0 餞別 part2
しばらく歩いた後、バス停からバスに乗り、次は電車に乗って移動する。
そこそこ距離があるので交通費はかかるものだが、仕事が仕事なので全て無償になる。そこはこの仕事で良かったと思う。
かれこれ30〜40分ぐらい、バスと電車の中で揺れたあと、職場まで少し歩く。とは言っても、5分ぐらいで目的地まで着いてしまう。
束の間の散歩が終わると、門から警備員が私を出迎える。
門を潜った後、少し早めに持ち場に着く。
少しすると朝礼と点呼が始まる。まあそんなしっかりしたものではないが。
そしてぞろぞろと人が入ってくる。彼らは皆受刑者だ。
ここは刑務所(周りからはそう思われている)だ。まあそれは表の顔で、裏ではほぼ更生施設となっている。いやそれ以上に緩いだろう。
なぜならここでは職員と受刑者の立場は平等だからだ。
大体の刑務所は国が管理している。まあ今のこの国はとてもじゃないがまともなところじゃない。
だから当然、刑務所の中はとても悲惨だろう。現状、この国での看守という職はほぼトップだと言っていい。そのため高給でたくさんの権力を独占している。
つまり、囚人は看守の言うことに「はい」か「YES」としか答えることを許されていない。
実際、ここ最近の囚人の死亡率はとても高い、どころかほぼ生きて出ることができないぐらいの有様だ。
だがここは違う。なぜなら国ではなく個人が有しているからだ。
ここの所有者は莫大な資産を保有しているが、その資産の約半分を人のために使っている。
その一環としてここを立てたのだ。
もちろん国は黙っていなかったらしいが、全て金で解決したらしい。
まさか、人のために大枚を叩く人がこの世にいるなんて、全く予想もしなかったよ。
何を隠そう、僕も昔は国に忠誠を誓っていた。
だから、刑務所の中がどれだけ酷かったか、忘れることはないし、忘れられない。
看守たちが権力を振り回し、囚人たちはただ怯えることしかできない。泣きながら鞭で打たれていた囚人たちを思い出すと、言葉では表せないほどの感情が僕を覆う。
囚人たちだって、元を辿れば全部国のせいだ。
一部の権力者たちが私腹を肥やし、面倒ごとなどは全て民に押し付けた。そのせいで、国民たちは飢えに苦しみながら、僅かな生活費を稼ぐために必死で働いた。
そんな中で、たった少しの、生きるためにやった少しの過ちで、囚人になってしまう。
そのためか、受刑者の中には子供が数多くいる。中には、まだ物心がついたばかりのような子供もいた。
そんな現状に嫌気がさして、僕は看守をやめた。
とは言っても、僕も豚どもと何ら変わりはない。
看守になるには、頭の良さだけではない、金が必要だ。国は金しか見てない。だから頭が良くても、その中で金がないやつは落とされる。
結局、僕は国と金の奴隷だ。
けど、ここは違う。ここではみんなが笑顔で絶えない。職員も囚人も。
みんなでなんとか前に進もうと頑張っている。
…しかし、僕はどうだろう。
……僕は結局、何かを変えられているのだろうか。
………僕はずっと、逃げているだけではないだろうか。
…………僕はこの仕事が嫌いではない。むしろ好きだ。
僕がここに来たくないのは、『自分でもわからない何か』から逃げたいから。そして、
そんな自分が嫌いだから。




