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モブなのに最強?  作者: らんか
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聖女誕生!

 リセラは焦っていた。

 今回の件で、邪魔なユーリやミーシャを排除しようと考えて噂を流したのに、真相が明らかになった事によって、命の恩人であるミーシャを悪者のように語っていたことが仇となり、卑怯者とリセラの評判は下がる一方だ。おまけにあの時、聖なる力が発現されなかったことも不満で仕方なかった。


(何故なの⁉︎ あの魔物が現れて襲われそうになった時に、力が出現するはずだったのに! モブ女らが現れて、予定より早く危機から脱したからかしら?

 本来なら、オルガが私を庇って怪我をして、それを見てから力が発現する流れだったから、オルガが怪我しなかったから発現しなかったのかしら⁈ 何とかしてあの時と同じ条件に持って行かないと!

 聖なる力に目覚めないと、これからの計画が台無しよ! シオン様とも全然距離を縮められないじゃない!)


 シオンはすでに病が完治しており、聖なる力は必要ないのだが、そんな事は頭の中からすっぽりと抜けて都合の良いように考えている。

 リセラと同じように、ダミアン、オルガ、ミゼルも周りから信用を無くしており、学園は居心地悪い。


 西方の領地では、今回の件のゴタゴタで、冒険者ギルドが上手く活動出来ず、魔物討伐に苦労しているとダミアンが話していた。

 名誉挽回の為にと、ダミアンやオルガ達を誘って魔物討伐に参加し、上手く力が発現する状況を作り出せば、聖なる力が発現するかもと考えたリセラは、ダミアン達に、西方の魔物討伐を提案した。


「魔物討伐の支援か……。僕たちでは力不足なのではないか?」


 ダミアンは渋ったが、リセラの名誉挽回という言葉には惹かれている様子だ。


「私達だけでは確かに危ないかもしれませんけど、王族であるダミアン様だけで討伐させることはないはずですわ!

 きっと陛下が騎士団をお貸しくださるはずです。ダミアン様の名誉挽回の為ですもの。きっと王妃様もお力になっていただけるのでは?」


 リセラの更なる説得にてダミアンは頷き、    

「そうだな! オルガ! ミゼル! お前達も今のままじゃ、居心地悪いだろう。

 一緒に魔物討伐に参加して名誉挽回しようではないか」


 ダミアンの言葉にオルガがすぐに賛同し、ミゼルは躊躇していたが、リセラも行くとの事で渋々賛同した。


「おい。アズレン。お前はどうする?」

 オルガがアズレンに声を掛けた。


「いや、僕は行かないよ」


 アズレンがそう答えると、リセラはぷくっと頬を膨らませ、

「もう! 最近のアズレン様は全然一緒に行動してくれないのですね! 私たちが大変な思いをしているのに、助けてくれないなんて見損ないましたよ!」

と、怒り出す。


「放っておけ。アズレンは僕たちのように周りから謂れのない中傷被害を受けてはいないのだ。どうせ他人事だからと思っているのだろう」

 突き放すようにダミアンが言い、リセラ達と共に席を立った。


(もう、あの人達とは一緒にいることは出来ないな)

 アズレンはダミアン達から更に距離を置く事にした。






 あれからダミアンは、陛下に魔物討伐参加を願い出て、西方の騎士団と共に、討伐に参加させてもらえる事となった。

 もちろんリセラやオルガ、ミゼルも一緒だ。もちろん未成年であり、王族であるダミアンは後方支援で、リセラ達も同じ。西方の騎士団にとっては、足手まといも甚だしいが口には出せず、仕方なく受け入れていた。


(やっとここまで来たわ。あとは私を庇って、魔物にオルガが怪我させられる状況を作り出せば……)


 リセラは何としてでもこの機会を逃さず、聖なる力を発現しなければと考えていた。

 しかし後方支援では、なかなか魔物に直接接触する事はなく、イライラが募るばかりだ。


 リセラは、オルガにこっそり近づき、

「オルガ様、こんな事では名誉挽回にはなりませんわよね。もっと前に出て魔物の一匹でも倒しましょうよ。私、防御魔法を駆使してオルガ様をお助けしますから」

と、囁いた。


「そうだな。行こう! リセラ」


 リセラに自分1人が誘われた事に気をよくしたオルガが、リセラと共に走り出し、前線まで来ると、一匹の大型のベアモンスターに攻撃を仕掛けた。

 

「何してるんだ!」

 

 ダミアンや他の騎士達が止めようとしたが、ベアモンスターはオルガとリセラに向かって走り出し、大きな唸り声と共に鋭い鉤爪で、襲いかかった。


「きゃあ!」

 

 リセラの叫び声で、オルガがリセラを庇い、オルガの背中をベアモンスターの鉤爪が襲う。

 オルガの背中が血に染まり、肉片が飛び散った様を見たリセラの身体が急に光り出したと共に、リセラを襲おうとしていたベアモンスターが跡形もなく消滅した。



「今の光は? ベアモンスターが消滅した? ……まさか、聖なる力?」

 

 リセラの身体を包み込む光が収まる頃には、その近くに潜んでいた魔物たちも跡形もなく消滅していた。


(やったわ! ようやく聖なる力が目覚めたわ!)


 喜びに溢れているリセラの周りを囲むようにダミアンやミゼル、他の騎士達が集まった。そして、みんなが見ている中で、リセラはオルガに近づき、力を使って背中の傷を治癒する。

 みるみる傷が塞がり、意識が回復したオルガを見て、周りの人達は口々に叫んだ。


「聖女様だ! 聖女様が現れた!」

「聖なる力が発現された! 奇跡だ!」

「すごい! これで王国は安泰だ!」


 喜びと共に、みんなに崇められ始めたリセラ。


「やはり、君は凄い人だったのだな! 君は僕に相応しい女性だ!」


 ダミアンは感激してリセラを抱きしめ、すぐに騎士達に指示を出した。


「王宮に先触れを出せ! すぐに王都に戻り、聖女の出現を陛下に報告する!

聖女を守ることが最優先事項だ!周りを固めよ!」


 そして、ダミアンはその場に居た騎士団に守らせながら、早々にリセラを連れて帰還した。



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