【03】日常・休日
土日のせめてもの救いは、株の勉強という名目で家事の合間を縫って休むことを許されるということだ。株の儲けはほとんど家に入れているが、優待券や配当は俺がもらっている。二人とも、細かいものはめんどくさいらしい。
土日の食事もすべて自分で作る。平日と同様に朝食は三人分作っている。昼も夜も作ることは珍しくない。今日は株の勉強のため外出すると半日は自由時間を貰えている。
「ふわーぁ、あ、朝はミルクティーね」
注文が当然というように寝ぼけながら美香が指示をしてくる。そのうしろからしっかり目覚めた英美が降りてくる。
「美香おはよう、あ、あなた今日私たちの布団干しとカバーの掛け替えお願いね」
「いや今日は外出して勉強する予定なんだが」
「そんなの夜やればいいでしょ。もっと柔軟に考えなさい。だから出世できないし株も儲からない無能なのよ」
命令と罵倒と朝令朝改はいつものことだ。自習室を予約していたのだけど、致し方ない。
「わかった。今から部屋に入るがかまわないか」
「仕方ないわね。ついでに部屋も片付けておいて。会社は休みだから問題ないでしょ」
「いや、だから株の勉強……」
「だから、夜でも深夜でもいつでもやりなさいよ。あなたより私たちのほうが優先されるに決まっているでしょ」
「え、おっさん入るの? やだ。入らないで取り替えてよ」
「がまんしなさい。すぐ終わるから」
入らずにどうやって取り替えるのかやって見せてもらいたいものだ。ため息すらもう出し尽くした。
無言で朝食を用意し終えて、二人の部屋に入り、ベッドの布団やカバーを掛け替え始める。今日は洗濯機を三度くらいは回すことになりそうだ。
掃除も含め家事が一通り済んだのは昼飯が終わってからだ。
夜は二人でディナーに行くというから、夕方以降は空きそうだ。干した洗濯物や布団を取り込んでいると二人の笑い声とドアを閉める音が聞こえた。リビングに戻ると案の定菓子や紅茶の残りが散乱している。夕飯はご飯すら用意されていない。
いつものことだし、これはこれで好都合だ。
急いで片付けをして、外出の準備をする。家族と離れられる時間を無駄にしない。一時間後には外に出た。
自習室も営業時間があるから長居はできない。残りはネットカフェでひきこもる。妻からも娘からも連絡はない。帰ってきている時間でも、いなければ呼び出すのもめんどうらしい
結局、日付が変わる前にどうにか戻る。家は真っ暗。鍵を開けて中に入り明かりをつける。予想通りのキッチンやリビングを片付け、書斎に入って一息つくと午前一時をまわっていた。
土日はこんな感じで二日間があっという間に過ぎる。投資の計画を立てていると眠りにつくのは二時や三時もめずらしくない。それでも家族のためであるならと家事と仕事と投資に精を出す。
まずは日常を書きました。
この先どうなるのでしょう。
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