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救出

 悲鳴が聞こえたほうへ振り向くアンジュ。


「ティニア様っ!」


 アンジュがティニアに何かあったのかもしれないと考え、馬車に向かおうとする。

 すると、馬車の天井を突き破って一人の男が少女を肩に抱えられて飛び出した。

 抱えられているのは、ティニアだ。

 ティニアは暴れて離れようとしているみたいだが、男は微動だにしない。

 あの男も魔薬で一時的にパワーアップしているのだろう。


「逃がしません!」


 メイリが馬車から出て、ナイフを投げる。

 しかし、刃の部分を指で挟んで受け止められた。

 馬車の天井に立つ男は一瞬、琉海の方に視線を向けてから、琉海達のいる逆方向へ跳躍。

 飛距離も普通の人間ではありえない距離を飛び、難なく着地した。

 人を一人抱えているとは思えない身軽さで駆け出す。


(さすがに公爵令嬢が誘拐されたなんてことになったら面倒どころの話じゃないな)


「ティニア様を抱えて……ッ!? 逃がすか」


 アンジュが男を追おうとするが、琉海が肩を掴んで止めた。


「私が行きます」


「止めるな! 早くしないとティニア様が……」


 突然の誘拐でアンジュは冷静な判断ができていないようだ。

 おそらく、アンジュではあの男に追いつくことはできない。

 魔法の身体強化では、どうがんばっても無理だ。

 今もどんどん離れてもうすぐ見えなくなる。


「邪魔をする――」


 アンジュが最後まで言う前に、背後に立つメイリの手刀がアンジュの意識を失わせた。


「申し訳ございません。あの速さに追いつけるほど、私たちの強化魔法の練度は高くありません。ルイ様のお力をお借りしてもよろしいでしょうか」


 メイリは状況を正確に把握して、冷静を保っているようだ。


「はい。任せてください。エアリス、ここは頼んだ。魔力は気にしなくていいから」


「ええ、こっちは心配しなくていいわよ」


 エアリスの返事を聞き、琉海は刀を粒子に戻し駆け出した。

 琉海の立っていた場所には、小さなクレーターができる。

 馬車が通れるほどの道をまっすぐ走る。

 空中に滞留している自然力を視れば、琉海の後方と前方に川のような流れができているのがわかる。

 前方に視える流れを辿れば、ティニアを攫った男に辿りつくだろう。

 足に力を入れ、さらにスピードを上げる。

 次第に男の背中が見えてきた。

 一気に踏み込み、圧倒的速さで敵の前に飛び出す。

 足で地面にブレーキをかけると、足元にわだちができる。

 いきなり眼前に出現した琉海に男は足を止めた。


「え? なに?」


 ティニアは状況を掴めず、不安な声を出す。

 ティニアを後ろ向きで抱え、もう片方には剣を握っている。

 琉海も《創造》で刀を作り出す。


「その女性を離してもらえませんか?」


 切っ先を向けて言う琉海。


「その声はルイ様ですか?」


 知っている声が聞こえ、安心したのかティニアの声が幾分か明るくなる。


「はい。いま助けるので、少々お待ちください」


 琉海が不安を与えないように優しく伝える。


「は、はい」


 琉海からは顔が見えなったが、ティニアの顔は赤くなっていた。

 ティニアが返答をしたことで、生きていることは確定した。

 あとは、言葉が通じて離してもらえれば、かなりやりやすかったのだが、男は唸り声を出すだけで返答はしない。


「やっぱり、言葉は通じないか。仕方ない」


 琉海はそう言った瞬間、男との距離を刀の間合いに詰める。

 男から見て右側に現れた琉海。

 ティニアのいるほうからの攻撃を避けた形だ。

 魔法を扱えても、琉海を捉えていられる人間は少ないだろう。

 しかし、男は琉海を目で追っていた。


「見えているのか」


 動きを追えていることに驚く琉海。

 だが――

 だからといって、攻撃を緩める気はなかった。


「まず、その武器を手放してもらう」


 琉海は男の右手に刀を振るう。

 目で追うことはできていても、体は動かないのか、肩口から右腕が切断された。


「ぐッ!?」


 武器と一緒に右腕を失った男。

 ティニアを抱えていては無理と判断したのか、ティニアの服を掴んで横に投げ飛ばした。


「ひゃッ!?」


 琉海はすぐさま動き、回り込んでティニアを両腕で抱え込んでキャッチした。

 琉海がティニアを優先したことによって、男に逃げる隙を与えてしまった。

 男は脇目も振らず逃げようとするかに思えたが、思考が停止したかのように動きを止めて倒れた。

 琉海は先手を打っていたのだ。

 ティニアをキャッチする前に短剣を《創造》し、男の頭目掛けて放っていた。

 頭を撃ち抜かれた男になす術はなく地面に伏した。


「大丈夫ですか?」


 琉海はお姫様抱っこをしたままティニアに聞く。


「だ、大丈夫です」


 琉海の顔が近くてティニアの顔が赤くなる。


「良かったです。では、戻りましょうか」


「は、はい」


 ティニアは琉海を直視できず、俯きながら頷いた。


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