飛来
いまだに開始されない試合。
観客たちもざわめきはじめていた。
『ま、まだ現れないルイ。どうしたのか……』
司会者も何とかしようとするが、中々難しいようだ。
賭けも行われる興行事業でもある。
できるだけ盛り上がっているほうが、いいものなのだが。
「次の試合に行けよ!」
「もう、次でいいよ!」
「早く進めろよ!」
観客たちからも愚痴が飛ぶ。
雰囲気も悪くなってきているのを察したのか、審判が動いた。
「やれやれ、楽しめるかと思ったけど、文字通り、勝負にならなかったか」
シェイカーは自分の不戦勝を告げだろう審判が、舞台の中央にくるのを待つ。
審判はゆっくり中央まで歩き進める。
そして――
審判の口が開いた。
言葉が紡がれた瞬間、この試合は終了する。
貴族たちは思いのほか、この試合に注目していた。
なんせ、公爵家が没落の瀬戸際まで追い詰められているのだ。
公爵家の席が一つ空けば、莫大な金や土地が動くことになるだろう。
この試合の後のことを夢想する貴族たちは多いのだ。
今か今かと審判の言葉を待つシェイカーと貴族たち。
審判は小さく息を吸い、
「しょ――」
ドゴン!!
審判が判定を出す前に何かが会場に落ちてきた。
凄まじい音と粉塵で舞台がどうなったのか誰もわからない。
『な、何が起きた!』
司会者の声が威容に大きく聞こえた。
少しすると砂煙は風に流され、次第に晴れてくる。
シェイカーにも落ちてきた正体を視界に捉える。
観客たちも息を呑む。
まさかの登場。
今までここまで派手な登場をした者はいただろうか。
晴れ切った場所に立つ少年。
少年の着地した地面には小さな蜘蛛の巣状のヒビが入っている。
そんな場所になんでもないかのように平然と立っていたのは、ティニアを抱えた琉海だった。




