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モブなのに最強?  作者: らんか
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悪役令嬢も!?

 3日後の学園終了後、ミーシャはミホーク公爵邸へと向かった。

 到着後すぐに、中庭のガゼボに案内される。そこにユーリ・ミホーク公爵令嬢のみが座っていた。

 

「いらっしゃいませ。ようこそわたくしのお茶会へ。歓迎いたしますわ、ラバンティ辺境伯令嬢」


「ご機嫌よう。ミホーク公爵令嬢。

 本日はお茶会へのお誘いを頂き、まことに感謝いたします。あの……。失礼ですが、他の方は?」


 他の誰もいない事にびっくりして、思わず聞いてしまったが、意に介さないような様子で微笑みながら、

「まぁ、おかけになって? 本日はラバンティ辺境伯令嬢……ミーシャ様とお呼びしても?わたくしもユーリとお呼び頂けたら嬉しいわ。

 それで、今日はゆっくり二人だけで話したいと思っていたから、他の御令嬢達はご遠慮頂いたの」

と、席を勧めてくれた。「ありがとうございます。わたくしもぜひ、ミーシャとお呼びくださいませ」


 ミーシャは了承し、席に座ってからすぐに、公爵家のメイド達が、温かい紅茶とスイーツを出してくれる。

 色鮮やかなスイーツ類の中に、一際目立つ和菓子のような物を見つけて吃驚した。


(こ、これは……おはぎでは?)



 私の視線がおはぎ一択になっていることに気づいたユーリは、クスッと笑ったあと、

「ミーシャ様。このスイーツの名前をご存知かしら?」

と、真剣な表情になって聞いてきた。




 ミーシャは公爵邸に行く時、何を持って行くか悩んだのだ。もし、前世の記憶があるなら前世にあったものに反応するはず。何が自然に持っていって確かめられるのか考えた時、前世にあった食べ物はどうかと。

 しかし、色々チート能力を持つミーシャであったが、壊滅的に才能がないのが料理だった。

 前世の妹はよく話していた。異世界転生した人間が、料理や食材の知識で異世界に旋風を巻き起こすと。

 前世を思い出した時、やってみようかとは思ったが、厨房に入った途端、料理長から追い出された。

 かつて学園入学前、興味本位で厨房に入り、クッキーを作ろうとしたが、何故か厨房が爆破した。

 普通に小麦粉とバター、卵に砂糖を混ぜて、オーブンに入れただけなのに。

 解せないが、それ以降、厨房へは立ち入り禁止となったのだ。


 そんなわけで、前世の食べ物が作れない今、どうすれば確認出来るのか。


 苦肉の策で、日本語で書いた手紙を持ってきたのだが、これを出す必要性を感じない。

 この人は間違いなく日本からの転生者だ!



「おはぎ……ですよね?」


 ミーシャが答えると、それまで真剣な表情をしていたユーリの表情が崩れ、嬉しそうに笑った。



「やはり。そうではないかと思っておりましたわ。

 わたくしと同じで前世の記憶がありますのね。しかも同じ日本で」


 話を聞いてみると、ユーリは日本では主婦をしていたとのこと。

 お菓子作りにはまっていて、新しいお菓子を作ってはブログに上げて、まずまずの人気だったのだとか。

 また、異世界ものの小説が好きで、良く読んでいたとのこと。乙女ゲームをしたことは余りなかったそうだが、やった事のある数少ない内の一つがミラアタだったそうで、まさか、自分がミラアタの悪役令嬢に転生するとは思わず、分かった時にはパニックを起こしかけたらしい。


 ミラアタは高確率で悪役令嬢は断罪され、国外追放や、娼館行き、幽閉されたり最悪処刑されたりする。

 将来の聖女様に嫌がらせをし続け、最終的には命を狙うからなのだが……。


 今回、モブであるミーシャに目を向けたのは、本来ならオープニングのみ出場するモブ令嬢は、魔物討伐や飛竜に乗り回すことはおろか、馬にも乗れない普通のお嬢様らしい。

 魔法にも特に特化することはなく、剣術も出来ないのだとか。

 これは、ファンサービスの一環で、数量限定で発売された攻略本に載っていた情報なのだとか。


(そんなの、知らないわよ~! たかだかモブにまで、そんな詳しく情報設定しなくても……)

 

 そんな設定があったとは知らなかったミーシャは、前世の記憶が戻る前から知ってる人が見たら必ず異質と感じるくらいの行動をとっていた。

 記憶が戻った後も、もちろん気にせず呑気に構えていた自分の迂闊ぶりに、ほとほと情けない思いだ。

 そして、決定的だった瞬間は、あのオープニングの婚約破棄。あの時モブ令嬢は、オロオロして泣き出したのだとか。

 あんな風に毅然とした態度で言い返した事で、確信したらしい。


 それでも今日まで声を掛けなかったのは、断罪に巻き込む恐れがある為、躊躇っていたという。

 でも、シオンが学園に来た事で、またミーシャがヒロインに敵対心を持たれているのではないかと感じて、声を掛けてくれたようだ。


「ユーリ様はいつ前世を思い出されたのですか?」


「わたくしは、産まれた時から記憶がありましたのよ。だから、どうにかダミアン様の婚約者になるのを回避したかったのに、国の事情でどうする事も出来ませんでしたの。

 だから、せめてヒロインとは関わらないように、ダミアン様とも距離を置き、好意はないことや、いつでも婚約解消に応じるともお伝えしてあるのですが、ゲームの強制力なのかしらねぇ……」

 

 ほぉ……と溜息をつきながら、ユーリは今までの事を教えてくれた。


 また、自分と同様に悪役令嬢となる可能性がある他の攻略対象たちの婚約者たちにも、極力ヒロインとは関わらないように助言したという。


「もともと、あのヒロインが原因で婚約破棄されたミーシャ様のことは、他の婚約者である皆様と心配していましたの。だから以前から、わたくし達の〈癒しの会〉メンバーのお茶会にお誘いしたいとは思っておりましたのよ。

 ぜひ、次はメンバーの皆様もお誘いしてお茶会を開きましょうね」

と、ユーリはにっこりと笑った。

 

 そして、そのあとはヒロインの今後の動きや、いつ頃聖なる力に目覚めるのか、攻略対象の有力候補は、やはりダミアンであるなど、進捗具合を確かめ合い、今後も定期的に情報交換をしながら、何とか断罪回避に向けて手伝ってほしいと頼まれた。


 そのお礼として、ユーリが開発するスイーツ類を優先的に我が家に提供してくれる事になった。

 ユーリは、さすが産まれた時から前世の記憶があるだけあって、この世界で色んな食材を探求し、前世の知識をもって、色んなお菓子を作り出し、王都にスイーツ店を出していたのだ。


(まさかあの超有名な人気スイーツ店の経営者がユーリ様だったとは!)


 そして、前世を思い出してから、無性に食べたいと思っていたお米や味噌汁などもあることを聞いて、出してもらった時には涙した。

帰りにお米と味噌を分けてもらい、レシピも書いてもらって、大満足で帰途したミーシャであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] (*゜ロ゜)ぼた餅ですわ~♪ 四季それぞれの呼び方があるそうですね
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