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到着

『な、なんという登場の仕方か! ルイ選手が降ってきたぞ! しかも、抱えているのはスタント公爵家の令嬢、ティニア様か!』


 派手な登場に司会者の声に熱が入る。


「ティニア様、下ろしますね」


「は、はい……」


 琉海はゆっくりとティニアを下ろし、審判と対戦相手のシェイカーに視線を向けた。


「えっと……間に合いましたか?」


 家屋の屋根の上を駆け、コロシアムの中を通っていては時間をロスすると判断した琉海は、コロシアムの壁を力任せに走り抜け、この舞台に飛び降りた。


「ギリギリ間に合っていますよ」


 審判の言葉に琉海は大きく息を吐いた。


「よかったです。ティニア様、間に合ったみたいなので、ティニア様は観客席で待っていてください」


 ティニアもほっとしたように息を吐く。


「わかったわ。気を付けてね」


「はい。気を付けます」


 琉海が頷くのを見て、ティニアは舞台から退場した。


「やれやれ、時間ギリギリとは待たせてくれるね」


 シェイカーは手遊び感覚で一本の短剣をくるくると回していた。


「すみません、来る途中で邪魔が入ったもので、お待たせしました」


 殊勝な態度を取る琉海にシェイカーは目を細くする。

 馬鹿じゃなければ、わかることだ。

 あの派手な登場は、目を引き付けるだろう。

 だが、シェイカーが目を付けたのは、それを可能とする能力のほうだった。

 振ってきた位置からすると、会場の外壁の上から飛び降りてきたのだろう。

 それをできる奴は王国に何人いるだろうか。

 シェイカーは琉海に対する警戒心は強くした。

 予選で負けるわけにはいかない。

 昨日のグランゾアたちとの会話を思い出すシェイカー。

 無様に負けたら、居場所はなくなる。

 短剣を弄び、余裕の態度を見せつつも、内心では琉海との戦闘をいくつも想像し、シミュレーションを繰り返していた。


「大丈夫のようなら、試合を始めます。位置についてください」


 審判の指示に従い、シェイカーと琉海は一定の間隔を空け、スタートの位置に立った。


『お、早くも始まるようです。待ちに待った皆さん。ついに、《狂喜の騎士》の戦いが見れます』


 観客たちも舞台に立つ二人を注視していた。

 予選とはいえ、琉海がこれまで戦ってきた試合を見てきた者や、琉海の強さを噂で聞いている人も少なくない。

 その者たちからすると、この試合は予選決勝の中で一番注目されている試合なのかもしれない。

 まあ、貴族の方が注目している数は多いだろう。


『さあ、ではお待ちかねのオッズを見てみよう。お、現時点では五対一〇でシェイカー隊長が人気となっていますね。決勝戦ですから、この数値は普通だと思いますが、無名のルイ選手を推す人も多いようですね』


 司会者は予想よりも数値の開きがなかったからか、言葉に勢いがなかった。


「それでは、準備はいいですか?」


 審判が二人に聞く。

 琉海は無手で構える。

 シェイカーは二振りの短剣を両手に持って構えた。


「はっ、噂で聞いていたが、本当に素手で戦う気か」


「はい」


「なるほど、素手のほうがやりやすいということか」


 シェイカーは何を悟ったのか、そんな風に言う。

 琉海もシェイカーの構えには興味があった。

 今まで相対してきた相手に二刀流はいなかった。

 シェイカーの構えからそれなりの強者であることはわかる。

 琉海も剣を使えるが、これは剣術の道場を営んでいた幼馴染の父親の動きを模倣したものにすぎない。

 そして、琉海の戦闘術は、日本の柔道や剣道、合気道などをネットなどで見て記憶し、模倣したものばかりだった。

 そのせいか、武器を操る術の手本となる記憶は限られていた。


(この世界で俺に必要なものは、強者との戦闘で得られる戦闘術のスキルなのかもしれないな)


 琉海はシェイカーに先手を取らせることにした。


(できるだけ引き出しは増やしておきたいからな)


 琉海は見ることに専念するため、すぐ防御に移れるように意識する。

 審判は二人が問題ないと見るや、腕を振り上げ、勢いよく振り下ろした。


「はじめッ!」


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