別人?
「勝者ルイ」
審判がルイの勝ちを宣告する。
トウカは試合が決しても琉海を睨んでいる。
組み伏せている状態では話ができないため、琉海は力を緩め解放する。
しかし、手を離した瞬間、トウカは立ち上がり逃げ出す。
「ちょ、おい! 刀香!」
琉海の呼びかけにも応じず、トウカは舞台から走り去った。
予想外の対応に琉海は首を傾げた。
「人違いだったのか?」
別人だとは思えないほど似ていた剣術。
似たような剣術がこの世界でも生み出されたということなのだろうか。
そうだとしても、別人のトウカとあの剣術が結び付き、あの練度で習得している可能性はだいぶ低い。
そう考えると、やっぱり彼女は木更刀香だったのだろうか。
様々な憶測が琉海の頭に浮かび上がる。
だが、試合もまだ残っている。
さすがに不戦敗で負ければ、スタント家にも迷惑をかけかねない。
逃げられてしまったが、トウカは侯爵家の人間のようだし、会おうと思えばいつでも会えるだろうと琉海は考え、深追いをすることはしなかった。
(でも、俺に気づかなかったのは、どうしてだろう)
あの飛行機事故からこの世界に飛ばされてまだ日が浅い琉海には外見の変化はほとんどない。
数年経っていて大人になっていたらまだしも、まだ変化の少ない琉海のことを忘れている可能性は低いと思われた。
それが幼馴染ならなおさらだ。
(やっぱり人違いだったのだろうか)
琉海は疑問を抱えながらも、舞台から下りた。




