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力量

 イブラスは舞台を下りて、廊下を歩いていると、主人であるリオナが待っていた。


「こんなところでどうされたんですか? いま、行こうかと思っていたんですよ」


「なに負けてるのよ。準決勝でティニアのところの彼と戦わせたかったのに!」


 リオナは腕を組んで怒っていた。


「いえ、準決勝が明日とはいえ、この試合でお互い本気で戦っていたら、明日は勝つどころかあっけなく負けてしまいます」


「そんなに強いの? あの元傭兵」


 リオナは目を細くして言う。

 元傭兵とは、イブラスがさっきまで戦っていたイロフのことだろう。


「はい。有名になるだけの力は持っていると思いますよ」


「ふーん、あなたが言うんだったら、そうなんでしょうね」


「理解いただけたようで良かったです」


 ほっとするイブラスだったが――


「でも、ただ負けてきたわけじゃないんでしょ?」


 リオナの言葉の語気が強くなる。

 単に諦めて負けてきただけなら許さないと目が言っていた。


「もちろんです。あの者には、明日の準々決勝で万全の状態で戦ってもらうつもりですから。そうすれば、大体はわかると思いますよ。少なくとも、私より強いかどうかぐらいは」


「でも彼が次の試合を勝てないと意味ないでしょ」


「私の見解では、次の試合は彼が勝ちます。ディバル公爵家の暗殺業を務める者がルールのある試合で勝つとなると、かなりの力量が必要ですからね」


「レイモンドがさっき自信満々で廊下を歩いていたけど、本当に大丈夫なの?」


「ルールの存在しない奇襲あり殺しありの場所ならわかりませんが、この試合では、難しいですよ。特に相手を殺してはいけない部分が一番動きづらくさせていると思います。」


 リオナはイブラスの説得にとりあえず納得したようで、


「そう、じゃあ、楽しみにしてるわよ。一回予想をはずしているんだから、次はずしたら罰ゲームだからね」


「ば、罰ゲームですか……」


「そうよ。ほら、行くわよ」


 リオナはどんどん先に行ってしまう。

 イブラスはその後ろ姿を見ながら呟く。


「何をやらされるんだ……?」


 いまになって試合に勝っとけばよかったかもと思ってしまう。

 しかし、時間が巻き戻るわけでもないため、不本意ながらイブラスは心中で琉海を応援することになった。


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