対策
ティニアが部屋で悶えているころ、琉海は静華とエアリスと一緒に部屋にいた。
エアリスはソファに転がっており、向かい側のソファに琉海と静華が座っている。
「俺と握手していたあの男、エアリスはどう思った?」
「遠目で見ていたけど、魔力はシズカよりちょっと少ないかな」
「率直に聞くけど、俺があの男と戦ったら、勝ち目はどのくらいだと思う?」
「うーん、あれがどういう戦い方をするかわからないし、トランサーだったら、その能力次第で強さが変わるかもしれないけど、今わかっていることだけで比べるなら、ルイが勝てる確率は八割ってところかしらね」
「えっ、そんなに!?」
静華が驚き、声を出す。
琉海も驚きはあったが、おそらくそのぐらいだろうとも思っていた。
琉海はあの握手の時、強化の出力を10%以下しか出していない。
たぶん、あの男はあれが本気ではないにしても、精々50%ぐらいの力は使っていたと思う。
「驚くことじゃないわよ。シズカも琉海と戦ったことがあるからわかると思うけど、ルイの使っている精霊術は普通の魔法より出力が数段上なのよ。同じ魔力量でも、マナを生成できる人間とできない人間では力の差は歴然だわ」
「でも、琉海君の魔力ってそんなに高いように感じないのよね」
「ああ、それはパーティーでも言われたな」
琉海はレイモンドに言われときのことを思い出していた。
「それは、ルイが半分精霊みたいな状態だからだと思うわ」
「大怪我したときに復元した副作用で、半分精霊みたいな状態なんだっけ」
琉海は怪我を直してくれたエアリスの当時の言葉を思い出した。
「そうよ。人間は精霊を認知する力がほとんどないのよ。だから、見えるように実体化するのに、多くのマナが必要になるんだけどね」
「え? でも最初から見えていた気がするけど」
「ルイは契約者だったし、魔力も膨大に持っていたから、見えたんだと思うわよ。魔力が高くて素質のある人間はたまに見える人もいるから」
「なるほどね」
「つまり、琉海君は半分精霊だから、魔力が少ないってこと?」
「正確に言えば、魔力が少なく見えてしまうって感じかしら。人間が魔力を感知するのは、体の全体から溢れ出す魔力を察知して、それを自分自身の物差しで測ることで総量を定めているのよ。だから、琉海は体の半分以上が精霊術で構成されたもののせいで、周囲が察知できる魔力量が少なく感じるのよ」
エアリスの説明に琉海は「なるほど」と頷く。
「ちなみに、ルイの魔力総量はシズカの四倍以上よ」
「「四倍以上!?」」
静華と琉海の声が重なる。
「え、なんで琉海君が驚いているの?」
「いや、自分の魔力の総量なんてわからないですから」
「わからないの?」
「それは無理もないわよ。まだ、精霊術を覚えて一ヵ月も経っていないし、四倍以上と言ったけど、私が測れる魔力量はそこが限界なだけで、もっと多いと思うわ。魔力に敏感な精霊でこれなんだから、自分自身の魔力とはいえ、人間では膨大過ぎる魔力総量はわからないんじゃない」
「はあ、すごいわね」
静華はクリューカに魔力のことや魔法のことを一通り教わっている。
クリューカに魔力の多さを褒められた静華の四倍以上。
クリューカが知ったら卒倒するだろうと静華は思った。
「話を戻すけど、それだけの差があると、奇策を用いて、ルイの意表を突くぐらいしかできないと思うわ。だから、ルイはどんな状況でも平常心でいれば勝てるんじゃない」
「ありがとう。参考になったよ」
「どういたしまして」
そのあとも少し雑談をして、解散となった。




