不穏な空気
二試合が終わり、琉海の試合が今日の最後の試合となる。
『本日、最後の試合はこの二人だ』
司会者のアナウンスで琉海とウルバ・ダズレイが入場する。
舞台に立ち、対面する二人。
琉海から見た最初のウルバの印象は暗いイメージだった。
闇を纏っているかのような雰囲気を醸し出すウルバに、琉海は眉間に皺を寄せてしまう。
あまり近づきたくないという感情が湧いてしまう。
「では、構えてください」
琉海は無手。
ウルバは短剣を逆手に持って構える。
そして――
「はじめッ!」
審判の合図で試合が始まる。
しかし、琉海とウルバは動かなかった。
琉海は相手の出方を見るために先手を譲ったのだが、あちらも動こうとしない。
観客もいきなりの膠着状態にざわつく。
ウルバはそんなことは気にしていないようで、琉海から視線を外さない。
明らかに誘っていると琉海は察する。
だが、これでは埒が明かないと判断し、琉海は自分から動くことにした。
(動かないなら、こちらから行く)
琉海は一瞬で間合いをゼロにした。
間近で見たウルバは目を見開く。
さすがの速さにウルバも驚いたようだ。
だが、そこは殺しのプロ。
瞬時に冷静に戻り、短剣を振ってくる。
距離が近く、短剣のため少し動かせば、琉海の腹に刺さる。
狙い違わず、刺さるかと思われたが、琉海がウルバの腕を掴んで防いだ。
琉海の手を解こうと引っ張るがびくともしない。
力では無理と判断したウルバは自分の右腕を諦め、左足で上段に蹴りを放つ。
靴のつま先がきらりと光った。
琉海はすぐさまウルバの腕を離し、距離を開く。
(いまの蹴り。頭を狙ってきた?)
光った刃に気づいたから避けられたが、明らかに殺しにきていた。
避けなければ蹴りが頭を直撃し、刃が頭に刺さっていただろう。
ウルバは掴まれていた右腕を軽く動かして感触を確かめている。
今の攻防で琉海は接近するのに慎重になった。




