出会い
「……ゔわぁっ!!」
飛び起きた先は宮殿のような場所。何が起きているのか思考がフリーズする。
周りを取り囲む大人たちに喉がひゅっと変な音を立てた
(あ、人、がいっぱい、私、えっと)
今度は爆速で回りだした脳に体が追いつかない。はっはっと浅く息を漏らす私に、一番高い席に座っていた男が近寄り、話しだした。
「我らは神の召喚に成功した!これで我らはミタマに怯えることなく眠れるだろう!!」
明らかに日本語ではない言語なのに聞き取れる。さらに思考回路が激しく回りだす。
(何?これ。本屋で見た異世界なんたらってやつか……?え、どうしよう。買ったことないし読んだこともないんだけど。ん?私のこと指して神って言った?)
まとまらない思考回路を置いてきぼりに、急き立てるように別の部屋に連れて行かれた。
抵抗するすべも気力もなく、成すがままにされる他ない。
「貴方は神でございます。」
「え、違います。」
私の名は月城やよい。名前の中に神の字もなければ神だった記憶もない。あるのは異様に『家族』の2文字に固執していた孤児院の記憶だけだ。
「人間でミタマを使えるのは神か、堕落して悪魔に魂を売った者のみです。」
「その、ミタマ?って何。」
無理矢理私を別室に押し込んだ白いローブの爺さんは笑顔を一ミリも動かさないまま続ける。
「魅魂とは、物に宿る幽鬼や物の怪を指します。それを自由自在に操れるのが神でございます。神もお持ちでしょう。」
「なにそれ。付喪神みたいなもの……?」
その言葉を発した瞬間、ずっと笑みの形に細めていた目をカッと見開いた。
「魅魂ごときに神などと……!罰が当たりますぞ!!」
ガダン!と大きな音を立てて男がたつ。その音に思い切り耳をふさいだ。
魅魂なんて信仰はぱっと考える限り、思いつかない。
そして今使っている言葉にもなじみがなく、おそらく死ぬはずだった私は生きている。
地球以外の何処かに飛ばされたと考えるほうが妥当だ。
「てか、ここどこなんですか。元の世界に戻してくださいよ……」
私が神に文句をつけたいぐらいだ。
「戻れません。」
「……は?」