聖獣
それは聖なる獣と呼ばれていた。
いにしえの宗教にとってそうだったからというのが理由のようであるが、今となっては関係がない。
だが、ここに住まう者たちにとって、完全な無関係というわけではなかったようだ。
その証拠として、聖なる獣が住んでいるとされる洞窟には、数多くの貢ぎものや獣をモデルにしたであろう像が納められていた。
姿を見たというものもいるが、それがはっきりとした証拠として残されたことはない。
だが、誰もが必ずいるのだと、目を輝かせて話し出してくれる。
それが、聖なる獣が今も生きているという証拠なのかもしれない。