け、どんどん巨大化していく。

 その姿は色こそ違えど、伝説の竜そのものだった。

 全長五セクト(十メートル)、強大な体で城の天井を破壊しながら、その化物は姿を表した。


「う、うそ……?」


 これはイシュタル。

 今まで自分よりも少し年下の生意気な小娘が、次の瞬間には巨大な白竜に姿を変えていただのだから驚きだ。自分が呼び出した者たちの正体に今更ながらにして気づく。


「……もしかして、あなたも変身できたりする?」


 サイファーに恐る恐る確認するイシュタル。


「当然だ。あ~あ、リリィをあんなに怒らせちゃって。どうすんの。殺されるよ、お前?」


「ちょっ、聞いてないわよ! 最初からあなたたちが竜だってわかってたら、こんなことには!」


 サイファーに裸で詰め寄るイシュタル。

 おっぱいを間近にサイファー真っ赤になって目をそらす。ここらへんまだウブなんですね。


「ば、馬鹿。これでも着てろ」


 そして、自分の羽織っていた外套をイシュタルに差し出した。 

 さすが、自称紳士の竜です。むっつりですが。


「あ、ありがとう……」

 

「い、いや……」


 お互い裸を見せたり、見せられたりで、真っ赤になる。

 ―――そして、その瞬間だった。


『―――キィィィ! サイファー様! そんな女となぜフラグをたてるんですか!』


 リリアナ、もとい、白竜の口から雷光のブレスが放たれたのは。

 リリィは雷竜の父と海竜の母のハーフである。雷竜の血が濃く出たようで雷のブレスしか使えないし威力も弱いが、それでも軽く城壁を吹っ飛ばすような威力を発揮していた。

 強烈なプラズマがイシュタルの頭狙って放射される。

 それをかろうじて避けたが、その雷光は軽く城壁を破壊し、地下にたくさんの土砂が降ってきた。


「し、死ぬかと思った! あなた、サイファーとか言ったわよね! あなたの女なんでしょ! なんとかしなさいよ! それとわたしを助けなさい! それから、あなた私の部下になりなさい!」


「なんという理不尽な要求の数々!? 人間とはこれほど傲慢な種族なのか!」


「傲慢なのは竜の血のせいよ!」


 曰く、イシュタルのこの言は正しい。

 始祖竜からその子孫暴虐竜レアスまで、総じて竜は人間に対して傲慢だった。貢物が少くて滅ぼされた国村は数しれない。

 それもそのはず。竜とは神の乗り物として想像された神族に近い生物である。その力にはどんな種族にも負けないような力が与えられていた。

 

 基本『強者が正義』の竜の秩序。

 

 人間などの吹けば飛ぶような生物は、彼らの家畜に近かったという。


「あのな。ちょっと馴々しいぞ、お前。竜に頼みごとをするんだ。生贄くらい用意しているんだろうな」


「う……、生贄は私よ! なんか文句ある? 食べるなら食べなさいよ!」


「馬鹿者! 誰がお前なんか食うか! 人を野蛮バーバリアン扱いしやがって! ……まぁ、別の意味で生贄は食われるんだが、そんな話はどうでもいい!」

 

