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いたずら  作者: あるとII
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【01】日常・平日(1/2)

最初から鬱展開でごめんなさい。

 フラリーマン、という言葉は最近知った。

家に帰りたがらない、主に男性、夫のことをいうらしい。

帰りたくない理由は子育てや家事を敬遠していることが多いようだ。

そんな旦那を、多くの妻は「私は子育てでひとりになる暇もない。家に帰れば寝るだけで済む旦那はいいきなもの」と嘆いていると聞く。

 そうした男性の多くは、昼間は指示を出したり交渉や判断をし、責任をとって頭を下げたりと、しっかり頑張っている。誰のためかと言われたら、多くは家族のためだと答えるはずだ

もし一億円もらったらどうするか問われたら、家族を持つ多くの男性は迷うことなく、家族のために遣う、というだろう。

 その家族のために働くことが、どうして報われないのだろうか。

 今の時代、家事をしない男性が敬遠されるのは十分に理解している。すべての男性がそうだと言わないが、妻が大変なのを理解している者も相当数いる。


 俺には妻と娘がいる。

 どこに出しても自慢できる妻と娘だと思っている。

 反対に、妻と娘は、俺を夫や父としてどこででも紹介したくないらしい。

 もう五年以上、外で妻と娘、いや、妻か娘と連れ歩いたことはない。二人で月に二度くらいは連れだってどこかへ行っているのに、三人での外出は、誕生日や記念日さえない。

 たまに水を向けても、無視されるか予定があるからと断られてしまう。単に思春期という感じでもない。


 原因として、俺の仕事が忙しいこともあるだろう。出張は年に十回なら少ない方だ。朝早く、夜遅いことなどしょっちゅうだ。

 そして、副業として株の勉強もある。金融業で働いていた妻からなかば強制的に始めさせられた。今では教えを請うことは少なく、重要なライフワークになっている。このままなら、いいときに売れればローンをだいぶ早めに完済することも可能だ。老後の資金だってすでにかなり稼いでいる。投資には定年退職も年齢制限も無いから、寝たきりになってもパソコンを動かせて頭が働くうちは、なんだかんだと続けられる。


 出張のない日はたいてい定時で終わる。

 正直、フラリーマンとなりどこかの飲み屋なり喫茶店なりで時間を潰したくはある。懐具合を考えればそうそうは無理だ。株の資金は大金が必要な場合以外は払い出しはしない。

 やむなく満員電車に揺られて自宅へと帰る。


 灯りのついた家の玄関を開ける。妻と娘の声がリビングから聞こえる。

「ただいま」

と、返事を期待しない一声をかける。

 二階へ上がるためにリビングへ行こうとしたそのとき、妻の英美が声をかけてくる。

「あなた、何してるの。ご飯は食べ終えたから食器洗いしなさいよ。それから洗濯と明日出すゴミも整理しておいてね」

「ああ、カバン置いたらやるよ」

「そんなのどうでもいいわ。早くしてよね。ああそれといつ帰ってくるかわからないから晩ご飯は用意してないから汚さないように自分で用意してね」

「わかってる。早めに片づけるよ」

 そういいながら、二階の書斎に入る。六畳ある一人部屋だ。主寝室はあるがそこで寝た記憶は近年ない。

 とりあえずスーツをすぐ脱いで部屋着になり、下に降りる。妻の言うとおり、流しにはソースやパスタのかけらがすでに乾いてこびりついている。

「なあ、いつも言ってるけど、せめて水に浸けておいてくれないか」

「そんなの、私たちの食後にあなたがすぐやればいい話でしょ。なんで私たちがやるのよ。遅く帰ってきたくせに」

 こんなのは慣れっこだ。あえて言い返す気にもならない。キッチンの水を流してミートソースのべったりついた皿を洗う。水も洗剤も無駄遣いしなでよ、なんてのは無視だ。もちろん節約して使いはするが。

 洗濯物は妻と娘のものは洗濯ネットに入れてもらう・・・はずなのだが、いつもカゴに放りっぱなしだ。仕方なく自分で入れる。こういうのは旦那の方が指摘をもらうことだと思うが。

 ネットは大きいのを買ってあるからカゴごとでも入る。下着類はむろん触らない。残りは俺の服や下着類を放り込んで洗濯開始だ。

 洗濯している間の三十分ほどの間に、カップラーメンで夕食を済ませた。においがつくのを嫌がるからすぐに食べてすぐにゆすぐ。明日のゴミ(可燃)をまとめる。洗濯物はさすがに自分たちの分は自分たちで干すと言われているので、男物だけを取り出した。これらは二階のベランダで干すのだが、洗濯バサミやハンガーは自前だ。女物だけだと不用心だからという理由で許可されている。

 リビングでは二人が笑い合っている声が聞こえる。優雅にコーヒーやクッキーやら出しているのだろう。翌朝には散らかしっぱなしになっているだろうリビングを確認することなく、洗濯物とともに二階に上がった。

 洗濯物を干してからようやく書斎に落ち着く。この部屋だけは二人から干渉されない。いわく、ごみのいる部屋など開けるのも嫌だそうだ。「開けると臭そうだから開けないで」という妻に「それだと入れないがいいのか」と返したら珍しく納得してくれた。

 今日の株の成果を確認し、出来高や値上がり率、ニュースなどデータを取得する。ネットで情報をいろいろ眺めて寝ることにした。

感想、ご意見などお待ちしています。

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