4契約目:人間と悪魔
広間を後にした音桐とルシファーはまた長い廊下を歩き始めた。
『先程も言った通り貴様にも戦ってもらうぞ』
「もちろんだ。願ってもない、だけど生身じゃ無理じゃないか?」
音桐自身に戦闘能力はほぼ皆無だった。強いて言うなら、小学生の時にやっていた剣道の心得が少しあるくらいだった。
『無論だ。貴様ら人間が生身で天使に挑めば1秒ももたんだろう』
分かってはいたが、やはり天使も人外な奴らなのだと感じていた。
「なら、どう戦えって言うんだ?」
『悪魔や堕天使には人間と同化することが出来る能力がある。』
「同化?」
『そうだ。魂と魂を繋げることで、天使をも上回る力を得ることができる』
『だが、どちらかの魂が弱すぎるとそのまま弱い方の魂が喰われてしまうがな』
サラッととんでもないことを聞かされた。音桐自身普通の学生だ。魂の強度なんて知らない。
「俺は、お前と同化して戦うのか?」
音桐はルシファーに問いかけた瞬間、ルシファーは低く冷たい声で音桐に返した。
『…ッフ、随分自分自身を高く見積もったな』
一瞬のうちにこの地獄のような場所が凍結するイメージが湧いてくるくらい冷たかった。
『私はまだ、前線の戦いには行かない』
「そうなのか?」
『今、地上に攻撃を仕掛けたのはせいぜい高くて中堅程度の天使どもだ』
『こいつらを斃すことは容易いが、それではつまらん』
「じゃー俺はどうすれば?」
『バルバトスに同化しろ』
「バルバトス?」
なんか火星のロボットを思い浮かべたが違うのだろう。
『貴様の魂の強度なら上手く同化できるだろう』
しばらく歩き続けるとまた扉の前に着いた。扉というより鉄格子のような感じだった。
『ここだ』
ルシファーはゆっくりと扉を開けた。扉の中は装飾こそなかったが、広間に負けないくらい広く、闘技場のような場所が広がっていた。
「これまた広いな…ん?」
音桐は闘技場の真ん中には3つの影が立っていることに気づいた。
『…丁度いいな』
そう呟きながらルシファーは中心へと歩いていった。
「あれって…」
中心に向かうにつれだんだんと影の正体が見えてきた。3つの影の内2つは悪魔だったが1つは人間だった。それも女性の姿をしていた。
「──は、早く戦い──の!」
『そうは言ってもな〜天使どもが攻撃してこないことにはなぁ』
『…もう少し…同化の精度を…磨いておくんだな…』
音桐には信じられない光景が拡がっていた。2体の悪魔に1人の人間が食って掛かっていた。
『そのくらいにしておけ娘』
ルシファーが仲裁する。
「いい加減『娘』って言うのやめてくれない?」
『貴様ら人間の名前を覚えるほど我々は暇では無いのだ』
「名前を覚えるのが苦手なだけでしょ?」
『まぁまぁ〜俺はちゃんと覚えてるからよ!』
「あんたは…ってそこにいるの人間よね?」
女性が音桐に気づいた。なにか言おうとする音桐の前にルシファーが発言する。
『バルバトス。次の対戦で同化する奴だ』
『…かしこまり…ました…』
バルバトスと言われている悪魔は深々とルシファーにお辞儀をした。
『ならば、後は適当にやっておけ』
そう言ってルシファーは入口の方へ歩いって行った。
「あいつ、契約者俺ってこと忘れてんじゃないだろうな…」
そうつぶやくと後ろから
『そんな訳なかろう…貴様の魂を…思ってのことだ…』
バルバトスが言ってくる。
頭部には角がついてる仮面のようになっていた。よく見ると身体が機械のような鎧を着込んでいる感じになっている。翼の代わりにマントを羽織っており、背中に大刀を背負っていた。その一振で首が飛ぶのが容易に想像がついた。
『さぁ…同化の訓練を…始めよう…』
『ちょうど…娘も…来てる…のでな…』
「だから娘ってやめてくれない?」
「私は黒井 優里よろしくね!」
黒井は音桐の前に来て笑って手を差し出てきた。
「音桐 創だ、よろしく」
この薄暗く地獄のような場所で自分と同じ人間に会えた。
「さて、初めましての挨拶も終わったし、ぼちぼち始めましょ!」
「待て待て待て、俺はまだ同化についてほぼ知らないぞ」
「あれ?てっきりあいつから全部教えて貰ってるのかと思ってたけど…」
あいつというのは恐らくルシファーのことだろう。
『ユリちゃ〜ん?あいつ呼びはやめようぜ〜?』
「娘呼びしてくるし、おあいこよ」
「あ、紹介するわ、アザゼルよ」
「私の契約悪魔で同化の相手」
黒井に紹介される形でアザゼルが続ける。
『紹介された通りアザゼルだ。男にはあんまり興味無いぞ!』
若い男のようだがThe悪魔みたいな風貌だった。羊のような角を頭に付け、一対の大きな黒い翼を背中にこしらえてる。ただ、純白の白スーツに身を包み体色は色白で首から下は天使のようだった。
「自己紹介をした悪魔はあんたが初めてだ。」
音桐はアザゼルに向かって言った。
『俺は、ユリちゃんが紹介したから言ってるだけだぜ』
「そうか」
紹介がなければ自分から名乗ることもないかと、音桐は思った。
『小僧…そろそろ…同化の訓練を…するぞ…』
「あぁそうだったな、やり方を教えてくれ」
『アザゼル様…少々お待ち…ください…』
『おっけ〜だぜ!ユリちゃ〜んこっちで待ってようぜ』
「頑張ってね!音桐!」
こうして、バルバトスとの同化の訓練が始まった。
最近リアルが忙しくなかなか更新ができない…頑張って2週間1回は更新できるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!
次回は優里ちゃんとの合同訓練!どうなるかな〜