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序章
アスファルトと使い古した学校指定のローファー。
私から見える景色は、それだけだ。
排気ガスを撒くトラックの走行音と誰かの話し声を騒音と理解した脳がヘッドフォンを付けさせる。
「……雨、降りそう。」
何も変わらない、モノクロの生暖かい世界を壊したのは誰かの叫び声だった。
「あぶないっ……!!」
その声が自分に向けられたものだときづくと同時、振り返った視界は大きく迫ったトラックのヘッドライト一色だった。
甲高い叫び声とトラックの衝突音、降り出した雨がアスファルトを叩く音だけが際立って聞こえる。
(あぁ、死ぬのか。呆気ないなぁ……)
私の胸に浮かんだのは淡い失望だけだった。