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こんな世界があるはずは・・・2  作者: ちゃんマー
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心霊体験怪綺談7

   四

 ちなみは変わった女だった。 人からオカルト少女と呼ばれるだけあって、その手の話に目が無い。 オカルト少女と言うよりは、オカルトオタクだ。 雑誌のムーは年間購読で買っていると言う。 しかし、顔は可愛く正雄のタイプなので全然気にならない。 むしろ正雄の事を理解してくれる存在なのだ。 正雄は神に何度も礼を言った。 俺はこんなに幸せで良いのだろうかと正雄は思った。 

今一番怖いのは、色付きの眼をした霊でも悪霊でもない、ちなみを失う事だ。 この恋を失う事だけが怖くてたまらないのだ。

「へ~、ここがマー君の部屋であり、お化け屋敷でのあるんだぁ」

部屋に入るなりキョロキョロしながらちなみが言った。 そして光モノの額縁を見付けると、これは何か意味があるのかと聴いてきたので、江藤さんの一件を聴かせると、わぁ~とかきゃ~とか言って瞳を輝かせるのだ。 とても可愛い。

「今日はマー君のお部屋に私お泊りするんだね、二人きりで・・・」

ドキッとする様なことを正雄の眼を見ながら言って来るちなみにドギマギしてしまう、意味が解っていて言って居るのだろうか。 正雄の話を聴いて居ても、それは地縛霊だねとか、それは浮遊霊て言うんだよ とか、一々詳しくて流石にムーの愛読者だけあって正雄よりも知識は断然上であった。

「マー君私今、超価学会の支部長なんだを」

といきなり言い出して、 宗教団体への勧誘を進め始めた。 ここら辺から様子がおかしくなり始めたのだが、恋は人を盲目にさせるのだろう。 正雄は快く入信する決意を固めた。あと3人入信させると本部長になると言う。 正雄の返事にちなみは飛びついて来て頬にキスをした。 まったく可愛い奴だ。 

そんな感じで、あっという間に夜が来た。 

「マー君クイズ出すね。 次の中から一番位の高いのは何か述べよ。①お地蔵さん、②阿弥陀如来、③閻魔大王、④毘沙門天、さぁ何番でしょう?」

「う~ん、分らん・・・大王が付いて居るから③の閻魔大王かな」

「ブ~、閻魔大王はこの中では1番下です、正解は②の阿弥陀如来でした~」

「あ、そう・・・」

「それとね二番目に偉いのはお地蔵さん、正式名称は地蔵菩薩と言って物凄く偉いのよ、

人々の罪を一身に背負って、人々の代わりに地獄の業火に焼かれて居るんだを」

「へ~、そう、じゃあ寝ようかな」

エッチと言う雰囲気では無い。 一日中その手の話しに正雄は疲れて来た。 どうでも良いがちなみ曰く(ムー的話し)らしい。 そのムー的何とかを辞めようとしないのだ。 

これじゃあ彼氏が出来ないのは無理もない。

「何で?折角ちなみがお泊りしに来たんだを

!今度はマー君の話を聴かせて」

おいおい、マジかよ!もうこっちは朝から晩まで変わらないテンションに疲れ果てて居る所なのに・・・エッチも無しで。

「よ~し、じゃあ取って置きの話しでもしましょうかぁ」

「きゃ~、待っていましたぁ」

正雄は体験談を語り始めた。 守護霊の話しに始まり、佐代子の話し、武士の話し、猫峠の一件辺りから、ちなみの表情が変わりだした。 周りをキョロキョロし始めたのだ。 

霊の話をすると霊が寄って来ると言うが、それは本当である。 さっきからラップ音もなり始めた。 なんせここはお化け屋敷の異名を持つ霊の通り道なのだ。 ちなみには観えて無いのだろうが、実は正雄とちなみの周りは霊達がぐるりと囲んでいる状態なのだ。 

怖いもの見たさで近寄るモノでは無い。 その事を正雄はちなみに知って貰いたく思い、そして正確に今の状況を伝えた。

「わ、私・・・か、帰る!」

「はぁ、今から?」

夜中の2時である、兎に角正雄は送る事にしたのだが。

「辞めて、近寄らないで!・・・」

そう言うとちなみは、坂を転がる様にして部屋を後にした。 ドタバタと煩かったのか、隣の部屋からドンッと音がした。 隣人が壁を叩いたのだ。 コイツだけは、明日朝一でシメてやろうと正雄は思った。 ちなみは去った。 正雄にとっては初めての恋愛だった

のだ。 まだキスもしていない。 頬には軽くあるが、そんな物など有って無い様なものだ。 今日はそれ以上を想像して居たのに。

降って湧いたような恋であった。 その日以来彼女には逢って居ない(遠い目)・・・。


   五

 イタッ!

