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第一話 クソな天使とクソな転生①

「おい、これはどういう事だ()()()使()!!」

「クソ天使じゃありません!!」

「おい、これはどういう事だ! クソ!!」

「馬鹿にしていますね!? ちゃんとメズルフって呼んで下さい!!」

「やなこった」

「むぅぅぅ!!」


 俺の目の前にいるのは信じられないかもしれないが、間違いなく天使だ。そう、伝説では死んだあとにラッパを吹きながら魂を上空に運ぶ空想上の存在。俺も実物を目の前にするまで存在を肯定したことは一度もなかった。けど、実際に俺の目の前に天使がいる。


 金色の癖っ毛ショートヘアーの上には金色に輝く輪っか。背中からは地面に届きそうなほど大きな純白の羽を生やしている。ついでに言うと女か男か分からない中性的で整った顔立ちだ。完璧な天使像をそのまま体現したような存在。伝説と違う点と言えば、背丈は俺より顔一個分小さいくらいで全裸の赤ちゃんではなかった。


 クソ天使メズルフは羽を折りたたむと、優雅に空から降りてきて俺のいる部屋に窓から入ってきた。俺はその天使をふかふかのベッドで胡坐をかいて迎え入れた。このベッド、そして部屋も俺は見覚えが全くない。つまり、赤の他人の家なのだ。


 目が覚めたらここに居た。


「おい、さっきの神様の話じゃぁ、一か月前からやり直せるって話だったじゃねぇか!!」

「やり直せるだなんて一言も言っていません! リムベール様は転生の神。一か月前のあなたへ『転生』させたに過ぎません」

「どっちでも一緒だよ! 肝心なのは俺にって部分だろ!? 見ろよ、俺を!!」


 俺は腕を大きく広げて見せる。女性物のピンクのパジャマはふわふわもこもこで、これを着ているだけで罰ゲーム級に最悪なのに、緩んだ2番目のボタンの隙間からは胸の谷間が見える。俺が手を広げた瞬間に胸は大きく上下に揺れた。鏡を見ていない俺でも明らかに女性の体だと言う事だけはよくわかった。


「わ、分かってますよ! 楽さんの体に転生できなかった事は認めます。何か異常事態が起こったに違いありません」

「おい。10秒以内に理由を説明しろ! さもなくば、この胸を揉みしだく!!」

「脅しっぽい言い方してますけど、それは楽さんがしたいだけですよね!? 私関係ありませんよね!?」

「10秒経過……揉みしだく!!!」

「やめてください!! この体の人に悪いですって!!」


 俺は手のひらを明一杯広げて、たわわに実った柔らかいお宝を鷲掴みにしようとしたところでメズルフに思いっきりグーで顔面を殴られた。勢いあまってベッドから地面に転げ落ちる。


「お前!! 顔面は殴っちゃダメだろ! 女の人なんだぞ!?」

「あ、そうですね。うっかりしていました! 次からはボディーを……」

「殴るなっつーの!!」

「って言うか、他人の胸を揉むだなんてハレンチな……罰が当たりますよ!」

「既に天使様の拳がめり込んだがな!! メチャクチャだな、お前!!」


 俺は鼻の頭をさすりながらメズルフに悪態をついた。転がされた地面からゆっくりと立ち上がると、学習机の上にある鏡に目が行く。俺はいったいどんな人に『転生』してしまったのか。胸は申し分ない程大きいのは重みで分かった。腰は首れていてスタイルも良い。後は、これで顔が可愛いければ完璧だ、なんて他人事のように脳が結論を出して鏡を手にした。


 そして、俺は、叫んだ。



「い、い、祈里ぃぃぃぃぃ!?!?!」



 その鏡に映っていたのはおまじないを誘ってきた俺の彼女、信楽祈里だった。


 俺はもう一度、鏡をくまなく見た。紫がかった明るい髪に、垂れ眼気味の大きい目と長いまつげ。

 間違いなく祈里だった。

 そんな俺に、クソ天使の冷めた視線が突き刺さる。


「は? 何言ってるんですか?」

「この体の子の名前だよ!! 信楽祈里っていうんだ! 俺の彼女なんだ!!」


 鏡を指差しながらメズルフを向くとメズルフは目を細めて黙っている。

 突然黙るので俺は首を傾げた。


「……なんで黙るんだよ?」

「……嘘はいけませんよ? 楽さんにこんな可愛い彼女がいるはずないじゃないですか!」

「それ、酷くないっ!? 俺に彼女なんていないだろって、そう言う事!?」

「いえ、『こんな可愛い人』があなたの彼女な筈があり得ないって言ってるんです」

「真顔で言うな!! 傷つくだろうが!!」

「嘘つくと罰が当たりますよ!?」

「罰が当たるって……本当の事しか言ってねぇよクソ天使!!」

「あー!! またクソって言いましたね!!」

「クソだろうが! さっき俺にしようとした事忘れてないぞ!?」

「大丈夫です、私も忘れていませんから!」

「なら、どうしてそんなフレンドリーに俺に接してこれるんだよ!!神経図太過ぎだろ!!」

「いえいえ、そんな……! 褒めてもらっても何も出ませんよ!」

「褒めてねぇよ!? むしろ怒ってるよ!」

「えー……そんなぁ」

「いや、普通の人ならもっと怒ってるって!!」



「俺、さっき、お前の所為で地獄に落とされかけたんだからな!?」



 そう。もとはと言えばこのクソ天使の所為でこんな事態になったのだ。


 時は遡って俺が死んだ直後へ戻る……。

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