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⑩道筋どおりにはいかない物語

 このエッセイも、とうとう今日が最終回だ。

 引き続き、拙作「太陽の勇者~」のネタバレに注意してほしい。


「もう終わってしまうなんて悲しい」とおっしゃってくださるあなた。そんな寂しそうな顔をしないでください。またいつか再会しましょう。


「やっと終わるよこのクソエッセイ」などと言ってガッツポーズしているあなた。とても傷ついたので、このエッセイの累計PVの数だけ腹筋な。


 前回は、あの連載で書きたかったこと、やりたかったことを色々と列挙したが、今回はその「やりたかったこと」の中でも最も大きなものを挙げる。


 それは、「物語の始まりから終わりまでしっかりとした一本線が通っていて、随所に散りばめられた伏線も全て回収する、いわゆる『広げまくった風呂敷を見事に畳み切ったお話』を書きたい」というものだ。


 やはり、読んでいる最中は全て独立した謎が、やがて点と点がつながって線になっていくのは長編作品の最大の見どころだと思っている。ぜひとも自分もやってみたいと思った。


 んで、やってはみたのだが。


 分かっていたことだが、やっぱ難しいわこれ。

 書いている途中に「あれもやりたい、これもやりたい」となって、予定外の新要素をたくさんぶち込んでしまった。


 その最たる例が、第5章で出てくるロシアのエージェントコンビ。


 一部の読者様が大きな人気を向けてくださっているあの幼女と銀髪だが、二人の登場を確定させたのは、二人が登場するエピソードが投稿された三日前くらいだ。最初のプロットでは二人の登場予定はまったく無く、構想すら練っていなかった。


 だが、「アメリカのマモノ討伐チームを出したなら、ロシアからも何か出したい」と急に思い立ち、そこから二人の設定や、後の第10章の構想などをすぐさま練った。

 幸運にも妄想の調子が良かったので、一時間ほどで二人の設定やら顛末(てんまつ)やらは完成した。いま思い出しても笑えるくらいの奇跡的な完成速度だった。


 他にも探せば色々あるのだが、これ以上語るとどこかでネタバレを踏みそうなので、ここまでにしておく。


「予定外のものを色々追加した」とは言ったが、「どんな設定にするか予定していなくて、執筆するギリギリのところで考えた」というパターンも多かった。


 たとえば、最序盤で星の巫女と共に姿見せをする白い大狼ゼムリアや、口悪く(しゃべ)る赤い鳥ヘヴン。


 何を隠そう、登場させたのは良いものの、具体的にどんな能力を持っているのかは、この時点では全く考えていなかったのだ。実際に二体の戦闘シーンを書く直前で能力を考えた。


 たとえば、物語の後半戦で登場する、七体の大ボス。


 この大ボスたちが持っている能力などは、ぼんやりとだが最初から方向性を決めていた。しかし実際にどうやって討滅するかについては執筆しながら考えた。特に二番目の(きり)はマジで悩んだ。悩みまくった結果、シャオランが新技を覚えた。


 例えば、仲間キャラの一人、本堂仁。


 この主人公パーティー、ボケに走る人間が少ないから静かだなぁと思ったので、急遽(きゅうきょ)ボケキャラになった。ある意味、最大の被害者。さばぬかは北九州の名物料理。


 んー。

 こうして見てみると、初期のプロットどおりにいった構想の方が少ないな!


 何が難しいって、毎日投稿しながら構想を練らないといけないのが本当に難しい。たとえ良い展開がまったく思い浮かばなくても投稿はしないといけないので、タイムリミットまで死ぬ気で頭をひねって先の展開やら準備しておくべき伏線やらを考えなければならない。


 拙作は少し設定の練り込みとか、伏線の張り方とか、少し甘いところが散見されるが、四割は自分の未熟さのせいで、残り六割は毎日投稿の仕業(しわざ)だ。急ぎ過ぎるのも考え物だなと、毎日のように思わされた。


 結局、色々な構想や設定を後から詰め込みまくった作品になってしまったが、それで良かったのかもしれない。最初から物語の全てを完璧に構想できる作者の方が恐らく少ないだろう。

 作者たる自分としても、その都度(つど)その都度(つど)エピソードの内容や設定を考えるのは、ちょっとした冒険をしているようで、大変だったが楽しかった。


 最初からしっかりと決まっていた部分もあった。その代表的な例が、ラスボスの倒し方と、本当の最終決戦の二つだ。


 主人公の日向たちがいったいどんな道のりを辿ることになるか、まだ連載を始めたばかりの自分には詳細な想像がつかなかった。しかし、ゴールとなるシーンはこの二つにしようというのは連載開始時から決まっていた。この二つのシーンをただひたすら目指し続けた連載だったと言っても過言ではない。

