よく読むと怖い話
「かくれんぼする人、この指とまれ!」
僕の地域には子供が集まる公園があって、暇な時は人差し指を立てて人を集める。
ちょっと古い方法だと聞いたことがあるけど、この方法が1番分かりやすい。
5分ぐらい一応待つ。それぐらい待つと集まってくる子供がいっぱいて、基本的には指に触れた人は隠れても良いことになってる。
主催してる僕が鬼としてみんなを見つけるからで、一応分かりやすく立て札も立ててある。
「ねぇねぇ。お兄さんお兄さん。そのかくれんぼ混ざって良いかな?」
高く上げていた手に届かないのだろう。足元から声が聞こえる。
「良いよ。お兄さん達と遊ぼうね」
そう言って、上げていた手を降ろし、膝をついて指を足元まで届くように下げた。
「ありがと。私、隠れるのは得意だけど、時間かかるからゆっくり見つけてね」
足元にいた子供に言われて、僕は黙って笑顔を返した。
「おっちゃん!オレもオレも!」
次は逆に頭の上から聞こえる。次の子は背が高いらしく、頭を上げて確認する。
「おっちゃん言うな。言うな。まだ僕はこれでも10代だよ」
失礼な子供ではあるけど、立ち上がって指に触れるようにした。
「ごめんごめん。お兄ちゃん。怒らない怒らない。じゃあ僕隠れてくるからヨロシクー」
「Hello?ワタシもイイデスカ?」
外国の子供も今日はいるらしい。無い事ではないけど、珍しい。
「OK。OK」
立て札には一応英語でもルールは書いてあるから、指をさしてみる。
「ワカリマシタ。let's enjoy」
そう言って海外の子供は親指を立てて僕に向けた後、隠れに行った。
「貴様は、ここで何の儀式を行なっている?」
なんだか、とても痛々しい言動の子供……中学生ぐらいの子供がやってきた。
「かくれんぼだけど。君もやるかい?」
この手の子供には、普通に接してあげるようにしている。あくまでも通じてはいるけど、聞かなかったことにはしない。
「ふふふ。深淵に潜む我を見つけることが出来るなら、やって見せろ」
軽く指に触れて、彼は隠れに行く。
「さて。今日はこれぐらいで良いかな」
僕は、そう言って指を立てるのを辞め、隠れている四人をどう探すか悩む。
とりあえず、最後の彼を見送ってから三分待つことにする。
「本当はもう少し短くても良いんだろうけど」
「おおーい!もーーいーーかーーーい!」
「「「「もーーいーーよーー」」」」
かくれんぼと言えば、この台詞だろうと叫んでみたら、海外の子供も含めてみんなが大声で返してくれた。
公園自体が物も多くて狭いために、反響や声のする方から場所を見つけることは出来ない。
ただ、隠れられる場所が多いけど、何度も鬼役をやっている僕には大体の検討はつく。
「身長は小から大。ってことは、大きい子供から探した方が楽だね」
周りを見渡す。流石に見渡しただけじゃ見つからないのは分かっていた。
目に写るのはジャングルジム・砂場・ちょっとした森林・アスレチック・倒れたタイヤくらいだ。
大きい子供から探すなら、森林からだ。
「とは言っても、僕より大きいのだから、見つけるのは簡単だ」
言いながら森林に近づくと、既に見えていた。
「大きい子供さん。見つけたよ。今日の一番は君だよ。ほらハイタッチ」
「え。僕が一番?もうちょっと隠れられると思ったのになぁ。ちぇー」
そう言いながらもハイタッチには応えていた。
「次は……まあ、片っ端から探そう」
ジャングルジムは棒だけだから、隠れることは無理だろうからサラッと流す。
砂場は……ん?何か、見えてる?
砂場に近づいた時、何か布のようなものが見えた。
「もしかして、ここか?」
道具も無いし、手を使って砂場を少し掘り進めると、布がよく見えるようになってきた。
確証めいたものを感じながら、その布を引っ張ってみると、小さい子供が出て来た。
「見つけたよ。君は二番目。じゃあハイタッチ」
「なんでみつけられたの?」
「これ。服の端っこが見えてたからね」
僕は掴んでいた服の部分をもう片方の手の指で指して言った。
「なーんだ。私の隠れるところ見てんだと思っちゃった」
そう言って小さい子供もハイタッチに応えてくれた。
後は、海外の子供と中学生ぐらいの子供だけだけど……。
「まさかタイヤに隠れてないよね」
倒れてるタイヤは二つ。大きさは人一人入れる大きさではあるけど、まさかそんな。
というより、タイヤに近づけば近づくほど話し声が聞こえる。
どうやらさっきの二人は奇跡的に同じ場所に隠れることになって、話が盛り上がったらしい。
「かくれんぼ中に話してたらバレるよ……ってあれ。一人?」
二つのタイヤを上から覗き込むと、海外の子供しか見当たらない。声は聞こえていたから、いるはずだけれど、周りを見ても見当たらない。
「Oh!good game!touch!」
海外の子供は、そう言って僕とハイタッチをした。物分かりは凄く良くて助かる。
だけど、もう一人が見当たらないので、彼の言っていた言葉を一応思い出してみる。
[深淵に潜む我を見つけることができるか]みたいなことを言っていた。
よく見ると、タイヤの内側の部分にハマっていた。
「……そこの深淵さん。見つけたので出てきてくださいよ」
そう言うと、薄暗い隙間から、目を光らせながら彼は出てきた。
「何故見つけられた」
「いや、深淵に潜むって言ってたから」
「はぁ。まぁ、良い。見つけたからにはハイタッチするのがルールだったな。……っとその前に一つ良いか」
見つけた証であるハイタッチをするモーションを止めたまま彼は質問をしようとする。
「良いよ。君が四番目だから応えあげるよ」
「そうか。今日は四人も見つけられたのか。じゃあお兄さん。君は誰が見つけてくれるんだい?そのままで鬼役を続けて、未来はあるのかい?」
僕は返事をせずに、ハイタッチせずに放置されていた手を無理に叩いた。
「ふう。今日も遊んだ遊んだ。明日はどんな子供が何人来るだろう」
いつか看板に書かれている【鬼役やります】に反論して鬼をやってくれる人を探しながら明日も遊ぶんだ。