④「ほぼ」毎日投稿
このエッセイにおいて、ここに至るまで、自分はあの連載にて完遂した毎日投稿のことを「ほぼ毎日投稿」と称している。
察しの良い方ならお気づきになっただろう。
あるいは、最初から「コイツ本当にちゃんと毎日投稿し続けてたのか?」と疑い、調査した方もいらっしゃるかもしれない。
そう。「ほぼ」なのだ。
実は自分は、あの連載において、毎日投稿を完遂できていない。
自分も人間なので、投稿をうっかり忘れてしまう日もある。
そういう時は、前日の分とその日の分で、二話続けて投稿した。
うっかり投稿を忘れた日はあるものの、「その日の分のエピソードが脱稿できていなかったので次の日に持ち越した」ということは一切なかった。投稿を忘れただけで、エピソード自体は常に完成していたのだ。証拠になるようなものは何も残していないので、信じてもらえなくても仕方ないが。
……ただ、それも、ある一日を除いての話だ。
一日だけ。
自分が憶えている限り一日だけ、その日の分のエピソードが脱稿できていなかったので、毎日投稿をサボった日があった。
あれはたしか、2019年8月30日の分だ。
第23話と第24話の投稿間隔が一日空いている。
つまり、自分が完遂したのは毎日投稿ではなく。
本当のところは23日と1677日連続投稿だったのだ。
読者の皆様方におかれましては、誤解を招く表現を用いてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
……あ、でも、調子に乗って一日で三話連続で投稿した日とかもあったし、それで穴埋めしたっていうのは……ダメですよねそうですよね。
当時の、まだ執筆を始めたばかりの自分は、毎日投稿も「できたらやる」のスタンスだった。今ほど確固たる信念を持って毎日投稿はしていなかった。
あの日はうまく筆が乗らず、夜も遅く、他にやりたいこともあったので、もうその日の投稿は諦めちゃおうと、そう判断したのだった。
たしか、この日からだっただろうか。
一日に一回、次話を投稿しないと、胸が圧迫されるような感覚に襲われるようになったのは。
どうしてそのような息苦しさを感じるようになったのか。
当時の自分も、なんとなく察し始めていた。
およそ200話ほどで完結を予定していたこの作品だったが、実際にはその数倍の話数がかかるだろうと。
冷静に考えてみる。
仮に、この連載が1000話ほどで完結するとしよう。
毎日投稿した場合、1000話の連載は1000日で完結する。1000日ということは、つまり二年と270日だ。
では、二日に一回の投稿だったら?
この場合、完結には2000日を要する。
2000日ということは、つまり五年と175日である。
当たり前の計算結果なのだが、怖くなった。
投稿ペースをたった一日延ばすだけで、完結までの期間が二年以上も長くなることに。
もっと考えてみよう。
三日に一回の投稿ペースだと、完結には八年と180日かかる。
五日に一回だと、完結には十三年と255日。
一週間に一回ならば、完結には十九年と165日。
余計に怖くなった。
たった一つの作品に、それだけ長く付き合える自信がなかった。
毎日投稿を完全にサボった最初で最後のあの日、以上のような考えが頭をよぎった。
それからは、ひたすら書くようになった。
自分は、極めて怠け者で、責任感が無い。
だからこそ、一度でも足を止めれば、もう二度と走り出すことはできなくなる。
結果として、完結までに1700部分もかかったのだから、改めて毎日投稿を決意したあの判断は正解だったと思っている。二日に一回の投稿だったら完結には九年かかってる。
何かのテレビ番組で聞いた言葉なのだが、人生は三万日しかない。
作者が、その人生の中で書ける物語の数は限られている。
一つの作品に九年も十年も使っていられない。
この連載以外にも、自分にはまだまだ書きたい物語がある。
それが、自分がほぼ毎日投稿を続けた、最大の原動力だった。
強迫観念めいているかもしれないが、事実だと思っている。