「あ、今やらしいこと考えたでしょう。そういうのよくわかるんだからね!」


 リリィのブレスを必死に避けながら、二人は逃げて行く。


『そこの淫売、サイファー様から離れなさい!』


 ちなみに本当ならリリィはこの城ごと吹っ飛ばすくらいの力を持っているが、サイファーを巻き添えにしない為にかなりの力をセーブしていた。


「きゃぁぁぁ!! 死ぬ! 何でもいいからなんとかして!」


「あー、もう、面倒くさい!」


 裸ですがりついてくるイシュタルに、いい加減理性が破壊されそうなのか。


 サイファーはいきなり背中から漆黒の翼と尾を部分的に取り出し、イシュタルを振り払った。

 この追いかけっこにも飽きてきたところだったし、丁度良かった。


「ちょっと、一体何する気なのよ!」


「こうするんだよ!」


 そして竜化したリリィの背中にまわりこむと、なぜかある一部分の鱗を撫で回しはじめたではないか。


「な、なにやってんの!」


「黙って見てろ!」


 イシュタルをにべもなく無視するサイファー。

 逃げ回る彼女目掛けて、ブレスがまき散らされる。


「ひ、姫様! ご無事ですか! って、なんじゃこりゃぁ!?」


「イシュタル様! お逃げくださ、jdfじゃれ;ふぁ;ふじこdふぁl;k!?」


 彼女を守るため現れた老魔術師や、将軍たちも目の前の光景が信じられず、果てにはリリィのブレスに吹っ飛ばされて気絶してしまった。哀れな……。


 黒々とした地下室の壁が一気に瓦礫と化した。電磁を帯びたプラズマの粒子が辺り一面に広がって、爆発する。もう城は半壊状態になっていた。恐るべき竜の力である。

 だが、次の瞬間。


『ふぁっ、あん。サイファー様っ、そこはっ。感じてしまいますぅ』


 と、リリアナが巨大な体で地面に転がり始めたではないか。

 竜には逆鱗というとても敏感な部分があるのだ。

 人間形態時にも背中の真ん中あたりにその鱗の部分が残るのだが、ここを触られると力が抜ける仕組みになっている。攻撃されると大ダメージを食らう場所なので、竜はよほど心を許した者にしか背中を見せないのだ。


『あっ、ち、力が抜けてしまい、ますぅ』


「竜の姿でいやらしい声を上げられても、あまり興奮しないな」


『ちっ……』


「確信犯か!」


『今度は人間形態の時に、ベッドの上でお願いします。……ポ』


「うん。怒ってないよ、怒ってないから、一発殴らせろ」


『一発、なんて、サイファー様。……やらしい』


「ああっ、もう。本当にこの子はどうしてこんなに変態に育ってしまったんだろう!」


 怒りがおさまったのか、サイファーに構ってもらえたからか、竜の姿だったリリィがみるみるうちに小さくなっていく。

 半ば瓦礫と化した城に、元通りの服を着たリリィの姿があった。

 

「久しぶりに竜になって、すっきりしました」


「あっ、いいな。俺も後で変身しよ」


 だが―――。


「―――変身しよっじゃないわよ! これどうしてくれるのよ!」


 そこにイシュタルが怒鳴り声を上げて突進してくる。

 

「これって?」


 サイファーが尋ねると、イシュタルは指を前方にさして。


「これのことよ!」


 瓦礫と化した城に、突如突撃してきた反乱軍の姿が目の前にあった。

 せっかく篭城していたというのに、リリィの変身とブレスのせいで、兵はみなぼろぼろ。士気はもうがたがただった。


「ははは。俺のせいじゃないし」


「私のせいじゃありませんし」


「いや、間違いなくあんたのせいでしょうが!」


 リリィのボケに勢いよくイシュタルがツッコミをいれた。


「ナイスツッコミ。褒めてあげます」


「……もういや」


 反乱軍がどっと押して寄せてきて、サイファーたちを包囲する。

 城壁外で竜の姿を見たのか、兵士たちは皆警戒している。


 だが、反乱軍の一将校が覚悟を決めたのか、大声で突撃を指示してきた。

 

「い、今だ! イシュタル皇女を捕らえよ!」


「う、うおおおおおお!!」 


 何の準備もしていなイシュタルたちにはもうどうすることもできない。


「いやっ、私に触れるな! っあなたたちのせいよ! サイファーっ。あなた、一生恨んでやるんだからね!」


「なるほど。これがはやりのツンデレか」


「違う!」


 この日、フランベルジュ帝国はイシュタル捕縛によって一度滅びを迎えた。

 サイファーたちは竜ということもあって、丁重に客人として反乱軍に保護された。


    






やはりギャグタッチです。

これからもこんな感じでダラダラ書いていきます。

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