勝者
審判の合図で先手を取ったのは、シェイカーだった。
身体強化魔法の練度が高いのか、動きが素早い。
さっき戦った魔薬漬けの男と遜色ない速さだった。
「かかって来ないと斬るよ」
一気に距離を詰めるとシェイカーは短剣を振り上げる。
琉海は紙一重でそれを躱した。
「俺の一撃目を躱す奴が予選にいるなんてな」
琉海がシェイカーの一撃を躱すと、笑みを作った。
そこからはシェイカーの一方的な攻撃が続いた。
小回りの利く短剣で手数の多い連撃を放ってくる。
だが、そのすべてを琉海は避けていった。
『な、なんという速さ! 神速とはこのことか! だが、それを躱し続けるルイ選手もすごい!』
司会者の声に呼応するかのように観客も盛り上がる。
目に留まらぬ速さで動くシェイカー。
その攻撃をギリギリで躱す琉海。
「チッ! ちょこまかと……」
シェイカーは両手の剣だけでなく、蹴りも混ぜて手数を増やしてきた。
だが、増やしたところで、琉海を捉えることはできなかった。
それだけ、機動力に差があるのだ。
琉海はシェイカーに多くの技を引き出させるためにギリギリで躱していく。
琉海はシェイカーの一挙手一投足を観察し続けた。
「まだ避けるか……」
剣の左右の攻撃に蹴りで下方から腹を狙ってくる。
琉海は剣を躱し、蹴りはいなした。
四方八方からの攻撃をものともしない。
「はあはあ……」
避け続けていると、次第にシェイカーの息が上がってくる。
それに比例して、動きにもキレが無くなってきた。
「もう、限界か」
琉海はこれ以上観察しても得られるものはないと悟り、後ろに大きく飛んでシェイカーと距離を空けた。
いま見た動きを頭の中で再生する。
そして、その動きに重ねるように自分をイメージする。
「よし、問題なさそうだな」
琉海は構えを取った。
「…………ッ!」
その構えを見て、シェイカーの目が見開く。
「短剣だと殺してしまうから、手刀で代用するか」
琉海はそう呟き、序盤のシェイカーのように一気に距離を詰めた。
「なッ!」
一瞬で間合いを消した琉海に、シェイカーは一歩後ずさりしてしまう。
そこからは、シェイカーの動きを完全に模倣した琉海の連撃が襲う。
シェイカーに躱すことはできず、防御に回るしかなかった。
だが、防御に回っても防げているのは、半分以下。
あまりの手数の多さと速さに翻弄されていた。
そして――
琉海の手刀を両手で塞いだ瞬間、シェイカーの頭を回し蹴りが直撃。
琉海の蹴りはシェイカーの意識を刈り取った。
圧倒的差を見せ付けられて、シェイカーは地に伏す。
『な、なんと! 攻勢にでていたシェイカー隊長が一瞬で防戦一方! そのまま撃沈された!』
司会者の驚きを表すかのように観客も騒然としていた。
すぐさま確認する審判。
「しょ、勝者、ルイ」
予想外の結果に審判もどもってしまった。
『こ、これはまさか過ぎる結果です。去年の準優勝者が予選敗退!』
琉海は審判のジャッジを聞くと速やかに舞台から退場した。