親指の激痛に正雄は飛び起きた。 観るとまたアノおばさんの霊が正雄の腕に覆いかぶさって居たのだ。

「ち、ちょっと、おば、お姉さん何ですか」

「アンタ今おばさんて言おうとしたやろ」

「い、いえ言っていません」

「いや、おばって言うのをアタシはちゃんと聴いたで」

「そんな事よりもどうしたのですか、と言うか親指を押すヤツ辞めて貰えません?何か意味があるのですか、アレに」

「ふん、それよりもアンタ、女連れて来てた

なぁ、珍しく・・・」

「な、べ、別に良いじゃありませんか」

おばさんは、いきなり正雄の傷心を突いて来た、傷口をえぐる様なモノだ。

「アンタらもうしたんか?ヒヒヒ」

そう言うと、グウに握った拳の人差し指と中指の間から親指を突き出すと言うアノ有名なエッチなサインを作り、正雄の顔の前までもって来た。 何と言う下品なババァだ。

「し、していませんよ!」

「そうやろうなぁ、アノ様子じゃ、ヒヒヒ」

このババァは知って居てわざと聴いて来たのだ。 殺してやりたいが、もう死んで居る。

「な、何が言いたいのですか!」

「あの娘は良くないで、何の力も無いのにこっちの世界に干渉しようとして」

「え、何かマズイですか?」

「そりゃそうやで、遊び半分で心霊スポットに来るんだからね、ヒヒヒ」

それを聴いて正雄はハッと思った。

正雄自身が以前経験したのだから。 と言うよりこの部屋も言われて見れば心霊スポットなのだと言う事に愕然とした。

「大丈夫かなぁ、ちなみのヤツ・・・」

「アンタあんな振られ方しといて、やさしいなぁ・・・」

「な、またそんな人が気にしている事を」

「でもアンタ見込み有るんやで、こんなとこに1年以上も居るんやからねぇ。今まで持って1ヵ月も居れば良い方やで、アタシらもアンタの事は認め始めているんやで」

認めるとはどう言うことだ。 その事をババァに聴いて見ると、ババァは語り始めた。 

死んで始めの方は自分が死んで居る事を気付かないで、人に話しかけても無視をされる。

たまに気付いてくれても怖がられる。 そんな日々が続けば、中にはもしかしたら自分は死んで居るのだと気付き始める霊も沢山居るのだと。 皆が皆成仏する訳では無いらしいのだそうだ。 そんな霊が集まり、遊び半分

で来る人達をわざと驚かしたりして、喜ぶ霊も本当に居るのだと言う。

「なぜ成仏しないのですか?」

「そんなアンタ、皆が皆成仏したいと思っていると思ったら大間違いやで」

そう言えば正雄はこんな話を思い出した。 

重犯罪を犯してしまい何十年も刑務所に入って居る懲役囚は、出所して社会に出るのが怖いと感じるそうなのだ。 そして社会に出るのを拒み、中にはわざと事件を起こして仮釈放を取り消してしまう懲役囚も居るのだそうだ。 人は、今自分が居る環境が変わる事を恐れる人も中には居る。 きっとそう言う事なのだろうと正雄は理解した。 と言うコトは、環境を変えたくない霊を除霊して、成仏させる事の難しさを改めて痛感した。 近づいて居たモノが遠のいてしまった、そんな気がして、また分らなくなって来た。

「また振り出しに戻りましたよ」

「そうかい、でもアンタは見込みがあるよ」

「見込みって何ですか・・・」

「そりゃ自分で考えな」

「そこまで言っといて、教えて下さいよ」

「成仏したくないアタシらをさぁ、成仏させておくれって事さ、ヒヒヒ」

そう言い残してババァの霊は消えて行った。

 何なのだろう、このババァは、言いたいだけ言って居なくなるなんて。 ヒントを貰った様な気がした。 しかし、成仏したくないモノをどうやって成仏させるのだ。 道を示せと言う事なのか?その道が分れば苦労はしない。 今日正雄が分ったのは、除霊と言うのは、道を示すと言う事で、きっと骨の折れる作業なのだろう。

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