敗者
王宮では、ホルス騎士団の隊長たち三人が集まっていた。
その中で1人だけが重い空気を放っていた。
琉海に負けてしまったシェイカーだ。
ソファにグランゾアとイロフが座り、その対面にはシェイカーが俯いて座している。
「負けて落ち込んでいるのか?」
イロフは眼鏡を指で押し上げながら、シェイカーに言う。
「…………」
「敗者は何も言えないか」
反応を示さないシェイカーにイロフはため息を吐く。
普段のシェイカーなら、調子のいいことを一つ二つ言ってくるのだが、そんな気分でもないようだ。
勝って当然と思っていた予選で敗退してしまったのだ。
理解はできるが、何か喋れと思うイロフ。
「そこまで、言わなくてもいいと思うがな」
グランゾアはイロフを窘める。
「団長は甘いんですよ。シェイカーが予選を落ちたことでホルス騎士団の影響力も下がってしまいます。これから横槍を入れてくる貴族も増えてきますよ」
「結果がすべてだ。それは仕方がないだろう。だが、勝者に意見できるほど、肝の据わった貴族も少ない。それも頂点に立つ者が率いる騎士団ならなおさらだ」
その言葉でグランゾアが言いたいことはイロフに伝わった。
グランゾアかイロフのどちらかが優勝してしまえば、コバエのように小言を言ってくる貴族たちは黙るだろう。
いや、王が意見を許すわけがない。
それだけ勝者に与える恩恵はでかい。
「だが、シェイカー。お前が負けた相手がどんな奴だったのかは聞いておきたい」
グランゾアたちはシェイカーと琉海の戦いは見ていなかった。
勝者が決まっている試合を見ても時間の無駄だと思ったからだ。
だが、予想に反して勝者は琉海だった。
グランゾアの問いに一瞬だけシェイカーの拳が強く握られる。
そして、意を決したかのように口を開いた。
「最初は俺が押していた。いつも通りの展開だった。だが、途中でいきなりあいつは俺と同じようなスタイルで攻撃してきた」
「ほう、スピード型で手数重視か」
グランゾアは興味を持つ。
イロフも興味なさそうに振舞いながらも、聞き耳は立てていた。
「ああ、おれと同じ戦い方だと思った。だけど、あれは違った」
「…………?」
「あれは俺だった。いや、俺を上回る俺だった」
シェイカーが何を言っているのか二人とも理解できなかった。
「どういうことだ?」
「グランゾアの旦那。奴はもしかしたら、技術を盗めるのかもしれない」
シェイカーが顔を上げ、グランゾアに真剣な顔を向ける。
その目から、ただの妄想ではないのだろうとグランゾアは思う。
シェイカーと戦った相手。
ルイ。
シェイカーの言っていることが本当であるのなら、厄介な相手かもしれないとグランゾアは心の中で思った。




