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モブなのに最強?  作者: らんか


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魔物討伐

「くそ! 思ったより数が多い! どんどん奥から出てきやがる!」


「ユージュ悪い……上手く魔力を放出出来そうにない……」


 冒険者風の装いをした二人組の男が十数匹の牙狼に囲まれている。この辺りではよく見られるD級モンスターだ。


 ミーシャは素早く火魔法を放ち、牙狼の意識をこちらに向けると、

「今のうちに森の入り口を抜けて結界内へ!」

と、叫んだ。


 二人の男は突然現れたミーシャに驚いたが、すぐに反応し牙狼の意識が逸れた瞬間に駆け出した。その後を牙狼達がすぐに気付き、追いかけようとするところに今度は雷魔法で牙狼達の足を一気に貫き麻痺させた。


「こっちよ!」


ミーシャは二人の男達を領地の結界内へ案内し、魔物から回避させた。

 戻った時には結界穴に沿って、しっかりとした防壁が作られており、当分は魔物達は入って来られないだろう。A級以上の魔物や魔族が来れば一溜まりもないが……。


 

「さっきはありがとう。散々戦いながら移動してたから、魔力も尽きかけてたんだ」


 先ほどユージュと呼ばれていた男が話しかけてきた。

見たところ20代前半だろうか。    


 焦げ茶色の短髪で瞳はガーネット色、笑顔がやや甘めに感じる。長身で細身だが鍛えられていると分かる体型。

先ほどは口の悪さが目立っていたが、しぐさや口調は何処か気品が感じられ、どこかの高位貴族を思わせる。  


 連れの男は長身痩躯な割に、膨大な魔力を感じる。紺青の長髪を一つにまとめ、深海色の瞳に金色が差し込んでおり、知性を感じる容姿が印象的だ。

だが、今は満身創痍な様子で顔がやや青白い。


「礼には及びませんが、一体なぜあの場所にいたのかお聞きしても?」


 結界外の魔の森に入るなど、自殺行為に等しい。特にここの森は昔よりA級以上の魔物が奥に生息していると言われており、滅多な事では冒険者達も入らない森なのだ。


「あーー。どうしても手に入れたい植物があってね。それがこの魔の森にしか生息してないって聞いたから……。本当はSS級冒険者にでも護衛を頼めば良かったんだろうけど、あいにく数少ないSS級も、S級も出払ってたらしくてさ。一応俺らA級だから、植物探して採ってきたらすぐに戻るつもりで入ったんだけど、予想外に手こずっちゃったってわけ」


 それぞれ見せてくれたA級冒険者カードには、ユージュの名前と、シオンと書かれた名前がある。もう一人の人の名前なのだろう。



「それで、探していた植物は見つかりましたの?」


 暗い表情をしている二人を見て、ちょっと心配になって聞いてしまった。

案の定、

「いや~、結局見つけられなくて……」 と、頭をがしがし掻きながら、悔しそうにユージュが答えた。

 

「ちなみに何の植物かお尋ねしても?」


「……モーニュ草」


 しばらく考え込んでいたが、シオンという名前の男が短い返答をした。


「モーニュ草……うちの薬草園にありますわね……」


 思い出しながら言葉を発すると、シオンは弾かれたように顔を上げ、信じられないと言った様子で真っ直ぐにミーシャを見つめた。


「本当ですか⁉︎  お願いします! ぜひ我々に分けていただきたい!」


 ユージュが勢いよく頭を下げ、

「ほら! シオンもお願いして!」

と、固まっているシオンの背中を押すと、ハッとした様子でシオンも頭を下げた。



 ─── モーニュ草


 どんな毒をも消し去り、一気に身体に不足している栄養素を補ってくれる万能薬を作り出せる薬草だ。

魔の森にしか生息しないのは、瘴気を栄養としているからだと言われており、人里で育てるのは不可能だと言われている。

 しかしミーシャは幼い頃、父や兄に連れられて魔の森に入った時、今で思えば日本で見た白いシクラメンのような草が目に留まり、それが幻のモーニュ草であると知ってから、どうにか領地内で育てられないかと数年に亘り研究を重ねて、魔の森の土を持ち帰り、定期的に魔物の中にある魔素を土の中に混ぜ込み、瘴気を維持させる事によって、領地内で育成する方法を編み出した。

 もちろん瘴気がある空間を作り出す為、魔の森でしか生息しない植物のみを育てる温室を作り、関係者以外は立ち入り禁止区域として、厳重に管理している。


「簡単にお渡し出来るものではない事はご存知ですわよね? 事情を話してもらって納得の出来るちゃんとした理由であるならば家族と相談してから検討しますわ」


 ミーシャの返答にほとんど言葉を発しなかったシオンが、しっかりとミーシャを見つめ「挨拶が遅れて申し訳ない。改めて挨拶をさせてほしい。私の名はシオンライト・フォン・アトラン。この国の第一王子だ」

と、毅然とした態度でミーシャに名を告げた。


「えっ!」


 今度はミーシャが固まったが、追随するように今度はユージュが、

「私はユージュラス・アルトリス。アルトリス公爵家の嫡男であり、シオンライド王子の側近です」

と、物腰柔らかく笑顔で名前を告げられた。




 アトラン王国の第一王子


 今は亡き前王妃の第一子であり、膨大な魔力を持ちながらも幼き頃より病弱で、長くは生きられないであろうと噂されている方。


(たしか御年18歳。側妃であった第二王子の母が現王妃になってからは、離宮で療養していたはず。なのに何故冒険者に? いやいや、待って。それよりこの人、あの乙女ゲーム〈ミラクルガール・ラブアタック〉通称ミラアタの攻略対象の隠しキャラじゃなかったっけ? そういえば、この側近のユージュラスってのも同じく隠れ攻略対象!)


 色んな意味でこの二人の重要性に気付き、パニックを起こしそうになるミーシャのところに、父と兄がやって来て、王子と公爵令息が改めて挨拶すると、すぐに辺境伯邸に招き歓迎することとなった。



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