表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/195

村の住人

 村の周りには石の壁ができているが、琉海の腰ぐらいの高さだ。

 壁として意味を成しているのか疑問だ。

 琉海とエアリスは、その石の壁の外周を回り、入り口と思われる場所から入った。

 入るとすぐ、村の住人から視線を向けられる。


「えっと……道に迷いまして……」


 痛い視線から逃げるように、琉海は小声で聞いてみる。

 村人たちからの敵意の視線が痛い。

 あまり歓迎されている雰囲気ではなさそうだ。

 そんな雰囲気の中、杖を突いた一人の老婆が琉海の前に出てくる。


「なんじゃ、お前さん。こんな田舎の村に何のようじゃ」

「あの……道に迷いまして……」


 いい言い訳が思いつかず、もう一度言ってみる。

 隣ではエアリスがため息を吐いて、やれやれと首を左右に振っているのが視界に入った。

 エアリスに言いたいことはあるが、村の人たちには見えていないのを思い出し、ぐっと我慢する。


「ほう、道に迷ったか。それで、どこから来たのじゃ?」


 開いているのかつぶっているのかわからない細い目が微かに開かれて、鋭い視線を向けてくる。

 琉海はその眼力に負けず、ゆっくり指をさした。


「あっちの森から来ました」

「ん? それは誠か?」


 食い気味に言ってくる老人に琉海は頷く。


「タルア。祠の様子を見て来るのじゃ!」

「は、はい。わかりました」


 老婆に言われ、タルアと呼ばれた若い男は、琉海が示した方へ走って行ってしまった。


「それで、この少年はどういたしますか?」


 三十代半ばほどの男が老婆の近くに寄り、話しかける。


「ふむ、この少年が真実を言っている可能性もある。とりあえず、儂の家に招こう」

「村長の家にですか?」


 男の会話から、この老婆は村長のようだ。


「別に問題なかろう。嘘だったとしても、悪さをするようには見えないからの」


 老婆はそう言うと、琉海に顎でこっちに来いと示す。

 周りにいた村人たちはため息を吐いて、散らばっていく。


「あの、村長さん。俺はどうなるんですか?」

「別にどうもしないさ。ただ、お前さんの言っていたことが本当なのかを確認するだけさね。付いてきな」


 老婆は反転して村の中心あたりに向かっていく。


「面倒なことにならなければいいんだけどな……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