魔界
30話を投稿したつもりが、間違って31話を先に投稿しておりました。申し訳ございません。m(_ _)m現在は割り込み投稿で元に戻しております。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
心より謝罪申し上げます。
念のため同文をあとがきの方にも書かせて頂いております。
「えっと、バーバラさん? あなたが魔界に案内してくれるんですか?」
「ええ、ええ。姫殿下よりあなたをお連れするよう言いつかっております、ヒヒヒッ」
あまりに不気味な顔で笑う婆さんの顔面に微苦笑し、一歩引いてしまった
そんな俺を尻目に、隣の明智が何やら騒ぎ始めた。
「ままま、魔界っ!? ちょっとこれはどういうことでござるかユーリ殿っ! ユーリ殿はそれがしの歓迎会を開いてくれるのではござらんのか……? まさかっ!? それがしを騙したのではっ!?」
真っ赤なつけっ鼻を付けた明智が糞を気張るように俺を一睨する。
「誰もお前の歓迎会をするなんて言ってないだろ? 騙したなんて人聞き悪いことを言うんじゃないよ」
「では、説明するでござるよ! 今この婆さんが言った魔界とは何のことでござるか!? さぁ説明するでござるっ!!」
さすがに身の危険を感じ取ったのか、明智はバーバラと名乗った婆さんを指差し詰め寄ってくる。
そんな明智に空笑いを浮かべながらなんとかやり過ごそうそうとしていると、バーバラが徐に明智へと近付き、差し向ける人差し指をあらぬ方向へと曲げた。
「ギヤャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
明智は突然人差し指をへし折られ、その場で転げ回り身悶えている。
刹那の出来事に呆気に取られた俺だったが、さすがに意味不明に仲間の指をへし折られて黙ってる訳にもいかない。
「なにすんだテメェー!?」
俺はダンッと右足を床に踏みつけて、バーバラを威嚇するように声を荒らげた。
「これはこれはすみません。指を差されるのが嫌いなものでついつい、ええ、ええ。申し訳ありませんね、ヒヒヒッ」
なっ、ななな、なんてババアだ!
ただ指を差したと言うだけでいきなり、それも無言で人の指をへし折るのか!?
危険すぎるだろ、このババア!!
悪びれた様子なくこくこくと頷くババアをよそ目に、俺はフィーネアへと視線を向けた。
「フィーネア! すぐに明智に癒しの炎だ!」
「かしこまりましたユーリ」
痛みで悶絶する明智はフィーネアの癒しの炎でなんとか冷静になったのだが、脂汗を流しながら片膝を突くその姿は怒り狂っている。
今にもババアに斬りかかりそうな勢いだ。
ここでダンジョン管理組合の者と揉める訳にもいかないので、俺は明智を宥めることにした。
「よせっ、明智! このババアには俺の方からキツく言っておくから、な?」
「ならちゃんと説明するでござるよユーリ殿っ! このババアはなんなんでござるか! それに魔界って何のことでござる!」
そっと肩に手を置く俺を見やりながら、明智が鼻息荒くまくし立ててくる。
仕方ない。
こうなった以上、明智にしっかり説明した上で付いてきてもらうしかないな。
俺はこうなった経緯を説明して、ペリーが持ってきた手紙を明智に見せた。
明智は今にも手紙を破いてしまいそうなほど指先に力を込めている。
その表情も一層険しいものに変わりつつある。
「冗談ではござらんっ!! それがしはここで失礼するでござるよ! 魔界とか言う物騒なところに行ってしまっては、命が幾つあっても足りないでござるよ! それにこれは裁判通知みたいなもんではござらんか! のこのここのババアに付いて行ってしまえば間違いなく捕まるでござるよ! 最悪処刑されるでござるっ!! 道連れなんて勘弁でござる」