 

 途中で追加したエピソードなどはいくらかあるが、物語の終わりを引き延ばすためだけに追加したエピソードは一つもない。あの二つのシーンとエンディングに向かってまっすぐ走り続けた。


 だからこそ、綺麗な終わり方にはなったと思う。

 ちょっと中身はパンパンだが、風呂敷は最後まで畳み切ることができた。

 それが、あの連載を完結させたことにおける、一番の誇りだ。


 ほぼ毎日投稿しながらの連載は大変だったが、得られたものは多かった。


 練り固めるのを後回しにしていた構想や設定を活用しなければならない場面が来ても、毎日投稿をしている以上、思考するために足を止めることはできない。だから、ハイスピードで構想を練るアドリブ力がついた。


 自分の本文はわりと読みやすく、アクションシーンは格好良いらしい。それらもきっと、日々(たゆ)むことなく書き続けたことで鍛えられたものだろう。単純に自信もついた。


 あのような物語を最後まで読んで下さり、さらにはご感想まで書いてくれた優しい読者様に恵まれた。まだちょっとだけ(くすぶ)っていた承認欲求も完全に成仏した。


 もはや、あの作品に思い残すことは何もない……と言うと(うそ)になるのだが。


 序盤の展開や、主人公たちと星の巫女との邂逅(かいこう)、『星の力』の設定まわりなど、もっとスマートにやれただろうという思いが今でも強く残っている。

 もしもあの連載をリメイクする機会があれば、このあたりを補強して、さらに強く美しい一本線をスタートからゴールまで通してみせる。そんなことを今も考えている。


 他には、エンディング後の後日譚だとか、続編だとか、アメリカチームを主人公にした前日譚とか、そういった構想もひっそりと練っていたりする。まだとても連載に耐えられるようなレベルではない、ぼんやりとした構想ではあるのだが。


 あとは……どのキャラが一番好きだったとか、どのエピソードが一番好きだったとか、アンケート取ってみたいなぁとか。


 未練タラタラじゃねーか、ですって?

 奇遇ですね、自分も同じこと考えてました。

 未練タラタラじゃねーか自分。


 まぁ、それらを実現するのは、まだ先だ。

 今は、手に入れた自由と、ちょっとは成長したであろう筆力で、また別の世界を書いてみたい。


 このあたりで、そろそろ終わろう。

 最後に一つ、皆様に向けた、今の自分の気持ちを簡潔に述べさせていただく。


 悪いことは言わない。

 毎日投稿は、やめておけ……。


 いや違う、そうじゃない。


 こんな自分と登場人物たちを応援してくださった皆様がいたからこそ、走り抜けることができた連載でした。改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。






 ……ここからが本当の、最後に書き残したいこと。


 ここからは拙作「太陽の勇者~」の最終章とエピローグに関する重大なネタバレがあります。いくらかぼかして書くつもりですが、ネタバレされたくない方はここで引き返すことを推奨いたします。








「本当の最終決戦」は。

 最初のプロットでは、もっと悲しい結末になる予定でした。


 具体的にどんな内容かは言いませんが、本編をお読みくださった方々ならば、なんとなく察しが付くかと思います。


 しかし、この物語の結末を予期された方々からのご感想をいただいて、自分は考え直しました。

 日向たちは、滅びの運命を回避するために……運命を越えるために戦っている。しかし、最後の最後で、運命の言いなりになるしかない結末になってしまうのは、物語のテーマとしてどうなのだろうかと。


 結果、彼らの運命は変わりました。

 読者様の声を受けて展開を変えた箇所としては、ここが全編通して唯一です。


 完璧に確定させていた結末を、連載途中で真逆の方向に変更しなければならないのですから、そりゃあもうどのような構想にすれば矛盾の無い展開にできるか死ぬほど悩みました。毎日のように考えておりました。そして新展開の構想を確定させたのは、本当の最終決戦を書く三日前くらいです。


 日向は、定められた運命を回避しました。

 それは作中で語られているだけでなく、現実世界まで飛び出して、真に運命を変えたのです。


 ご都合主義とおっしゃられる方々もきっといらっしゃるでしょう。

 しかし今の自分は、日向が本当に誇らしいです。

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[良い点] ∀・)『太陽の勇者は沈まない~マモノ災害と星の牙~』の舞台裏を赤裸々に語っている作品だと純粋に感じ読んでいましたが、そうでありつつも翔という者さんっていうなろう作家さんの紹介もしっかりとさ…
[良い点] 広げた風呂敷を畳む作業が一番苦労する。小説あるあるですよね。 話数が多いとどう収めていくのかって、別のハラハラ感があります。それをキチンとやった翔さんは凄いですよー。むしろ思い通りに動ける…
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