表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編小説シリーズ

よく読むと怖い話

作者: ex.MONSU

「かくれんぼする人、この指とまれ!」

 僕の地域には子供が集まる公園があって、暇な時は人差し指を立てて人を集める。

 ちょっと古い方法だと聞いたことがあるけど、この方法が1番分かりやすい。

 5分ぐらい一応待つ。それぐらい待つと集まってくる子供がいっぱいて、基本的には指に触れた人は隠れても良いことになってる。

 主催してる僕が鬼としてみんなを見つけるからで、一応分かりやすく立て札も立ててある。


「ねぇねぇ。お兄さんお兄さん。そのかくれんぼ混ざって良いかな?」

 高く上げていた手に届かないのだろう。足元から声が聞こえる。

「良いよ。お兄さん達と遊ぼうね」

 そう言って、上げていた手を降ろし、膝をついて指を足元まで届くように下げた。

「ありがと。私、隠れるのは得意だけど、時間かかるからゆっくり見つけてね」

 足元にいた子供に言われて、僕は黙って笑顔を返した。


「おっちゃん!オレもオレも!」

 次は逆に頭の上から聞こえる。次の子は背が高いらしく、頭を上げて確認する。

「おっちゃん言うな。言うな。まだ僕はこれでも10代だよ」

 失礼な子供ではあるけど、立ち上がって指に触れるようにした。

「ごめんごめん。お兄ちゃん。怒らない怒らない。じゃあ僕隠れてくるからヨロシクー」


「Hello?ワタシもイイデスカ?」

 外国の子供も今日はいるらしい。無い事ではないけど、珍しい。

「OK。OK」

 立て札には一応英語でもルールは書いてあるから、指をさしてみる。

「ワカリマシタ。let's enjoy」

 そう言って海外の子供は親指を立てて僕に向けた後、隠れに行った。


「貴様は、ここで何の儀式を行なっている?」

 なんだか、とても痛々しい言動の子供……中学生ぐらいの子供がやってきた。

「かくれんぼだけど。君もやるかい?」

 この手の子供には、普通に接してあげるようにしている。あくまでも通じてはいるけど、聞かなかったことにはしない。

「ふふふ。深淵に潜む我を見つけることが出来るなら、やって見せろ」

 軽く指に触れて、彼は隠れに行く。


「さて。今日はこれぐらいで良いかな」

 僕は、そう言って指を立てるのを辞め、隠れている四人をどう探すか悩む。

 とりあえず、最後の彼を見送ってから三分待つことにする。

「本当はもう少し短くても良いんだろうけど」


「おおーい!もーーいーーかーーーい!」

「「「「もーーいーーよーー」」」」

 かくれんぼと言えば、この台詞だろうと叫んでみたら、海外の子供も含めてみんなが大声で返してくれた。

 公園自体が物も多くて狭いために、反響や声のする方から場所を見つけることは出来ない。

 ただ、隠れられる場所が多いけど、何度も鬼役をやっている僕には大体の検討はつく。

「身長は小から大。ってことは、大きい子供から探した方が楽だね」

 

 周りを見渡す。流石に見渡しただけじゃ見つからないのは分かっていた。

 目に写るのはジャングルジム・砂場・ちょっとした森林・アスレチック・倒れたタイヤくらいだ。

 大きい子供から探すなら、森林からだ。

「とは言っても、僕より大きいのだから、見つけるのは簡単だ」

 言いながら森林に近づくと、既に見えていた。

「大きい子供さん。見つけたよ。今日の一番は君だよ。ほらハイタッチ」

「え。僕が一番?もうちょっと隠れられると思ったのになぁ。ちぇー」

 そう言いながらもハイタッチには応えていた。


「次は……まあ、片っ端から探そう」

 ジャングルジムは棒だけだから、隠れることは無理だろうからサラッと流す。

 砂場は……ん?何か、見えてる?

 砂場に近づいた時、何か布のようなものが見えた。

「もしかして、ここか?」

 道具も無いし、手を使って砂場を少し掘り進めると、布がよく見えるようになってきた。

 確証めいたものを感じながら、その布を引っ張ってみると、小さい子供が出て来た。

「見つけたよ。君は二番目。じゃあハイタッチ」

「なんでみつけられたの?」

「これ。服の端っこが見えてたからね」

 僕は掴んでいた服の部分をもう片方の手の指で指して言った。

「なーんだ。私の隠れるところ見てんだと思っちゃった」

 そう言って小さい子供もハイタッチに応えてくれた。


 後は、海外の子供と中学生ぐらいの子供だけだけど……。

「まさかタイヤに隠れてないよね」

 倒れてるタイヤは二つ。大きさは人一人入れる大きさではあるけど、まさかそんな。

 というより、タイヤに近づけば近づくほど話し声が聞こえる。

 どうやらさっきの二人は奇跡的に同じ場所に隠れることになって、話が盛り上がったらしい。

「かくれんぼ中に話してたらバレるよ……ってあれ。一人?」

 二つのタイヤを上から覗き込むと、海外の子供しか見当たらない。声は聞こえていたから、いるはずだけれど、周りを見ても見当たらない。

「Oh!good game!touch!」

 海外の子供は、そう言って僕とハイタッチをした。物分かりは凄く良くて助かる。

 だけど、もう一人が見当たらないので、彼の言っていた言葉を一応思い出してみる。

[深淵に潜む我を見つけることができるか]みたいなことを言っていた。

 よく見ると、タイヤの内側の部分にハマっていた。

「……そこの深淵さん。見つけたので出てきてくださいよ」

 そう言うと、薄暗い隙間から、目を光らせながら彼は出てきた。

「何故見つけられた」

「いや、深淵に潜むって言ってたから」

「はぁ。まぁ、良い。見つけたからにはハイタッチするのがルールだったな。……っとその前に一つ良いか」

 見つけた証であるハイタッチをするモーションを止めたまま彼は質問をしようとする。

「良いよ。君が四番目だから応えあげるよ」

「そうか。今日は四人も見つけられたのか。じゃあお兄さん。君は誰が見つけてくれるんだい?そのままで鬼役を続けて、未来はあるのかい?」

 僕は返事をせずに、ハイタッチせずに放置されていた手を無理に叩いた。


「ふう。今日も遊んだ遊んだ。明日はどんな子供が何人来るだろう」

 いつか看板に書かれている【鬼役やります】に反論して鬼をやってくれる人を探しながら明日も遊ぶんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