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モブなのに最強?  作者: らんか
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ヒロイン登場


「ミーシャ嬢、久しぶりだね」


 後期の学園が始まって、二週間経ったある日、移動教室に向かって歩いていたミーシャに後ろから声が掛かった。

 振り向いたミーシャは、声の主を見た途端固まった。

 何故か領地で出会った第一王子シオンライトと、側近のユージュラスがにこやかに学園の廊下で立っていたのだ。


(なんでシオンライト王子がここに? シオンライト王子は学園に通ってないはず。もちろん21歳のユージュラス様もここでは出会うはずないよね⁉︎)

 

 思考停止状態のミーシャを見て、くすっと笑ったシオンライト王子はあの後のことを教えてくれた。


「ミーシャ嬢にもらったモーニュ草を持って、あれからすぐに隣国の専門薬師を訪ねたんだ。ちょっとしたツテがあってね。すぐに作ってもらえるよう約束してたから、あっという間に薬を作ってくれたよ。

それを飲んだら、今まで身体の中を暴れていた魔力がスッと収まってね。正常に身体の中を魔力が巡っていく感覚が手に取るように伝わってきた。  

 それからは体力的にも変化が現れてきて、すぐに息切れしていた身体が魔力放出しなくても、全然苦しくなくなったんだ。

 それで、ずっと諦めていた学園にも通う事にしたんだよ。入学資格のあるギリギリの18歳だからね。学年は一つ落として2学年からの中途入学になるから、これから同級生としてよろしく頼むね」


 笑顔で話すシオンライト王子を見て、受けた印象の違いに吃驚した。

 前に会ったシオンライト王子はゲームと同じで無口な、ちょっと冷たさを秘めた薄幸の美少年のイメージだったのに、今は溌剌として、元気いっぱいの爽やかイケメンだ。

 そばでその様子を見ているユージュラスも嬉しそうに眩しいものを見るように眼を細めて見守っていた。


 そして、3人で話している様子を廊下の角からヒロインであるリセラが、眼を見開いてガン見していたのに気づかなかった。





「まさか第一王子殿下の御病気が治られて、学園に入学して来られるとは思いもしませんでしたわぁ」


 あちらこちらで第一王子の学園の中途入学について話題に挙げられていた。

 詳しい病名は発表されていなかったが、幼き頃より病弱で人前に出る事さえ叶わず、離宮でずっと療養していると思われていたのだ。

 実際には、時々冒険者を名乗りながら適度に体内に膨らんでいる魔力を放出し、病をやり過ごしながら魔力過多症の治療方法や暴発防止方法を探していたようだが。

 

 18歳のシオンライトは本来なら3年に所属になるが、あと半年で卒業するには履修科目の単位不足で無理があるため、二年からの中途入学という特例処置となった。

 第二王子のダミアンはザ・王子といった容姿の金髪碧眼であるのに対し、第一王子は冴えわたる群青色の髪に深海色に金色が差し込む神秘的な瞳。色の全く違う王子二人の人気は二分した。



「シオン様~」


 甘く鼻にかかるような声を発しながら、リセラが駆け寄ってくる。シオンライトの隣にいたミーシャをシオンライトに見えないように軽く睨みつけながら。

 

「シオン様ぁ。どちらに向かわれるのですかぁ?私もご一緒させていただきたいですぅ」   


 シオンライトの腕を掴もうと、リセラは手を伸ばしながら話しかけてくるが、その間を素早くユージュラスが身体を滑り込ませ、シオンライト王子に触れないように阻止する。


「カールトン男爵令嬢。前にも言ったが、シオンライト第一王子殿下に軽々しく触れるような真似はしないように。もちろん名前で呼ぶ事も許可されていないよ」


 ユージュラスが厳しめの声で注意したが、リセラは全く動じていない。


「何故ですかぁ? ダミアン様は何もおっしゃらないし、学園では平等だとダミアン様からお聞きしましたよぅ」


(ああ、これは……まさかのお花畑転生者ヒロインの匂いがする……前世の妹が逆ザマァの小説が流行ってるってよく話してたっけ。私は一度も読むことがなかったから妹の受け売りだけどね)

 

 ミーシャはそのやり取りを横目で見ながら、どうにか自分だけでもこの状況からフェードアウト出来ないか考えていた。


「ミーシャ嬢、今日はもう授業は終わりだろ? ミーシャ嬢のタウンハウスに寄らせてもらっていいかい? ちょっと聞きたい事があるんだ」


 シオンライト王子はリセラに一瞥もくれずにミーシャに話しかける。そのせいで、更にリセラからキツく睨まれてしまった。



(やめてやめて! 私はただのモブ! 王子との関わりなんて、これ以上持ちたくないのに、何故うちに来ようとするのよ! 空気読んで下さい! 私、ヒロインに思い切り睨まれてますよ~!)

 

 心の中で叫びながらも表情には出さずに、丁寧にお断りする。


「申し訳ございません。今日は週末ですので、飛竜に乗って領地に戻る予定にしております」


 学園が休みになる週末は、なるべく領地に戻り温室の管理を行なっている。頻回に戻らなくても良いのだが、瘴気を扱っているので何かと心配なのだ。


「ああ、そうか。あの温室はミーシャ嬢が管理しないといけないから仕方ないのか。では、空いてる日を連絡してくれ。話したいことがあるから」


 シオンライト王子は、すぐに納得してくれてたが、話をするのは決定事項なのか……横から会話を聞いているリセラからは、終始睨まれ続けていたミーシャであった。




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