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プロローグ

この物語は全てフィクションです。

実在するものとは全く関係がありません。

基本馬鹿な三流ライトノベル的ハーレム小説です。

あまり期待はしないで軽い気持ちで読んで欲しいです。


「こんな時にまた発情してやがるのか、あの糞親父は!」


「御意にございます」


 一喝。

 サイファー・ベルーフ。

 金髪碧眼、まだ少年にも見える華奢な皇子は、精一杯の怒りを込めて、執務机を殴りつけた。

 サイファーの机に、留守中に置かれたのであろう。

『ごめ~ん、サイファー。父さんまた発情期に入っちゃったみたい。母さんたちと百年ほどまた子作りに励みますので、領地の運営や他もろもろ全部一人息子のお前に任せた! ばはは~い!』

 という置き手紙が一通残されていた。


「五百年前、俺を産んだばかりだろうが!」


「お館様の精力は並外れておりますので……」


「あの糞親父の血を引いていると考えると虫酸が走るなぁ」


「サイファー様ももう少しすれば、お館様のように。……ポ」


「リリィ、変な想像は禁止だ……」


「も、申し訳ありません」


 サイファーは背後にいる秘書兼幼馴染の女性、リリアナ・クルスを睨みつけた。

 銀色の髪に、黄色の瞳。

 サイファーより年下だが、武術や勉学に優れ、そしてなによりナイスバディだ。

 クールなすました顔をしているが、彼女中々情にあつい。リリィをなめたら、火傷ではすまない。マジで殺される。

 リリィは親父の近衛隊長である男の娘であり、まあ、自分の嫁さん候補だが、サイファーは彼女を縛るつもりはないので、できれば自分の意思で人生を決めて欲しいと思っている。


「サイファー様の発情期はいつになるのでしょうね」


「俺はそんなもんに負けない」


「竜である限り不可能ですよ」


 さてさて、発情期やら子作りやら、のっけからいかがわしい単語が並んでいるが、果たしてこれには訳がある。


 実はサイファーの一族は竜なのだ。

 平常はいつも人間体になり、莫大なコストの魔力を抑えているだけで、戦闘になれば竜に変身し圧倒的な戦闘力を誇る魔界随一の魔物である。

 五百年で成龍となり、その寿命はおよそ一万年。

 老成すればするほど魔力も上がり体も巨体化する。他の種族からは守り神とも疫病神とも呼ばれ恐れ敬われている存在だ。

 ここまでは竜すげー、俺ってすごいだろう、みたいな話だが、問題はここからである。

 

 ―――竜は人間と違って、明確な発情期があり、子作りする期間が決まっているのだ。ちなみに俺みたいな純血竜が生まれる確立は五千年に一度らしいがね。


 発情期は通称『マスト』と呼ばれ千年に一回の周期でやってくる。その時の男性竜は理性が半分欠けた状態になり、……まあ、その、とても女性体と、あんなことやこんなことをしたくなってしまうわけだ。しかしそこはプライドの高い竜族である。だらしなく女のことばかり考えている姿を他人に見られるのを極端に嫌がる。だから自分が発情しそうな場合、気に入った雌たちと一緒に、百年ほど館(巣)に篭るのだ。まあ、篭って何をするのかは、皆さんの想像にお任せする。


 ―――だからって! 他の竜族と戦争中に盛ってんじゃねぇよ!」

 サイファーは心の中で、父に愚痴を吐いた。 


 魔界では我ら雷竜ベルーフ一族の他に、炎竜ボルクス、海竜白夜、魔竜ファンブル、甲龍猛山モウサン、黒竜カリオンなどなど、他にも色々な竜族がいる。人間界には竜の血の入った竜人族なんてのもいるし、その種類はかなりの数にのぼる。

 戦力的には雷竜>黒竜>海竜≧魔竜>甲龍>炎竜>黄龍>紅龍>>>超えられない壁>雑種>亜種ワイバーンなどという感じだ。

 そして現在竜族の中でもトップレベルである、雷竜と黒竜の一族がその領土を巡って血みどろの戦争をしているのだ。

 戦力的には雷竜が一番なんだが、それも親父がいてこそだ。

 サイファーの父親カイン・ベルーフが竜族の中で一番強いので、この戦争勝ったも同然と思っていた矢先に発情しやがった。黒竜の指導者、アーク・カリオンは親父には及ばないまでも、それでもかなり老成した暗黒竜である。まだ五二六歳しか生きてないサイファーでは、あの爺さんには勝てない。

 実際に百年前の初陣ではアークの左腿に噛み付くくらいしかできなかった。せめて一回ブレスを当てたかったのだが。

 

「ええ、今のサイファー様では万に一つも勝ち目はありませんね」


「……的確な評価ありがとう、リリィ」


「いいえいいえ。ですが、サイファー様が戦うとおっしゃるならば、私が命を賭けてお守りしますから」


「馬鹿者。誰がお前を死なせるか」


「さ、サイファー様……」 

 

 サイファーがリリィの頭を撫でてやると、彼女は白い頬を真っ赤に染めた。

 いやぁ、何百年も幼馴染やっているが、いつまでも飽きませんな~。

 

(それにしてもどうするか。

 大人しく降伏しようかな~。

 どうせ領土って言っても、ゴブリンの生息地域の森だし。可愛い女の子いないしね。

 暗黒竜の爺さん、なんだかんだ言って、俺にはなんか優しいし、小遣いくれるしねぇ。

 爺さんの孫は俺の友達だし。 

 うーん、降伏するのはプライドが許さないしな。

 お、そうだ。休戦しよう。あの爺が好きそうな酒でも持って行ってやるか)

