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カウントダウン

 琉海によって倒された男は、魔物と同じように灰となって消えた。

 魔薬の濃度が低くても、人間よりか魔物に近い存在だったようだ。

 ティニアは俯いていたので、それを見ることはなかった。

 琉海がエアリスたちの元へ戻ろうとすると――


 バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!


 王宮のほうで花火のような音が聞こえてきた。

 その音を聞いて、ティニアが突然顔を上げた。


「この音……」


「どうしたんですか?」


 剣呑な雰囲気を醸し出すティニアに琉海は聞く。

 琉海は内心また面倒事かと思っていたが、


「ルイ様の決勝戦って何試合目でしたか」


 突拍子もないことを聞かれて、答えるのに少し遅れた。


「えっと、確か一試合目でしたね」


「…………」


 琉海の言葉に青ざめるティニア。

 質問の意図とその表情でなんとなくだが、今の音が何を表すのか琉海は察してしまう。


「もしかすると、あの音は試合の合図だったりします?」


「例年通りですと、決勝戦が始まる前に魔法による花火が打ち上げられるので」


「つまり、もう時間がないということですか」


「幾ばくも無いかと思われます」


 ティニアの声は尻すぼみになってしまう。

 自分を助けたせいで、決勝戦に間に合うことができなかったとティニアは思っていた。

 ここからでは、道なりに走っても間に合う時間はないだろう。

 ティニアが自分の愚かさに打ちひしがれていると、


「まだ、間に合うなら、大丈夫でしょう」


 琉海の言葉が光のようにティニアの心を照らした。


「え……ほ、ほんとうですか?」


「そうですね。馬車に戻る時間は惜しいですし、ティニア様をここに置いていくのも不安なので、このまま会場へ向かうことを許していただければですが」


「えっと、それぐらいでしたら、構いませんよ」


「では、しっかり捕まっていてください」


 琉海はそう言って、精霊術で身体強化をする。

 ティニアも顔を赤くさせながらも琉海の首に手を回し、体をくっつける。

 自分の心臓の音が琉海に聞こえているのではないかと、チラッと琉海に視線を向けてみるティニア。

 琉海は微笑みを浮かべ、「行きます」と言った。

 瞬間――

 琉海は風を置き去りにして駆け出した。



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