プロローグ とある神社とおまじない①
あけましておめでとうございます!
新連載!2021年1月1日よりスタートです(>ヮ<*
よろしくお願いいたします♪
「ねぇ! 楽、これ見てよ!」
そう言って、スマホを嬉しそうに渡してきたのは信楽 祈里。
現在進行形で俺と付き合っている彼女だ。
「あぁ? なんだよ」
目を輝かせて手渡してきたピンクのスマホを俺は受け取ると、その画面をじっとみる。
そこには、誰もが知っているSNSのページが画面いっぱいに広がっていた。
「何々? 恋愛成就のおまじない? なんだこりゃ」
♡やら☆やらで飾られた女子好みの可愛らしいページには、とある神社の写真とおまじないの内容が書かれている。俺は記事を読む気にすらなれずに画面から目を離す。正面には相変わらず期待のまなざしでこちらを見ている祈里がいた。理由は薄々感づいている。
「ねぇ、これ一緒にやろうよ!!」
やっぱり。そう内心でため息をついた。どうして女子って生き物は占いだのおまじないだのが好きなのか、誰か俺に説明してほしいもんだ。
「いやだよ。めんどくせぇ」
軽くあしらうように手をひらひらさせてそう言うと、先ほどまでの輝かしい目は一瞬のうちに怒りの色が帯びる。あ、まずい。これは機嫌を損ねたかもしれない。そう思っていると案の定、唇を尖らせた祈里が俺の腕を引っ張った。
「お願い―。付き合ってよ! 私ひとりじゃできないんだもん」
「なんで、おまじないなんてしたがるんだよ?」
ちなみに言うと、祈里は普段からおまじないや占いを信じている乙女ではない。けれども、なぜか今回ばかりは強情だった。その事に俺は不信感を抱く。
「だって、人生でたった一度の修学旅行だよ?」
「は?」
その言葉に俺は首を傾げた。ピンクのスマホが表示してくれている、先ほどまで全く興味がなかった占いの内容に目を通す。そこに書いてあったのは……
「手順1:陸日神社で朝日を二人で見る。手順2:二人で同時に『一生この愛が続きますように』と願う」
「そうそう!! 一緒に朝日を見るの! どうかな?」
占いの内容をようやく読んでもらえたからか、祈里は嬉しそうにそう言った。対して俺の顔はそんなに明るいものではない。これは即ち、修学旅行中にホテルを抜け出して二人で神社に行きたいと言っているに他ならない。
「……この神社、修学旅行先のホテルの近くなのか?」
「そうなの! ここの神様って恋愛成就専門なんだよ? 絶対に願い叶えてくれると思うんだよね!」
どこからその自信は来るのだろうか。と問いただしたい気持ちをぐっと我慢する。理由は明白。祈里がスマホごと俺の手を握ってきたからだ。完全に上目遣い。このアングルはとてもずるい。俺はたじたじになる。いつまででも見ていたくなる可愛さだった。
「ねぇ、お願い。一緒に、行こう?」
「……わかったよ! しょうがねぇなぁ」
俺はこの時、この上目遣いに見事にやられた。根負けしたかのような態度だが、祈里とこういうイベントも悪くないとさえ思い始めていた。
返事を聞いた祈里は輝かしい程の笑顔を見せてくれる。たったこれだけの事でこれだけ喜んでくれるならおまじないの一つや二つ、付き合ってやるのも良いだろう。
「楽、ありがとう!! 大好き!!」
そう言うと祈里は俺に抱き着いてきた。その柔らかい感触に心臓をどきどきさせながら、俺は祈里を抱き返す。中学3年生最後の思い出作りはきっと最高のものになるに違いない。
こうして、俺と祈里は修学旅行の最終日ホテルを抜け出す計画を始めるのだった。