 

 かように、竜の戦とはかなりユルイものなのです。 

 寿命長いし、基本的にズボラだし。

 

「―――サイファー様。どちらへ?」


「戦うのはやめだ。休戦協定結んでくる」


 と、俺は真っ赤な外套を翻し、執務室からでようとする。

 それを聞いて、胸をなでおろすリリィ。

 さてはこいつ、好戦的な俺だからと、黒竜一族と死ぬまで戦うと思ってやがったろう。


「さようですか。いえ、安心しました。私もおともしましょう」


「……いらん、と言っても来るのだろうな」 


「もちろんです。人間形態時に攻撃されれば、サイファー様とて命に関わります。近衛兵とは言いませんが、せめて私だけでもお連れください」


「ああ、うむ。頼りにしている」


「は、はい! サイファー様!」


 文字通り、尻尾を振って喜ぶリリィ。

 おーい、擬人化が解けているぞ。


「―――っ!?」


「っサイファー様、魔力反応です!」


 と、突然サイファーの目の前で、赤い血の色をした禍々しい魔法陣が現れたではないか。

 陣の形は菱形を五つ重ねたフラクタル。

 意味は門。

 魔術式は古代言語で書かれており、かなりの魔力濃度で書き綴られていた。


「召喚術!? まさか黒竜一族の手の者が!」


「いや、落ち着けリリィ。竜は魔法など使わんだろうが……」


 魔法を使えるのは人種(人間、エルフ)か、魔族(悪魔、魔人、魔法生物)くらいなものだ。

 

「これは……」


 サイファーは魔法陣の縁を手で撫でてみた。

 数千万年とも言える竜の知識をひっくり返して、この形の魔法陣の意味を調べる。


 すると……。


「これは召喚陣ではない。招聘の門だな」


「サイファー様を召喚しようとしている輩がいるということですか!」


 なんと不敬な! とリリィは怒り狂う。確かに召喚とは力の弱い魔物や幻想種を使い魔として使役する為のものであり、竜を召喚しようなどと不届き千万である。はて、この門を食い破って召喚者を血祭りにあげてやってもいいんだが。


「にやぁ……」


 サイファーの酷薄そうな横顔が、つりあがった唇により、さらに冷酷そうになる。

 そんなドSな顔を見て、胸をときめかせているドMなリリアナ嬢。

 竜族の大きな宮殿内で、二人はかなり怪しい動きをしていた。

 正直、通りすがりの部下ドン引きである。


「どうやらこの召喚者、人間界の者のようだな」


「そのようですね。この鉄くさい血の魔法陣は人間のもので間違いありません」


「俺って人間界行ったことなかったんだよ」


「私もです。魔界と違って太陽が出ていて、とても美しい場所だとか……」


「行ってみたくないか、リリィ!?」


「行ってみたいです、サイファー様!」


 はしゃぐ竜の二人。

 しかし、怒らないであげて欲しい。

 竜は確かに五百歳で成竜となるのだが、その精神はまだ十代の前半から後半でしかないことが多い。

 普段老成したような喋り方の二人だったが、まだ若い竜である彼らには人間界の魅力に勝てなかったのであろう。


「で、でも……黒竜と戦争している時に、私たちだけ人間界へハネムーンだなんて」


「いや、誰がハネムーンだと言った。ただのバカンスだからね」


「二人きりならなんでもいいです。私はサイファー様にずっと付いていきますからね」


「う、うむ。まあ、気長にいこう、気長に。ああ―――そこのお前。そうお前だ!」


 と、サイファーは身悶えるリリィを横に置いといて、道ですれ違った雷竜の将軍に、お使いを頼んだ。嫌そうな顔をする将軍。


「な、なんでしょうか。サイファー殿下。……面倒事は嫌ですよ」


「そこまで警戒せんでもいいだろうに……」


 サイファーは幼い頃からやんちゃ坊主であった為、基本部下から慕われているが、迷惑がられることも多かった。自分では名君のつもりでいるサイファーは少ししょんぼり。


「ちょっと俺ら出かけてくるので、黒竜王に休戦申し込んできてくれる?」


「は? お出かけになる……、って休戦!? 自分が使者ですか!」


「そうだよ。お前が使者だ」


「無理です! 無理無理無理無理無理!」


「大丈夫だって。ちょっと噛み切られるか、ブレスで焼かれる程度で済むから」


 サイファー、爽やかな笑顔。

 上げた親指、サムズアップ! 


「いやぁぁぁぁあああああ!!!!」


 哀れ中年男の将軍。

 妻も子もいるのに。

 反対にいい笑顔のサイファー。

 でも、彼は鬼畜で傲慢ではあるが、外道ではない。

 あの正々堂々の勝負を愛する黒竜王が、休戦の使者に暴行するなどありえないと知っていたからだった。


「それじゃ、百年ほど人間界にいるから、親父のことよろしくなー」


「げっ、ちょっと! 殿下!」


 と将軍。

 

「さあ、出発!」


「あっ、待ってください。サイファー様ぁ」


 そう言って、サイファーとリリィは一緒に仲良く召喚陣に飛び込んだ。

 行き先は人間界、フランベルジュ帝国。

 

 はてさて、二人の竜はこれからどうなるのか。


 そして彼らを召喚した人間の国、早く逃げて!


 最強種族雷竜の皇子、サイファーの冒険が始まる。





  

ちょっとラブラブさせすぎた。

基本こんなノリで書いていきます。

喜んでいただければ幸いです。

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