手紙を俺の胸元へと押し付けるように突っ返して来た。
そのまま踵を返してこの場を後にしようとしている。
ま、明智の言うことも最もだと俺も思う。
仮に俺が明智の立場でも同じ言動を取っただろう。
だが、だからと言って逃がしはしない。
魔界とか言う訳のわからん場所に行くのに、仲間は多い方が心強い。
それが例えクソの役にも立たなそうな明智であっても、いないよりはマシなのだから。
なので俺は立ち去ろうとする明智の肩を掴み、あるものを差し出した。
「そうか……悪かったよ。フィーネアと二人だと少し不安だったから、お前に付いてきてもらおうと思ったのだが、そこまで言うならお前は残るといい。あっ! でもその前に喉が渇いたろ? 突然指を折られて汗を欠いたんだ。これを飲むといい」
液体の入った小瓶を俺から奪い取ると、短い舌打ちをしてからそれを口元に押し付けた。
「ふんっ! こんなジュースで機嫌が治るそれがしではござらんぞ! 死ぬほど痛かったんでござるからな」
と、言いつつも。
ちゃっかり全部飲み干した明智は本当に意地汚い奴だ。
しかし、飲んだのならまあいい。
俺は糸目で明智の顔を見てにまっと笑った。
「な、なんでござるか? そんなにニヤニヤ笑って。まさか金を払えと言うつもりじゃないでござろうな? 言っておくが金ならないでござるよ」
「しっかり全部飲み干したようです。ユーリ」
「へっ?」
フィーネアは明智の顔を見やり俺へと向けた。
紅髪のポニーテールを揺らしながら宝石のような紅瞳で真っ直ぐに俺を見据えてコクリと頷く。
そんな俺とフィーネアを交互に見てゴクリと喉を鳴らす明智は、何かに気づいたようだ。
「まっ、ままま、まさか……これ!? けったいな道具の一種ではなかろうな!」
「気にするな明智。体に害は一切ない。ただしばらくの間、俺の半径5メートル以内からは行動できなくなると言うだけだ」
「えっ……!?」
息を呑み固まってしまった明智が、次の瞬間勢い良く走り出したが、見えない壁に衝突して横転した。
明智は勢い良く真っ赤な鼻を透明な壁に打ち付けたらしく、拳サイズほどの鼻を押さえなが転げている。
フィーネアは哀れと言った様子で首を左右に振って嘆息した。
「諦めろ明智。お前は俺に付いてくるしかないんだ」
「人でなしっ! 最低でござるっ!! それがしをハメたでござるなっ!!」
俺を一瞥して悔しがりながら床を何度も叩く明智。
「友達を見捨てようとするからだ。お前が得体の知れない魔界を恐るように、俺だって怖いんだ。共に魔界に乗り込もうじゃないか、明智!」
「うっきゃぁぁあああああああああああああああああっ!!」
明智は真っ赤な顔で奇声を上げている。
それはまるで日光の猿のようだ。
だが、これで準備は整った。
俺はバーバラへと向き直り、ダンジョン組合まで案内するように言い。
フィーネアと共に鉄扉をくぐり抜けた。
明智は透明な壁に押されるように背中から扉をくぐる。
扉をくぐり抜けた先に広がっていたのは巨大な街だ。
まるで先日まで滞在していた王都を彷彿させるような街。
だが、違う点がいくつかある。
まず最初に目に付いたのは街の中心付近に位置すると思われる巨大な黒い建物。
例えるなら大神殿のような建築物だ。
だけど、その建物が醸し出す空気は遠目から見てもわかるほど禍々しい。
邪教徒が大魔王にでも祈りを捧げる為に建てたのでは? と疑いたくなるほど。
さらに、街から北西の方角に巨大な塔が聳え立っている。
暗雲立ち込める不穏な空に、どこまで伸びているのかと見上げてしまうほど極大な建物。
一体何をする為の塔なのだろうか?
