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苛立ち

 王宮に一番近い屋敷で一人の男が不機嫌そうに酒を飲んでいた。


「何が負けないだ。お前の予選決勝の相手は去年の準優勝者だぞ」

 

 独り言を呟くレイモンド。


「お前には負けてもらうぞ。何が何でも……」


 レイモンドはグラスに入った酒を一気に呷る。

 すると、扉をノックする音が響く。


「なんだ」


 イライラしているせいか、怒気の混じった言い方になる。


「失礼いたします。レイモンド様にお客様が来ております」


 恭しく入ってきたのは、ディバル家に仕える執事だった。

 執事が言うレイモンドへの客のほとんどが商人だ。

 王都で高い物や珍しい物を売るなら、まずディバル家に行って値段交渉するのが、商人たちの常識になっている。

 そのため、客はよく来るのだ。

 特にレイモンドへの客は、商人が多い。

 レイモンドもそれをわかっているため、


「客? こんな夜に客だと。今は会う気がないと言っておけ」


 レイモンドは鬱陶しいとばかりに、シッシと手で払う。


「私もそうお伝えしたのですが、なんでも、レインモンド様が欲しがっているモノを届けにきたと言っておりまして、何かご存知でしょうか」


「俺の欲しがっているモノだと?」


「はい」


 レイモンドは数舜、考える素振りを見せてから口を開いた。


「少し興味が出た。そいつを客間に通せ」


「本当によろしいのでしょうか」


「構わん。まあ、万が一のために、客間の外には、護衛を付けてくれ」


「畏まりました」


 執事は一礼して、退出した。


「俺が欲しがっているモノか。どんなものを見せてくれるのか」


 グラスに酒を注ぎ、一気に飲み干してからレイモンドも客間に向かった。

 数十分後にその屋敷から出てきたのは、黒いローブを深く被った人影だった。

 執事に見送られる人影。

 レイモンドとどんなやり取りをしたのか、知っている者は当人たちだけだろう。


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