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悪戯心
「何やっているんですか」
イブラスはリオナの後を歩きながら聞く。
「ちょっと勧誘しただけじゃない」
イブラスに咎められてリオナがむすっとする。
「はあ……」
イブラスはやれやれと首を左右に振る。
その反応を背中で感じたリオナ。
「なに、ため息吐いているのよ。あなたが彼は本選に上がれないって言ったんじゃない。蓋を開けてみれば、余裕の圧勝だったけど」
「そ、それは……」
「イブラスが見誤るなんて珍しいわよね。それ以上に彼がすごいってことなんでしょうけど。イブラスも決勝を勝ちなさいよ。じゃなきゃ、ティニアに馬鹿にされるんだから」
「はい」
イブラスは真剣な表情になって返事をする。
「それにしても、ティニアの反応は面白かったわね。あれが恋っていうのかしら」
「私も経験がないのでわかりませんが、客観的に見てそうかと」
「ふーん、そうなんだ」
リオナが一瞬妖艶な顔をする。
イブラスからはその表情が見えることはなかったが、声のトーンで何かよからぬことを考えているのではないかと危惧してしまう。
「何をお考えで?」
「別に今は何も考えていないわよ。今はね」
いたずらを考える子供のように無邪気に言うリオナ。
その言葉がイブラスにとって一番心配になる言葉だということをリオナは知らない。