そして、決定的な違いは行き交う者たちだ。
多種多様な魔物――魔族と呼ぶべきなのだろう。その魔族が視界一面に写り込んでくる。
もしもバーバラとか言うババアが居なければ、安全が約束されていなければ、俺はチビっていただろう。
現に明智の奴はさっきから『ぎゃあぎゃあ』と喚き散らかしている。
何度も走って逃げ出そうとしているが、透明な壁が立ちはだかり出れない。
ならばと透明な壁を懸命に叩いているが、もちろん出られるはずがない。
これはミスフォーチュンで買った便利道具なのだから……。
凄いところに来ちまったなと肩を竦めてフィーネアに顔を向けると、
「フィーネアッ!? おい、どうした!?」
フィーネアは酷い目眩と頭痛に襲われたみたいで、頭に手をやり足元がフラついている。
俺は咄嗟にフィーネアを抱きかかえて、フィーネアの顔を覗き込んだ。
尋常じゃない汗だ。それに呼吸も酷く乱れている。
こんなフィーネアを見るのは初めてだった。
俺がどうしたらいいのかわからず不安気な表情を浮かべていると、フィーネアが辛そうに微笑んだ。
「申し訳、ありません……ユーリ」
「一体どうしたんだ? どこか具合が悪いのか? なんで黙ってたんだ!?」
フィーネアの弱々しい声音が耳朶を打ち、この空のように俺の心まで暗雲に覆われてしまう。
それに、初めて抱きかかえたフィーネアはとてもか細くて小さい。
俺はこんな女の子に守ってもらっていたのか……本当に情けない。
本来なら俺が守らなくちゃいけなかったのに。
こんな時まで俺を気遣ってくれるのか、フィーネアの冷たい指先が頬に触れる。
きっと俺の表情が強張り、暗く落ちているのを気にかけてくれているんだろう。
俺はフィーネアの小さな手をギュッと力強く握り締めた。
フィーネアは優しく微笑んでいる。
「もういい、無理をするな。体調が悪いならマスタールームに戻って休んでいるんだ」
「大丈夫……です。ただこの地に来た瞬間、少しクラクラしちゃっただけです。申し訳ありません。もう一人で立てますので」
そう言い、フィーネアが俺の腕から離れていく。
一人で立ってはいるものの、やはり少し辛そうだな。
フィーネアのことを心配そうに見つめる俺の傍らへと、バーバラが音も無く忍び寄ってきた。
「びっ、びっくりしたな! 脅かすなよ。ただでさえあんたの顔は不気味なんだから……」
「ええ、ええ。申し訳ありません。それよりもそちらのお嬢さんはドールなのでは?」
「ああ、そうだ……が」
なんで知ってんだ?
フィーネアがドールだということはヴァッサーゴを除けば俺しか知らないはずだ。
それなのに、バーバラは確かに今ドールと口にした。
なぜだ……なぜ知っている?
バーバラは目を細めてフィーネアを見ている。
そして納得したように頷いた。
「リヤンポイントはまだ100%に達していないのでは? ヒヒヒッ」
「は……?」
こいつはなんでリヤンポイントのことまで知っているんだ?
リヤンポイント――それはフィーネアと俺との絆を示した数値。
その数値が100%になったとき、フィーネアが生前愛用していた武具が手に入るとヴァッサーゴは言っていたが、なんでそれをバーバラが知っているんだよ。
バーバラの口から出た『ドール』と『リヤンポイント』と言う言葉に、俺は半口を開けたまま固まってしまった。
するとバーバラが続ける。
「ドールは生前の記憶を失っているが、リヤンポイントを100%にすることで、記憶とその記憶の中から一つだけ生前愛用していたものが具現化される。ヒヒヒッ。つまり、あれは生前の記憶が何らかの拍子に溢れ出しそうになり、それを呪いによって妨げられたことによるものですね。ええ、ええ」
記憶……ないのか?
そんなの初耳だぞ!
「つーか! なんでお前がそんなことを知っているんだよ!」
バーバラは鋭い眼光を俺に向けて、すぐに黒い神殿へと向けた。
「あそこにあなたを待っておられる方がおられます。おそらく審査会は開かれないでしょう。ええ、ええ」
「開かれない……なんで? その為に来たんじゃないのか?」
「ええ、ええ。おっしゃる通りです。しかし、状況が少しばかり変わったのです。ヒヒヒッ。あのお嬢さんを姫殿下にお見せすれば、納得されるでしょう。ヒヒヒッ」
どういうことだ?
さっぱりわからん。
今回の件とフィーネアが関係あるのか?
バーバラの口ぶりだとあそこに行けばわかるらしいが。
フラフラのフィーネアを連れて……大丈夫だろうか。
心配だ。
俺がフィーネアに大丈夫かと問いかけると、「はい」といつも通り返事をしてくれるが、やはり少し辛そうだ。
とにかくさっさと用事を済ませてフィーネアを休ませよう。
俺たちは街を睥睨するような大神殿へと足を運んだ。
30話を投稿したつもりが、間違って31話を先に投稿しておりました。申し訳ございません。m(_ _)m
現在は割り込み投稿で元に戻しております。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
心より謝罪申し上げます。




