本選1回戦
翌日。
本選が開幕する。
本選出場者は皆、貴族たちに注目されている。
あわよくば、勧誘して自分の従者にできればさらに箔が付くからだ。
だが、本選に出てくる者たちはどこかの貴族に忠誠を誓っていることが多い。
だから、娘の結婚相手の候補を選ぶことを主目的にしている者もいる。
優勝すれば、選り取り見取りだろう。
去年の優勝者であるグランゾアもそこで名を売り、婚姻の話は数えきれないほど来ている。
それほど、王国内に影響を与えることができる数多の数からのし上がってきた12人が激突する。
様々な陰謀が渦巻く本選が始まり、着々と勝者が決まっていく。
ホルス騎士団に所属する《剣王》グランゾア、《知の騎士》イロフ、ディバル公爵家代表のウルバ・ダズレイ、そしてイブラスも一回戦を勝利する。
本選一回戦が続々と消化され、ついに琉海の番になる。
『さあ、やってきました。予選では去年の準優勝者を倒し、本選出場を勝ち取ったルイの入場だ!』
司会者のアナウンスで琉海が入場する。
本戦出場を達成したことで、スタント公爵家の没落はなくなり、琉海も頃合いを見て負けてもいいのだが、そうする気はなかった。
この大会は琉海にとって戦闘を学ぶ学舎となりつつあった。
予選の決勝で戦ったシェイカーが去年は準優勝。
つまり、シェイカーより強い奴がいるということだ。
琉海の知っている戦闘方法は元の世界で学んだもののみ。
元々は戦闘技術だったものとはいえ、所詮競技となり果てた技術。
戦場を知らない技術ばかりでは本物の戦闘術には勝てない。
ルイは技術で対抗できないほどの力を持っているため、負ける気はしていなかった。
しかし、それは自分と同じ存在に会っていないからだ。
この世界で生き、マナを琉海と同等に扱うことのできる者と戦うことになった時、本物の戦闘術を知らない琉海が勝てるだろうか。
おそらく否だろう。
(知っていて損はしないしな)
琉海はそう思いつつ、舞台に上がっていく。
琉海の姿が見えたことで観客たちも歓声を上げる。
予選を無傷で勝ち上がり、勝てないだろうと言われたシェイカーとの試合も無傷で勝った琉海には平民の中からファンができつつあった。
また、王侯貴族からも値踏みされる視線を向けられる。
王からも注目されていることは誰も知らないだろう。
そして、琉海の対戦相手も舞台に上がってくる。
『対戦相手はなんと女性の本選出場者。騎士武闘大会で女性が本選に出場したのは何年ぶりだろうか! シュライト侯爵家代表のトウカ・シュライトだ!』
長い茶髪を後ろで結んで尻尾のような髪が風でなびく。
眉間に皺を寄せて琉海を睨んでくる女性。
見た目から20代前半ぐらいの女性だろう。
殺気のこもった視線を向けてくる。
そんな視線を向けられると琉海も何かしただろうかと思ってしまう。
この女性との面識もない。
知らないところで恨みを買っていたらわからないがルイに見覚えはなかった。
そうしていると、トウカの口から聞こえてくる。
「負けない……絶対負けない……勝つんだ……ぜったい……」
ぶつぶつと呟いている。
まるで何かに囚われているかのような切羽詰まった表情にも見えた。
そんなこんなで司会者が声を発する。
『二人とも今大会が初出場。初出場にして本戦まで上がってきた強者だ!本戦二回戦に進めるのはどちらか!』
「では、構えてください」
審判に言われ、琉海は無手で構える。
トウカという女性は刀を鞘から抜き構えた。
「――――ッ!?」
琉海はその姿を見て目を見開いた。




